どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

天からふってきたお金・・トルコ

2024年08月27日 | 昔話(中近東)

     天からふってきたお金/アリス・ケルジー・文 岡村和子・訳/岩波書店/1964年

  トルコでは、みじかいお話六百ほどあつめた「ナスレッディン・ホジャ物語」が、何回も出版されているようです。実在の人物のようで1208年の生まれ。

 ホジャのとなりの金持ちの商人ディン・ペイは、ホジャが、「ああ、神さま、わたしはお金がいりようなのです。どうか一千クルシュをおさずけください」「ハ百クルシュではだめですし、九百九十九クルシュでもだめです。きっかり一千クルシュの大金がいりようです。それより、すこしでもすくなかったらおことわりもうしあげます。」と祈っているのを聞いて、みょうなことをいっているのものだなあと、思ったのです。

 こっけいなホジャが好きだったディン・ペイは、あることを思いつき、きっかり九百九十九クルシュの金貨を袋にいれ、ホジャへ投げ入れました。ホジャは神さまにお礼もいわずに、せっせと金貨をかぞえはじめました。なんどかぞえても九百九十九クルシュしかありません。「一千クルシュよりちょっとでもすくなかったら、ホジャはいただきません。」といっていたのに、ホジャは、神さまに一クルシュ貸したことにして、はらまきにおさめてしまいます。

 ところがディン・ペイは、ホジャをからかろうとしただけなので、金貨を返すようにいいます。が、「あなたが?上からおとしなすった? そんなばかな! このお金は、神さまがくださったんだ。それにまちがいない。わしの祈りが通じて、天からおちてきたんです。」と、ホジャはうけつけません。

 ディン・ペイが裁判所で決着をつけようとすると、いつも裁判所でしゃべりまくるのがすきなホジャは、「妻がつくろっているので、上着がない。上着なしでは法廷にはでられない。」「裁判所まで歩いていったのでは時間がかかる」といいだしました。ディン・ペイはしょうがなく、上着を貸し、馬まで用意しました。さらに「くらやたづなもない」というので、ディン・ペイは、それも用意し、すっかり支度を整えて、裁判所まででかけました。

 裁判所で、ホジャは、「ディン・ペイさんは、世の中のありとあらゆるものがじぶんのもだとおもいこんでおられる。わたしの金のことも、そうだといわれた。ためしに、たとえば、わたしがいま着ている上着が誰のものか聞いてみてください。」「馬まで、じぶんのものというでしょう。」と、申し立てます。

 裁判官は、金貨の袋を上からおとしたことは、おかしな気がしたが、たづなまで自分のものだというのは、これはあきらかにおかしいと、金貨、馬はホジャのものだと裁定します。

 ところが、家に着くと、ホジャは、金貨も上着も馬もディン・ペイに 返すといいだしました。さらにホジャは、「裁判所へ戻って、いまのはじょうだんだんだ、証拠がそろっているからといって、いつもその証拠どおりでないと、よくいってきかせてくるつもりです。」と、いいました。

 ホジャは、えらそうにふんぞりかえっている裁判官をだましてやろうと、策略していたのでした。

 

 ホジャにつきあわされたディン・ペイさんは、災難でした。