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高校での授業(4)-神舟六号をめぐって

2006-03-28 00:01:23 | 国際学入門の入門
たとえば、2005年10月12日、中国は有人宇宙船神舟(しんしゅう)六号を打ち上げました。中国が有人宇宙船を打ち上げに成功したのは、これで二度目です。これは偉大な事業です。なぜなら、アメリカ、ロシア、中国しか成し遂げたことがないからです。日本は、宇宙開発では、中国に全く立ち遅れいています。しかし日本の社会は、この報道に対して、あまり関心を払うことはありませんでした。「宇宙開発で中国に立ち遅れてどうするんだ!」というヒステリックな叫びもありませんでした。
 
この光景がニューズウィーク誌のジェームズ・ワグナー氏には興味深く映ったようです。
 
「隣国の「偉業」に焦ってもよさそうなものだが、日本の反応は驚くほど冷静だ。中国が初の有人宇宙飛行船を打ち上げた2年前より日中関係が悪化していることを考えればなおさらだ。」

「もしアメリカが同じ立場に立たされたら、48年前にソ連がスプートニクを打ち上げたとき同様に政治家や評論家は拳をたたきつけ、なぜアメリカが「出遅れた」のかを問いつめるだろう。しかし日本は大人の行動を選んだ。」
 
「宇宙での直接対決を避けた日本の決断を、国威喪失だとか、アメリカの「子分」に甘んじている証拠だと批判する人もいるだろう。しかし私にはとても正気に映る。」
(ジェームズ・ワグナー「中国と対決しない日本の大人な行動」NEWSWEEK 2005.10.26)
 
引用部分の真ん中の段落にあるスプートニクは、1957年に、ソ連がアメリカに先駆けて打ち上げた人工衛星です。アメリカは、宇宙開発ではソ連に先んじているというプライドがあったので、このスプートニクは衝撃でした。この時の衝撃と、それが引き起こしたパニックが、ワグナー氏の念頭にあるようです。

私たちが、神舟六号にあまり反応しなかったのは、たいしたこととは思えません。しかし東アジアに関心があるアメリカ人からすれば、この日本の無関心は、日本社会の余裕、あるいは大人の態度と見えたようです。だって日中両国の関係は、良好ではなく、相当微妙な状態にあるからです。

このように私たちが、それがどうしたの?普通じゃない?と考えることでも、他者の視点からすれば、高評価を得ることがあるわけです。
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