サボテンの育て方・気温編

2007年04月13日 |  栽培の基本

 

 《寒さについて》

サボは寒さに弱い、これが一般的なイメージです。
が、案に相違して、たいがいの熱帯植物より寒さには強いのです。
サボは南北アメリカ大陸(とその諸島)にのみ自生し、その分布域は北緯50度から南緯50度にまでわたって
います。さらに標高も海岸近くから海抜4000メートル以上に及びます。
当然、日本より寒い地域に自生している種類も、少なからずあるわけです。
自然番組をよく御覧になる方なら、冬は氷点下20度にもなる草原で、雪を被っているウチワサボテンの映
像を目にしたこともあるかもしれません。

もちろん、湿潤な日本の気候は自生地とは根本的に違いますし、一般に流通しているサボは日本で生まれ育ったもの。寒冷地の戸外で冬越しできるほどの耐寒性があるわけではありません。
とはいえ、健康なサボなら氷点下5度ぐらいは問題なく耐えるといいます。
温暖化が進んでいるためか、東京あたりでも柱サボテンやウチワサボテン、エキノプシス属のサボなどは地
植えで越冬する種類もあるようです。

もちろん、わざわざ生存ぎりぎりの線で越冬させる意味はありませんし、霜に当たれば外観を損ねます。
取りあえず、0度以上あれば安全と考えておけばいいでしょう。メロカクタス属、ディスコカクタス属、ユ
ーベルマニア属のように寒さに弱い種類でも、5度以上あれば問題ないでしょう。
つまり、最低5度以上を維持できれば、安心して冬越しができるということです。
サボの生育サイクルを狂わせないように、暖房の入った部屋に置く場合は、なるべく気温の低い窓辺に置き
ましょう。よく日に当てることはもちろんです。

 

 《暑さについて》

むしろ問題はこちら。
水やり編でも触れましたが、サボの自生地は昼夜の気温差が激しく、一日中暑いわけではありません。
日本の夏はたいがいのサボにとって不自然な環境で、生育が鈍って休眠するものもあります。(マミラリア
属など)
そういうサボが萎びて元気がないからといって、水をどばどばやってはいけません。萎びているのは根が働
いてないからで、そこに過湿が加わると簡単に腐ってしまいます。
休眠中のサボは無理に育てず、ゆっくりと休ませてやります。置き場は午前の早い時間だけ日が当たるよう
な場所が最適。水やりは月に2、3回軽く。

 


サボテンの育て方・日照編

2007年04月12日 |  栽培の基本

 

大方のイメージ通り、サボは太陽が大好きです。
日の当たらない棚などに置きっぱなしにしておけば、少しずつ衰弱していつかは枯れてしまいます。
園芸店で、日焼けを起こしたわけでもないのに稜の間などが茶色くなっているサボを見かけますが、あれは日の当たらない場所に長く置かれているためです。買ってはいけません。

だからといって、直射日光にがんがん当てればいいというものでもありません。
サボは砂漠の中にぽつんと生えているわけではありません。
大型種以外は、草や灌木の陰に生えているものが多いようです。また大型種といえども大株になるには数十年はかかります。小さいうちは他の植物の陰になるわけです。
それに店に売られているサボは文字通りの温室育ち。生育を早めるため、また肌を美しく見せるため、温室の弱めの光と高温の中で肥培されたお坊ちゃんです。本来なら強光に耐える種類でも、あっさり日焼けすることがあります。
また同じ株でも、弱っているときには日焼けしやすくなります。

具体的には、朝から昼過ぎまでよく日が当たり、その後は日陰になるくらいがちょうどいいでしょう。
日に3、4時間の日照が確保できるなら、室内の窓辺でも十分管理できます。こまめな管理ができる方なら、日照に合わせて鉢を移動するという方法もあります。
最低条件は日に2、3時間です。これ以上短いと、維持するのがやっとでしょう。

ただあくまでこれは、雑貨的な扱いをされていた小さいサボを入手した、初心者向けの説明です。立派な刺を出させたり花をたくさん咲かせたりする管理ではありません。
サボの刺は遮光の役目もしているので、日差しが弱いと貧弱になってきます。立派な刺を出す種類は、次の日までに回復する日焼けなら気にせず、がんがん日に当てていきます。
店頭に並ぶサボは温室の弱い光の中で育ったものなので、刺は貧弱です。逆に言えば、刺に関する限り初心者でもプロに勝てるということです。
またサボの花は、長時間日が当たってやっと花びらが開くというものが大半。午後にならないと開花しないものもあります。
室内管理だと、せっかく蕾がついても開かずに終わることもあるかもしれません。

 

 《春の日照》

この時期はたいがいのサボが生育を開始する時期です。よく日に当てましょう。
まだ日差しが弱く、気温も低いので遮光の必要はありません。
ただ、この時期は日がまだ低く、室内に長時間日差しが差し込むので、窓辺は意外に高温になります。室内でも日焼けすることがあるので、暑すぎるときは換気をします。

 


