ノルウエーの昔話/アスビョルンセンとモー編 大塚勇三・訳/福音館書店/2003年
グリムの死神がでてくる話(「死神の名付け親」または「名づけ親の死神」)とパターンは同じです。
若者が、ビールづくりのところでの奉公がおわり、給金の代わりに小さいビール樽をもらって旅に出ます。
歩けば歩くほど、樽は重たくなってきます。そこでビールをいっしょに飲めるような人がだれか来ないかと、探しはじめます。
はじめにやってきたのは神さま。神さまと聞いた若者は、「あなたは、この世の人たちの間に、大きな差別をつけて、いろいろ変えるから、ある人は、とても金持ちになるのに、ある人は、ひどく貧乏になっている。いやです。あなたとは、いっしょに飲みたくありませんよ」と断ります。
次に会ったのは悪魔。「あんたは、みんなをいじめたり、ひどい目にあわせたりするばっかりだ。どこかで、なにか、不幸があると、いつでも、みんなは、あんたのせいだ、って話している。いやだよ、あんたといっしょになんか飲みたくありませんよ」、若者は断ります。
若者が死神にであうと「あなたは、りっぱなかたです。なにそろ、あなたは、貧乏人も金持ちも、みんな、おなじにあつかうんですから」と、いっしょにビールを飲みます。
これまで、これほどおいしい飲み物を飲んだことがなかった死神は、ビールをなんでも治せる飲み物にし、病人のところにいって自分が、病人の足元に座っているときは、この樽からついだ飲み薬で治すことができる。ただ、病人のベッドの頭のほうに座っていたら、死ぬのをとめるような、どんな治療法も、薬もない、と話しました。
ということで、それから若者は、もう助からないといわれた病人をたくさん助けて元気にしてやり、金もあり力のある人になっていきました。
やがて、遠い国の死にそうなくらい重い病気のお姫さまをすくうため、若者がお姫さまの部屋に行ってみると、死神が、頭のほうにすわっていました。なんとか死神をだまそうと、死神が居眠りしている間に、ベッドの向きを反対にかえて、飲み薬を飲ませ、お姫さまの命は、救われますが・・・。
若者が、アーメンと唱えない限り、命は助かるのですが、そこは死神、「主の祈り」を書きつけた大きな板を、若者のベッドの上にかけておき、若者に「アーメン」と、唱えさせたので、若者の時間は、永久におわりました。
頭と足を反対側にするのは、グリムは、一度は大目にみてくれます。が、ノルウエー版では 大目にみてくれません。