「おじゃる丸」(NHK)といえば、犬丸りん(1958~2006)原案・スタジオぎゃろっぷ制作の幼児向けアニメの傑作です。
1998(平成10)年からの始まったといいますから、もう9年もやっているわけです。
NHK教育の10分アニメは、どれも長生きですよね。
いや、いいんです。そこはすごいと思いますが、今回は関係ありません。
ところ変わって、わたしとKが通っていた大学の話です。
その大学の国語学の講師に、D先生という方がいらっしゃいました。
その人は東京の方の女子大で、助教授(当時)をしたいたらしいのですが、今はどうなっているのかよくわかりません。
Kが、「顔は変だけど、声だけ聞くと武田鉄矢に似ている」といって以来、声を聞くたびに大笑いしました。そんな先生でした。
実は彼から受けた授業のうち、いまだに覚えていることはただ一つしかありません。
「シニフィエ」とか「シニフィアン」とか、すっかり忘れきってしまったのですが、D先生から聞いた「おじゃる丸」の話だけは、ン年たった今でも忘れることはできません。
それは、こんな話でした。
D先生には、その時、小さいお子さんがいたそうです。
まだ小さいですから、見るテレビといえばアニメが主で、特に「おじゃる丸」が気に入っていたといいます。
「おじゃる丸」のあらすじは、今から千年前の平安時代(実際は、ヘイアンチョウ時代の妖精界という架空の世界)からやってきたおじゃる丸と子オニたち、その他ゆかいな仲間が繰り広げる大騒動…という感じなのです。
ところが、D先生曰く、「おじゃる丸」は平安時代(本当は、ヘイアンチョウ時代)には、彼は存在していないというのです。
それは、こんな理由からでした。
まず、「おじゃる」という語。
これは「尊敬を表す補助動詞」で、位の高い人が「大殿どのは、お馬鹿でおじゃりますの~」というように使います。
特別な意味はありませんが、あえて訳せば「お~になる」という感じでしょうか。
しかし、この発音が出現したのは室町時代に入ってからだというのです。
では、それ以前にはどう発音されていたのか…つまり、「おじゃる」の前身は何のかといえば、「おはします」になります。
「おはす」「おはします」と、セットで覚えたのではないでしょうか。
平安時代では、「おじゃる」では無くて、「おはします」が正しいのです。
そして、「丸」。これは、「まる」と読みます。
しかし、これまた平安時代では「まる」という言葉はありません。
平安時代では、「まる」は「まろ」と発音していました。
つまり、平安時代では「ボールがまるい」ではなく、「ボールがまろい」が正しかったわけです。
よって、以上のことから、平安時代(本当は、ヘイアンチョウ時代)では「おじゃるまる」は存在しておりませんでした。
平安時代(本当はヘイアンチョウ時代)に存在していたのは「おはしますまろ」。
だから、正しいのは「おはしますまろ」だったのです。
というような話をされたわけです。
当時から、こういうバカな話が好きだったわたしたちは、それから大学時代を懐かしむときには必ず、この話を言い出します。
…まぁ、だれも面白いともすんとも思ってくれないのですが。
これが一周年記念企画というのもお粗末な話ですが…。