ジャータカものがたり はじめての ともだち/中川素子・再話 バーサンスレン・ボロルマー・絵/小学館/2019年
むかし、インドの王さまが アーナンドという ゾウを飼っていました。アーナンドが 活躍できるのは お城の儀式のときだけ。立派なおうちに住み、おいしい食事をあたえられ なに不自由なく くらしていましたが、ぜんぜん元気がありませんでした。
ある日、いっぴきのやせこけた 犬が迷い込んで、アーナンドの のこしたご馳走を ガツガツと 食べてしまいました。アーナンドははずかしそうにいいました。「ちょっとしか なくて ごめんね」
アーナンドから文句をいわれるとおもっていた犬は、ゾウが あやまるのを きいて、おもわず わらってしまいました。城の中だけでくらしていたアーナンドは、「町が全部 俺のいえさ」という、捨てられた犬に 町の様子を聞きました。
つぎの日、肉をあさっていて 店の人に たたかれ 傷だらけになった犬は、いつのまにかゾウのところへきてしまいました。傷だらけになった犬を見て 泣き出したアーナンド。「友だちが いたがっているのに、なかずにいられないよ」。一緒に暮らそうというアーナンドに、犬は ちいさくうなずきました。ゾウの提案で、ナンディンという名前をつけた犬は、いつもいっしょに 鼻でブランコ遊びをしたり、池で水のかけっこをするようになりました。その様子を見ていたゾウの世話係も、肉をもってきてくれるようになりました。
ある日、村の人が 番犬にするから ナンディンをくれと、お金をさすだすと、世話係はナンディンを わたしてしまいました。とりもどそうとしたアーナンドも、門にかぎを掛けられて、どうすることもできませんでした。それからアーナンドは 何も食べずに やせ衰えました。それを心配した王さまが、大臣に しらべさせました。
やがて、王さまは お触れを出したので、村びとは ナンディンを逃がしました。ナンディンは はしりにはしって・・・。
おしゃかさまの前世の話を547あつめたのがジャータカ物語。27番目の話を絵本にしたもの。
にひきが 遊んだり 再会するシーンの絵が、とても楽しそう。
衣食住に不自由しなくても 大切なものがあります。そのひとつが 友情でしょうか。