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小紫

2012年02月17日 | その他植物

2010年9月下旬。






2009年10月上旬。


2008年7月下旬。

 コムラサキ(小紫)。
別名・コムラサキシキブ(小紫式部)、コシキブ(小式部)
英名・Purple Beautyberry


北海道以外の山地や湿地に自生する、クマツヅラ科の落葉低木。

秋に紫色の実を房なりにつけることから庭木として人気が高く、ムラサキシキブとして植栽されるのは、ほとんどがこちら。
強健で幅広い環境に適応するが自生は稀で、多くの地域で絶滅危惧種に指定されている。

樹高は2メートル程度で多くは1メートル以下、鋸歯のある葉が対生する。
6~7月ごろ、葉の付け根あたりから集散花序に淡紫色の小花を咲かせる。


正確には花柄は葉腋より少し上から出ており、ムラサキシキブと区別できる。
もっとも、コムラサキは葉が細めで規則的に並び、枝が放射状に伸び枝垂れ気味となるなど、いかにも山野の雑木然としたムラサキシキブとは印象が全く異なり、花や実がなくとも間違えることはない。
ひとつひとつの実はムラサキシキブのほうが大きめとされるが、実際には実の粒もコムラサキのほうが大きいように思える。

「小紫」は、ムラサキシキブに似て樹姿が小柄なことから。


 クマツヅラ科 ムラサキシキブ属
属名のCallicarpaは、ギリシア語のkallos(美しい)とkarpos(実)が由来。



紫式部

2012年02月15日 | その他植物
2011年10月上旬。


2009年9月下旬。


2011年10月上旬。


2011年11月中旬。


2010年7月上旬。


2010年7月上旬。

 ムラサキシキブ(紫式部)。
別名・タマムラサキ(玉紫)、ミムラサキ(実紫)
英名・Japanese Beauty Berry


日本中の山野に自生するクマツヅラ科の落葉低木。

美しい紫色の実を結ぶことから庭木としても栽培されるが、実際にムラサキシキブの名で流通するのはコムラサキである場合が大半。
コムラサキは実以外は全体に小柄だが、果実は枝が枝垂れるほど密につく。
他に近縁には、暖地性で全体にビロード状の毛が生えるヤブムラサキがある。

樹高は大きくとも3メートル程度、鋸歯のある葉が対生する。イチモンジカメノコハムシの食草。
6~7月ごろに葉腋から淡紫の小花を咲かせ、秋に紫色の実となる。
変種に白い実をつけるシロシキブがある。

「紫式部」という過剰な名前は、美しい紫色の実をつけることから紫式部の名を借りただけで、紫以外にはなんの縁もないようである。
「紫重実(むらさきしげみ)」「紫敷実(むらさきしきみ)」の転訛から紫式部の字を当てたとの説もあり。


 クマツヅラ科 ムラサキシキブ属
属名のCallicarpaは、ギリシア語のkallos(美しい)とkarpos(実)が由来。
花言葉は「深い愛」



犬稗

2012年02月09日 | その他植物



2010年8月中旬。




2010年9月中旬。

 イヌビエ(犬稗)。
別名・ノビエ(野稗)
英名・Cockspur Grass、Barnyard Grass


水田や川原、道端、草地、牧草地などで見られるイネ科の一年草。
アジア、アフリカなど世界各地に広く分布する。
日本では水田によく生え、稲の刈り取り前に実が成熟し大量の種を散布してしまうので、非常に手強い雑草となるが、牧草として利用されることもある。

草丈は60~150センチほど、葉は幅広の線形で葉舌はない。
8~10月ごろ、緑から赤紫がかった花穂を伸ばす。
他のイネ科雑草と比べていかにも穀物めいた大きな穂で、かなり目立つ。

花穂の芒の長短など変異が多い植物で、いくつかの変種に分ける場合もある。

「犬稗」は、稗に似て(原種?)食用にならず役に立たないことから。
英名の「cockspur」は鶏の蹴爪、「barnyard」は納屋周辺の庭。


 イネ科 イヌビエ属
属名のEchinochloaは、ギリシア語のechinoa(ウニ)とchloa(草)が由来で、トゲトゲした穂や芒の様子から。
種小名crus-galliは「鶏の足」。



ゴウソ

2012年02月07日 | その他植物





2010年6月上旬。






2010年7月上旬。

 ゴウソ。
別名・タイツリスゲ(鯛釣菅)


