どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

「あらしのよるに」シリーズ

2017年06月14日 | 創作(日本)

        あらしのよるに/木村裕一・作 あべ弘士・絵/講談社/1994年初版


 初版が1994年ですから大分前に出版されています。こんな楽しい物語もおはなし会にいかなければ知ることはありませんでした。もっともこの本は大分評判だったようで、多くの感想もよせられています。七巻まであるようです。聞いたのは第一巻。

 あらしのよるに、壊れかけた小屋に逃げ込んだ白いヤギと足をくじき鼻かぜをひいたオオカミ。

 真っ暗闇の中で、匂いもわからず、声だけがたよりです。

 オオカミの声を聴いたヤギは、「オオカミみたいなすごみの ある ひくい おこえで」といいかけますが、失礼だと思って口を閉じ、オオカミの方も「ヤギみたいに かんだかい わらいかたでやんすね」といおうとして、相手が気を悪くすると思って、やめにします。

 食い物で、ヤギはおいしい草といい、オオカミはおいしい肉といいますが、その声もカミナリにかきけされます

 どこに住んでいるかの話で、お互いの違う思いが交錯するのも笑わせます。

 ”ぴかっ”と稲妻が光り、お互いの顔が見えたと思うと、ヤギはしたをむき、オオカミは、まぶしくて思わず目をつぶって相手の正体はわからずずまい。

 ”ガラガラガラガラ~”とカミナリガなると、この二匹はしっかりと体をよせあってしまいます。

 気が合うどうしで、いい天気の日に食事をしようとなって、合言葉をきめます。合言葉は「あらしのよるに」でした。
 奇妙な友情に結ばれた二匹、次のはれた日、丘の下でなにがおこるか、わかるはずもないと、結びも意味深です。

 オオカミはヤギの天敵、恐ろしい敵です。あかるいところならギャとなるところですが、あらしの中で友情が生まれるというなんとも楽しい話です。

 舞台設定も巧みな感じがしますし、続きが読みたくなるのも当然です。


 第二巻は「あるはれたひに」、第三巻は「くものきれめ」です。
 第三巻で、はじめてオオカミとヤギの名前があきらかになります。 オオカミはガブ、ヤギはメイです。オオカミががぶりと食べる様子がうかがえ、ヤギの名前は鳴き声をイメージしているのでしょう。



 何よりもヤギの肉が大好物のオオカミとヤギがあらしのよるに互いの正体を知ることなく、合言葉をきめて、今度一緒にお昼ご飯を食べようと約束するまでが「あらしのよるに」でした。

 晴れた日、というのは次の日なのですが、はじめて顔をみた二匹は、びっくり。しかし友情を大切にするオオカミはヤギと一緒に岩山のてっぺんでお弁当を食べようと登っていきます。

 ところが途中、オオカミは弁当を谷底へ落としてしまいます。

 狭い道を登っていく先にはヤギのおしり。うまそうとなまつばを飲むオオカミ。すぐに友だちのことをうまそうだなんてとつぶやくと、下をむいてのぼっていきます。

 岩山のてっぺんでお弁当を食べたヤギは昼寝をはじめます。

 おなかがすいているオオカミの前には、おいしそうなヤギ。
 オオカミがヤギの耳におもわず口をちかずけますが・・・。
 なんどもなんどもヤギを食べようとオオカミですが、そのたびにじっとこらえるさまがなんともいえません。

 ヤギはお腹のすいたオオカミの前で昼寝ですが、どうものんびりしたヤギです。

 オオカミの葛藤を知ることもないヤギは無神経なのか無邪気なのか。

 それでもオオカミは「こ、こんど、いつ あうっす?」。
 まだまだ続きます。


 オオカミのガブとヤギのメイに、メイの友達のタプがくわわります。

 メイがソヨソヨ峠にいく(オオカミのタブと待ち合わせです)というのを聞いたタブは、オオカミの出るところだからとメイを心配して・・。

 何度も鉢合わせになるところをメイが機転をきかすのですが、とうとう三匹が鉢合わせに。

 オオカミが後ろ向きに座り、暑い雲が太陽にさしかかり、オオカミの姿がみえないのですが、タブはオオカミの悪口を言いたい放題。「目が吊り上がっててて、口が下品で、鼻が不細工で」。

 ついに立ち上がるオオカミのガブ。タブをガブリとやろうと大きく口をあけると・・・。

 ハラハラドキドキの連続です。

 メイがタブの体におおいかぶさるのをみたガブがウオオーンと一言。何かメイに裏切られた感情なのか、ヤギ同士の仲の良さへの嫉妬なのか微妙なガブの心境です。

 「わたしたち ひみつの ともだちじゃないですか。」
 「なんか、それって、ドキドキする ことばっすよね、じゃあ、おいらたち、また あえるんでやんすか?」

 今度の別れのシーンも 映画のラストシーンと重なって、ジーンときます。

 「あらしのよるに」は、大分評判でテレビや映画化もされたことが、最近になって知りました。
 知らなかったのは自分だけ?と冷や汗(笑)

 出版年がはなれていますが、全巻まとめて読むことができたのは、かえってよかったのかも。
 ちなみに、図書館からかりてきた第4巻以降の出版年は
    四巻 きりのなかで  (2002年)
    五巻 どしゃぶりのひに(2000年)
    六巻 ふぶきのあした (2003年)
    七巻 まんげつのよるに(2006年)


 「どしゃぶりのひに」は、大型版ではないので、時期がずれています。

 第三巻ではメイの仲間に危機がせまりますが、メイの機転でなんとか危機をのりこえ、四巻では新しくオオカミのバリーと片耳のギロとこわいオオカミがでてきて、メイが食べられそうになる危機が。

 五巻では、秘密だったメイとガブの関係が仲間にばれて、お互いの気持ちとは別にスパイになるよう迫られてます。

 六巻では、秘密がばれたガブとメイがふぶきの山越えをします。 そしてオオカミの集団がせまってきたとき、ガブは雪崩に巻き込まれて。

 七巻では、雪崩にまきこまれ記憶をうしなったガブにメイが食べられそうに・・・。

 ガブとメイが並んで満月を眺める最後ですが、まだまだ二人の前には何かありそうな予感もあります。

 映画では原作にない登場人物?がでてくるようですが、たしかにメイとガブを取り巻く状況がでてきてもおかしくないようです。

 オオカミの群れでのガブの立場がでてきますが、メイの方はほとんどでてこないというのもややもの足りません。それでも久し振りに心から楽しめる物語でした。


この記事についてブログを書く
« スズメと子ネズミとホットケ... | トップ | エングラシアおばちゃんのお... »
最新の画像もっと見る

創作(日本)」カテゴリの最新記事