こども世界の民話(下)/実業之日本社/1995年
悪魔が人間の言うことを信用しなくなったのには、こんなことがあったようですよ!。
ある村のお百姓が、雌牛を牧場につれていって「神さま。いつも、わしらをおまもりくださってありがとうございます。この雌牛に、草をたっぷり、たべさせてやってくださいまし。」といのりました。
悪魔はそれを茂みの中から聞いていて、しゃくにさわりました。「人間ってやつは、何でも、うまくいくと、神さまにお礼をいう。ところがわるくいくと、きまって、おれのせいにするんだからな。ちくしょうめ、みていろ。」
それからニ、三日たって、雌牛が沼に落ちてでられなくなると、お百姓は「ひどいことをしやがる。また、悪魔の奴のいたずらだな」と、おこりました。
「やっぱり、俺の思っていたとおりだ。」悪魔は、お百姓が、雌牛をひっぱりだすために、手伝いの人をよびにいったあいだに、雌牛をひっぱりあげておきました。
今度こそ、礼をいわれるだろうと思った悪魔でしたが、お百姓は「神さま。よく雌牛を、引っ張り上げてくださいました。お礼を申しあげます」と、おおよここびでいいます。