日本中の明るい水場周辺に自生する、カヤツリグサ科の多年草。

草丈は50センチ前後、葉は細い線形で、茎は三角柱状に角ばる。
5~6月ごろに花茎を伸ばし、先端に雄花序、その下に数個の雌花序をつける。

雌花序は鱗片を重ねた棍棒状で、茎からつり下がるのが特徴。
その様子から「タイツリスゲ」とも呼ばれる。
難物ぞろいのカヤツリグサ科のスゲ類にあって、比較的見分けやすい種類。

近似種のひとつ、ヒメゴウソの雌花序は細長く、また白く粉を吹いて青白く見える。
アゼナルコもやはり細長くて鱗片の数が多く、印象がかなり異なる。

「ゴウソ」は「郷麻」とされるが、詳細不明。


 カヤツリグサ科 スゲ属
属名のCarexは、カヤツリグサ科ヒトモトススキ属のCladium mariscusのラテン古名から、というのが一説。



大雀の鉄砲

2012年02月04日 | その他植物









2011年5月末~6月上旬写真。

 オオスズメノテッポウ(大雀の鉄砲)。
英名・Meadow Foxtail


ヨーロッパから西アジア原産のイネ科の多年草。

カモガヤオオアワガエリと同じく明治期に牧草として導入され、その後帰化してイネ科花粉症の要因となっている雑草。
水辺や休耕田など、湿り気味の場所に多いように思える。


草丈は50~100センチ以上、葉舌(ようぜつ・葉鞘上部の膜、上写真参照)は切り落としたように滑らか。
4~6月ごろ、円柱状の花穂を伸ばす。

オオアワガエリと極めてよく似ておりしばしば混同されるが、開花時期が早めで、また花穂をよく見ると小片のつくりが異なり長毛が目立つ。
史前帰化植物のスズメノテッポウは草丈40センチ以下と小型で二年草、花穂の小片がより緻密で密着し毛は短め。
セトガヤは関東以西にのみ分布する。また雄しべの葯がセトガヤは白、オオスズメノテッポウは黄~紫という違いもあるが、花粉を放出したあとの葯はどれも白く見えるので、同定ポイントとしては少々頼りない。

「大雀の鉄砲」は、スズメノテッポウに似て大型であることから。「雀の鉄砲」は棒状の花穂を雀の持つ鉄砲と見立てて。
英名にある「meadow」は牧草地。


 イネ科 スズメノテッポウ属
属名のAlopecurusは、ギリシア語のalopex(狐)とoura(尾)が由来で、花穂の様子から。



大粟返り

2012年02月01日 | その他植物













7月上旬写真。

 オオアワガエリ(大粟返り)。

別名・チモシー
英名・Timothy


ヨーロッパなどユーラシア北部原産のイネ科の多年草。

カモガヤ同様、明治期に良質な牧草として持ち込まれ、今では道端や草地などで普通に見られる。
初夏のイネ科花粉症の原因となっているところまで同じ。

草丈は50~100センチほど、葉は線形で少しざらつく。
5~8月頃に、円柱状の花穂を伸ばす。
花穂の小片(苞穎・ほうえい)は2枚ひと組になっており、それぞれ先端がとがりクワガタの角のように見える。
草姿はオオスズメノテッポウやセトガヤに似るが、苞穎の形状が異なる。

在来種のアワガエリは一年草らしいが、実物・確実な写真ともに確認できず。

「大粟返り」はアワガエリに似て大型であることから。「粟返り」は花穂が粟に似ていることから、粟の先祖がえりと見立てて。


 イネ科 アワガエリ属
属名のPhleumは、アシの一種のギリシア名phleosから。



鴨茅

2012年01月29日 | その他植物







2009年5月下旬写真。

 カモガヤ(鴨茅)。
別名・オーチャードグラス
英名・Orchard Grass、Cock's-foot、Cock's-foot grass


ヨーロッパ原産のイネ科の多年草。

日本には明治初期に牧草として導入され、現在では帰化して日本中の道端などで普通に見られる。
日本のみならず世界各地で良質な牧草として導入される重要な栽培植物だが、同時にイネ科花粉症の主因のひとつとしても悪名高い。

草丈は50~100センチほど、株元から多数の茎を立ち上げ、葉は幅広で柔らかい印象。
5~7月ごろに花穂を出し、カモガヤによる花粉症の症状が現れるのもこの時季となる。
スギ花粉と違い、花粉の飛散距離は非常に短い。

