どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

井戸の茶わん

2024年07月03日 | 絵本(日本)

    井戸の茶わん/川端誠/ロクリン社/2023年

 

 くず屋の清平さんはまがったことは大嫌いで、正直者。その清平さんが 長屋で出会った 千代田朴斎という貧乏暮らしの浪人から、200文で売れればと、仏像をあずかりました。

 この仏像を300文で買ったのは、細川さまの家臣、高木作之進。作之進が仏像をみがくと、なんと紙にくるまった50両の小判。
 お供の良助が「これはすごい。もうかりましたね」というと、作之進は、「馬鹿をもうせ、せっしゃは、仏像はかったが、小判はかっておらん。おそらく、この仏像の持ち主のご先祖が、子孫が困ったときに、これをつかえといれたのを、それにきづかずに てばなしのだろう。かえさねばいかん」と、くず屋を探し出します。

 小判を元の持ち主にかえしてもらいたいいわれ、清平さんは、長屋の朴斎のもとに、持参しますが、「はじめから、わしには縁のない金で、それは、仏像を買った人のものだ」と、受け取りません。両方が言い分を曲げず、武家屋敷と長屋を いったりきたりの清平さん、まるで仕事になりません。長屋の大家さんの仲介で、10両は、くず屋、残りをふたりでわけるこことになりますが、朴斎は、まだ頑固で うけとりません。今度は、清平さんの仲介で、朴斎は、古茶わんをあげることで、20両をうけとりました。

 ところが、この古茶わんは、300両はするという名品中の名品「井戸の茶わん」とわかり、またまたひと悶着。

 朴斎さん、あいかわらず150両はうけとらないといいますが、ここでも清平さん、「また、なんかさしあげて、これうけとってください」といいます。しばらく考えていた朴斎さん、相手が独り身と聞いて、娘をもらってくれるなら、支度金として150両をもらおうといいだしました。

 作之進も、「今度のことで、立派な方だとわかる。その娘さんなら、まちがいなかろう。ありがたく、よめにきていただくことにしよう」と、縁談話は無事まとまりました。

 ここで清平さん、「いまは、長屋ずまいで、きている着物も、よれよれですが。ちゃんと、みがいてごらんなさい。それはそれは、うつくしくなりますよ」と、いいますが・・・。

 

 千代田朴斎、高木作之進が角を突き合わせていたらどうなっていたやら。これは、両者のあいだにたった清平さんのお手柄です。

 とにかく、真っ正直で、曲がったことは大嫌い。筋の通らないことには納得できない人ばかりがでてきて 爽快感がのこる話。ちょっと残念なのは 娘の扱い。「落語絵本」は24ページだったのを今回32ページとページ数を増やしたといいますが、もうすこし娘の存在感があればいうことなしでした。それにしても、娘の結婚話、本人の了解をえたのやら。

 何人も、くず屋がでてきて、江戸のリサイクル事情もうかがえました。


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