 《夏の日照》

サボが苦手な時期です。元気に生育しているもの以外は、午後まで日が当たる置き場は避けた方がいいでしょう。
休眠しているものは、暑くなりはじめる午前10時頃まで日が当たれば十分でしょう。他の植物の陰になる場所に置くという手もあります。

 

 《残暑(8月下旬から9月上旬)の日照》

日が低くなりベランダなどにも長時間日が射し込むが、暑さはまだ衰えていないため、一番致命的な日焼けを起こしやすい時期です。
特にギムノカリキウム属のように日焼けしやすい種類は、必ず遮光しましょう。

日焼け痕。ひどいとこうなります。

 

 《秋の日照》

春に準じます。
この時期に花芽の準備を始める種類も多いので、できるかぎり長時間日に当てたいところです。

 

 《冬の日照》

自生地では乾期に当たります。周囲の植物も枯れ、本来なら一番強い日差しに晒される時期です。
当然この時期の日照は重要です。耐寒性にも大きく関わってきます。
特に一般に流通している小さいサボは、この時期に花芽が分化して春の開花に備える種類が多いのです。
できるだけよく日の当たる窓辺に置きます。

 

以上はあくまで一般論です。
日差しに対する抵抗力は種類や状態によって大きく異なるので、少しずつ日差しを強くしていって試してみるしかありません。
大事なのは個々のサボに合わせた管理をすることです。


……疲れたので温度管理についてはまた次回。内容から言ってこの記事で書くべきだったのですが……。


サボテンの育て方・植え替え編

2007年04月10日 |  栽培の基本

 

初心者はきれいな化粧砂が敷き詰められたサボテンを買ってきて、そのまま育ててしまう場合がほとんどでしょう。で、腐らせる。
あれ、そのまま育てればベテランでもたいがい失敗します。
あれは土も鉢も、きれいに見せて付加価値を高めるためのものです。小さいのにアホみたいに高いのはそのため。半分以上は化粧砂と鉢の値段でしょう。
おまけに出荷や取り扱いが楽なように土が糊で固めてあったりします。ほとんどサボ虐待。
とにかく、育てることは前提にしていない「商品」です。苗ではありません。
普通に土に植えられている苗でさえ、根の状態を調べるため、また他人が作った用土では水やりのタイミングが分からないので、栽培家はすぐに植え替えます。
雑貨扱いのサボをそのまま育てられるわけがありません。

と、いうわけで、植え替えです。
といっても冬は避けたほうがいいでしょう。
冬に買ってしまった場合は日の当たる窓辺に置いて春を待ちます。
根が傷んでいる場合が大半なので、水やりは月に1、2回、表面を湿らせる程度。春まで萎びさせないのが目的です。


 《抜き上げ》

で、春はいよいよ植え替えの適期。
基本的に素手で作業することをおすすめします。サボの刺が刺さったところで死にはしません。手袋をすると、作業が荒くなってサボの刺や根を傷めやすいのです。どうしても痛いという方は台所用のゴム手袋を使うといいでしょう。
まずは鉢から抜き上げるのですが、鉢をトントンと叩いてすぽっと抜けることはまずないでしょう。糊で固められているからです。
この糊は水で溶けます。ぬるま湯で溶かすのが一番でしょう。
竹串などでほじりだしてはいけません。球体や根が傷ついて腐ります。経験者は語るというやつです。

抜き上げたら土をほぐすように落とします。(水で溶かして洗い流したなら、この作業は必要ありません)
このとき根がボロボロと切れて丸裸になってしまうなら、根腐れしてます。腐った根を全て取り除き、2、3日陰干ししてから植え込みます。多少経験のある方なら、根を全て切り捨て挿し木で更新したほうが生存率が高いかもしれません。
細根が少々ちぎれたくらいならすぐに植え込んで問題ありません。
栽培書にはよく、「根を1/3くらいに切りつめる」なんて書いてありますが、無視しましょう。あれは栽培設備、技術、環境に恵まれた条件下で、生長を促進するための方法です。まずは確実に活着させて生かすことを考えましょう。

こんな感じで十分。


 《鉢》

鉢は普通のプラスティック鉢が手軽でしょう。リッチな方は陶器鉢をどうぞ。
素焼き鉢は乾きすぎます。
とはいえ、室内で育てる方、土が乾いていると水をやらずにはいられない方は素焼き鉢が向いているかもしれません。
鉢のサイズは、サボの直径よりひとまわり大きい程度。大きすぎる鉢を使うと、用土の過湿状態が長く続き、失敗しやすくなります。


 《用土》

土は市販のサボ多肉用土を使うのが無難でしょう。1、2株しか持ってないなら百円ショップの1リットル入りのもので事足りるはずです。
ただあれは栽培量が多いと割に合わないので、そういう方はホームセンターで5リットルや12リットルのを買ってくるといいでしょう。容量が多いほど安くつきます。
ちなみに私はサボ多肉用土4、赤玉土中粒2、腐葉土2、くん炭1ぐらいの割合で混合したものを使ってます。小さいのや根が繊細なものは、これから赤玉を抜いて腐葉土を減らしています。
用土はあらかじめ適度に湿らせておきます。


