将棋盤の目のように、って言わないか 碁盤の目のように広がる東京地下鉄網。
1995年3月、そこで大きな事件が起こった。
村上春樹「アンダーグラウンド」を読んだ。
なんという厚さ。拾い読みのような形になるかと思いきや、読了。
自分の読書経験の中にある「ノンフィクション」の形とは 本作は違っているように感じる。
違うということは 新しい視点を与えられるということなんだな。そう考えつつ読み進んでいった。
事件の被害者の一人である事務機器メンテナンス技術者の方が その毒物のにおいを嗅いで 自分の仕事に使う薬品がその中に含まれていることに気付く。(その薬品自体は危険なものではないらしい。)
あ、これは知っているにおいだ、イソプロピルアルコールだ。
その何気なさの先に 先と言っても「今、ここ」なのだが その毒物は袋を破かれて転がっている。
そこに事件ありき。から
そこに人生ありき。それは広がって、そこにそしてここに人生ありき。へ
視線を転化させられる作品だった。