「鴨茅」の「鴨」は、英名「Cock's-foot grass」の「cock(雄鶏)」の誤訳といわれる。
「orchard」とは果樹園のこと。


 イネ科 カモガヤ属
属名のDactylisは、ギリシア語のdactylos(指)が由来で、花穂の形状から。
種小名glomerataは「球状の、集まった」。



酸葉

2012年01月26日 | その他植物











2009年&2011年5月下旬~6月上旬写真。

 スイバ(酸葉)。
別名・スカンポ、ソレル
英名・Sorrel


道端や草地に普通に見られ、アジアからヨーロッパに広く分布するタデ科の多年草。

「酸葉」の名どおり酸味があり、食糧難のおりには子どもが茎をかじって飢えをしのいだという。
地域によっては若葉を食用とし、フランスでも改良品種を食材として利用する。
ただその酸っぱさはシュウ酸に由来するもので、肝臓に負担をかけるため多食は禁物。
茹でて水にさらしたあと、おひたし・和え物・汁の実などに。

草丈は50~100センチほど、茎には皺状の縦筋が入り、互生する葉は縁の縮れた鉾形で、根出葉は有柄、上部の葉は茎を抱く場合が多い。
初夏、茎の上方に多数の小花を咲かせる。
雌雄異株で雌花は赤みが強い。



2011年6月末。


2009年7月初め。

3枚の翼からなる実は中央が膨らまず、草姿がよく似たギシギシ類とは区別できる。
ヒメスイバはサイズがまったく異なるため、実物を取り違えることはない。




 タデ科 ギシギシ属
属名のRumexは、ラテン古名で槍の一種のことで、葉の形状から。
種小名acetosaは「酸っぱい」。
花言葉は「情愛」。



蝦夷の羊蹄

2012年01月22日 | その他植物







2011年5月末写真。

 エゾノギシギシ(蝦夷の羊蹄)。
別名・ヒロハギシギシ(広葉羊蹄)
英名・Broad-leaved Dock、Bitter Dock、Bluntleaf Dock


ヨーロッパ原産のタデ科の多年草。
日本には明治中期に渡来し、現在では日本中の草地などで見られる帰化植物。
帰化植物にもかかわらず「蝦夷」というのは、北海道で最初に確認されたことによる命名で、実際冷涼な地域に多い。

草丈は50~100センチと大きく、茎と葉柄は赤みがかることもある。互生する葉は縁が縮れて波打ち、節には膜状の葉鞘が目立つ。
初夏から夏に、茎の上方に緑~赤みがかった両性花を輪生状に多数つける。


2011年7月。


2009年7月。

花後にできる実は、中央の種を囲む翼がトゲトゲしていることから、スイバ・ギシギシ・アレチギシギシなど同属の類似種と区別できる。
とはいえ近似種とたやすく交雑するとのことで、厳密な同定は難しいかもしれない。

スイバやギシギシ類はあくを抜いて食用とするが、本種は特にシュウ酸とタンニンを多く含むらしく人はおろか家畜も好まず、しばしば牧場で我がもの顔に繁殖することから、世界各地の進出先で厄介な雑草扱いされる。
日本ではコガタルリハムシのみが食草とし、コガタルリハムシを利用してエゾノギシギシを防除しようという研究もなされているらしい。

「羊蹄」は漢名から。
「ギシギシ」という読みの由来ははっきりしないが、茎や葉をこすり合わせるとギシギシと音がするから、というのが一説。


 タデ科 ギシギシ属
属名のRumexは、ラテン古名で「槍」のことで、葉の形状から。



雀の稗

2012年01月18日 | その他植物







2010年9月写真。

 スズメノヒエ(雀の稗)。
英名・Japanese Paspalum、Water Paspalum


日本中の草地や道端で見られる、イネ科の多年草。
葉だけではただの草としかいいようがない、いわゆる雑草。

草丈は40~90センチほど、葉は線形で基部は鞘状に茎を抱き、白軟毛が目立つ。
秋に花茎を伸ばし、互生に出した小穂に円盤状の花が並ぶ。

シマスズメノヒエ・アメリカスズメノヒエ・タチスズメノヒエ・スズメノコビエなど近似種が非常に多いが、スズメノヒエは葉に毛が生えるが花茎と小穂はほぼ無毛であることでかなり絞れる。
スズメノヒエ以外はほとんど外来種で、分布は関東以西にとどまっているものが多い。

「雀の稗」は、穀物のような実を雀の食べる稗と見立てて。


 イネ科 スズメノヒエ属
属名のPaspalumは、ギリシア語のpaspale(キビ、粗粉)が由来。