 《肥料》

サボは生長が遅く、また根が弱いので鉢花用の化成肥料では強すぎます。できればサボ多肉専用の肥料を使います。化成肥料を使う場合は元肥ではなく、追肥として使う方がいいでしょう。
毎年植え替えていれば、肥料は無理に入れることもないでしょう。
ベテランは反論もあるでしょうが、これは初心者向けの解説。


 《手順》


1、まずは鉢底にゴロ土を入れて水はけをよくします。軽石中粒が最適です。なければ粒の大きい赤玉土、割った貝殻。大鉢なら食品のトレーを割って使うこともありますが、野菜や鉢花ならともかく、サボではおすすめできません。

2、その上に薄く用土を入れます。

3、元肥をいれます。

4、中心が盛り上がるように用土をいれていき、山の中央にサボを据えます。こうすることで根が上手い具合に鉢に広がります。植えづらいからといって、根を丸めたりしてはいけません。

5、また用土を入れていき、サボを落ち着かせます。用土を指で押して詰めてはいけません。用土を落ち着かせるには、鉢を軽く床に打ちつけます。あまり深植えにしないほうがいいでしょう。
これで植え替え完了!


 《その後の管理》

普通の植物は植え替え直後にたっぷりと水をやりますが、サボの場合やってはいけません。サボを腐らせる大きな要因のひとつがこれです。
水やりは2、3日から10日後。気候やサボの状態によって違います。サボの状態と気候がよければ短く、逆なら長くです。
置き場は暖かい窓辺や、外なら直射日光が長時間当たらない明るい場所。活着していないサボは日焼けしやすいのです。ちり紙を被せておくという手もあります。
うまく活着して球体がふくらみ成長点が動き出したら、通常より水やりを多くして発根を促します。
その後は通常の管理に戻します。


サボテンの育て方・水やり編

2007年04月10日 |  栽培の基本

 

「だって、枯らせてしまうことを恐れるのは、それだけ植物を大切にしたいという気持ちの表れでしょう。そういう気持ちを持っている人のほうが、植物とじょうずにつきあっていく素質があるんです」(山本順三著 「スマイルプランツ」より)

 

あらかじめ言っておくと、この記事はサボテン(以下、サボ)を枯らして思い悩むような心優しき初心者に向けたものです。実生サボを接ぎ木の練習台にするようなベテランはお呼びでないのです、しっしっ。


 【水やりについて】

サボは水をほとんど必要としない、これは嘘です。
サボ(仙人掌)といえども霞を食って生きているわけではないのです。
サボは雨期と乾期がはっきり分かれた気候の中で自生しています。
短い雨期に十分な水分を得て生育するわけ。
だから生育中はしっかり水をやる必要があります。
水をやるときはサボの頭からかけてやり、鉢の中全体に水が行き渡って底穴から流れ出すくらい。
ただし、刺や綿毛を観賞する種類は水やりで汚れてしまうことがあるので、土に直接やります。


 《春の水やり》

サボが生育を開始する時期です。
成長点が活性化してきたら(後述)、土の表面が乾いてから2、3日後に水やりします。
これはあくまで安全を見込んだ大まかな目安。
鉢の大きさ、用土の種類、サボの状態、気候条件によって大きく変わります。
この辺は経験が全てです。ご自分でサボの育て方を調べた方ならうんざりしているセリフでしょうが、「水やり3年」です。


 《梅雨の水やり》

この時期は土がなかなか乾きません。生育も鈍ってくるので水やりを減らしていきます。
天気予報をよく見て、晴天が続きそうなときにやります。
ただ、春の植え替え後うまく活着せず元気がないサボは、わざと雨に当ててやったり、雨や曇天が続くときに水やりすると元気を取り戻すことがあります。(普通は雨に当てません)


 《真夏の水やり》

意外ですがたいていのサボはこの時期が一番苦手です。
自生地では昼と夜とで激烈な温度差があるので、夜になっても気温が下がらない日本の夏はサボにとっても苛酷なのです。
生育を停止したサボは水やりを月2、3回に減らします。育てるのではなく衰弱を防ぐためという気持ちで。
順調に育っている種類は積極的に水をやって問題ありません。
要はサボの調子をよく観察すること。


 《秋の水やり》

夏に休眠していた種類もまた生育を開始します。
水やりは春に準じます。
気温の低下にしたがって生育が鈍ってきたら、当然水やりを減らしていきます。目安は表面が乾いてから1週間から10日後。


 《冬の水やり》

この時期に育つ種類はほとんどありません。(温室でもあれば別ですが)
水やりは月に1、2回、土の上部1/2から1/3が湿る程度。
冬は体温を奪わないように、頭から水をかけないようにします。
春から秋まで健康に育ってきたサボなら、この時期はあまり神経質になる必要はありません。



 【生長してるかどうか分からない?】

サボが生長中か否かは成長点(サボの頂上中心部)で判断します。
ここの刺がみずみずしく、色が周りの刺と違っていれば生長中です。


左は生長中。右は休眠中。