今朝も山室川に沿って来たが、いつもより少しだけ遅かったせいか、思いがけず懐かしい光景を目にした。荊口の集落に入る前に山室川を二度渡るが、その最初の橋の手前にバス停がある。そこに小さなバックを手にし、余所行(よそい)き姿をした老婆が立って、バスを待っていたのだ。
確かにこの道沿いには幾つかバス停が残っている。しかしバスを利用しようとしている人の姿を見たのは、多分今日が初めてだと思う。高遠へでも買い物に出掛けるところだったろうか。すぐに利用客などないカラッポのバスが、大きな図体を左右に揺さぶりながら下ってきたから、あまり待つこともなくすんだはずだ。
若い人たちは皆他所へ出ってしまい、あの老婆にとって唯一の交通手段が一日に幾往復するのか知らないが、この路線バスだけになってしまったのに違いない。車が普及するようになっていつの間にか路線はどこも廃線になってしまった。
にもかかわらず、何故かさして利用客などいるとも思えないこの山奥の集落にはまだ走っている。そしてそれを頼りにする人がいた。約半世紀前ならありふれた風景であったが、今となってはなんとも懐かしい時間の中に飛び込んだような気がした。
山小屋「農協ハウス」とキャンプ場の営業に関しましてはカテゴリー別の「H28年度の営業案内」をご覧ください。