週刊ヤングジャンプで連載されていたマンガ「ゴールデンカムイ」が
最終回を迎えるにあたって、アプリで全話無料公開されていることを思い出して、
公開が終了する2日前の夜から読み始め、
最終回が掲載された号の発売された4月28日までに何とか読み終わりました。
(ところがその後、無料公開が延長されたことを知ったのですが…)
「ゴールデンカムイ」が面白いという噂は何年も前からちょいちょい聞いていて、
特にその存在が気になったのは、
2019年の留学中に大英博物館で開催されることが発表された「マンガ展」がきっかけでした。
来年2019年5月に大英博物館で漫画の特別展が始まる!
— ミウモ 𝕄𝕖𝕨𝕞𝕠 (@notfspurejam) December 5, 2018
ESにエドガーとアランが載ってるなんてビックリするよ!! pic.twitter.com/o0AzHggEvE
↑「マンガ展」開催を報じるロンドンの無料新聞イブニング・スタンダードの記事。
(自分至上最多数のRTを稼いだツイート)
記事では来場者に性の駆け引きから広島まで描くこのジャンルの奥深さを知ってもらいたい、と書かれていますね。
ご存知の方も多いと思いますが、このマンガ展で
「ゴールデンカムイ」に登場するアイヌの少女アシリパ(リは小文字)がメインビジュアルで使用されていたのです。
グレートホールの垂れ幕(左)
一応、まだ「ゴールデンカムイ」を読んでいない方向けに、
大英博物館のキュレーターの方による紹介文をそのまま紹介しておきますね。
「ゴールデンカムイ」は2019年6月現在、100億部を発行し
アニメ化され、英語にも翻訳されている比較的新しいマンガだ。
野田サトルによって描かれた本作は、1900年代初頭の北海道を舞台にしたドラマチックな冒険譚である。
主人公の「不死身の杉元」は、アシリパという知識豊富なアイヌの少女と手を組み、
アイヌ民族から盗まれた金塊を探し出そうと
大日本帝国陸軍第七師団やその他のいかがわしい登場人物と激しい競争を繰り広げる。
野田は描かれた料理を食べることを含む、あらゆる視点を研究。
物語に引き込まれるにつれ、その美しさに心をつかまれるだけではなく、
北海道やアイヌの風習についても学ぶことが出来る。
アシリパがプリントされたグッズもありました
当時私はまだ「ゴールデンカムイ」を読んでいなかったので、
萩尾望都好きの友人たちに「ポーの一族」のグッズを買うことばかり気になって、
アシリパのグッズまでは購入しませんでしたが、
(結局「ポーの一族」はポストカードしか置いてなかった…)
撮影出来る展示された生原稿はだいたいカメラに収めていたので、
「ゴールデンカムイ」の展示も後から画像で振り返ることが出来ました。
展示されていた「ゴールデンカムイ」の原稿。一番上はアシリパがクワエチャラセ(杖滑り)をする場面
解説には作品の概要とあらすじ、そして
「日常生活では味わえない経験が出来るのがマンガの魔法!」と語る、
杉元とアシリパのコスプレをした日本のファンの写真が紹介されています。
作品を読み終えたばかりの新しい読者として、
作中で描かれるアイヌ文化の信憑性や描かれ方の正確性・公平さについては、
考察するだけの知識や情報、余裕がまだないので一度横に置いておくとして、
私自身も読んでいくうちにどんどん物語の世界に引き込まれてしまいました。
前半のコマ割りが分かりにくく感じたり、チ○コ&ウ○コ発言が多すぎるとか、
(下ネタは嫌いじゃないし、ウ○コの新鮮さの確認は獲物の足取りを辿るために大事だけどね…)
出てくる元囚人や軍人がとにかくキモすぎる(笑)といった読みにくさはかなりありましたが、
過去に読んだ作品で例えると「風の谷のナウシカ」のような、
金塊を追い求める敵味方が状況に応じて行動を共にしたり、
それぞれのキャラクターが過去の後悔や深い苦悩を抱えている姿が描かれることで人物像が際立ち、
壮大でダイナミックな作品だと感じました。
そのうち、幾多の名作が存在する日本のマンガ作品の中で
なぜ大英博物館は「ゴールデンカムイ」をメインビジュアルに使ったんだろう?
と今更になって気になるように。
そして当時の記事を読んで確認したところ、
「若手作家の作品で女性の主人公であり少数民族の文化を描くダイバーシティの理念の体現である」
といった理由もあったらしいのですが、
そもそもはアイヌの芸術を受け継ぐ工芸家、貝澤徹さんが大英博物館に紹介したそうなんです。
本文より引用→'Indeed it was Kaizawa who introduced the manga series ‘Golden Kamuy’ to the British Museum.
Kaizawa and his fellow Ainu artists’ influence can be seen on the careful articulation of the blade sheaf hanging from Ashirpa’s belt in the lead image for the exhibition.'
貝澤 徹 Toru Kaizawa|職人・作品 Artisan & Products|二風谷アイヌ匠の道 Nibutani Ainu Takumi no Michi
大英博物館は北斎作品の所蔵や展示など、近年日本の美術にもかなり力を入れていますが、
マンガ展が開催される前年の2018年に日本の常設展がリニューアルオープンされて、
その中に貝澤さんの作品をはじめアイヌに関する展示も含まれているそうな。
【HTBセレクションズ】大英博物館にアイヌ現代アート貝沢徹さんの作品展示
このニュースで紹介されているセミナーの様子は↓こちらのページで全部見られるみたい。
後で動画をチェックしてみよう…(確認したら追記するかも)
New Approaches to Ainu Contemporary Art (Wednesday 3 October 2018)
大英博物館ホームページでも貝澤さんの展示作品「ケウトュムカンナスイ/精神再び」が紹介されています。
(右上のMenu→Searchで、Ainuを検索していくとRelated objectsのリンクから他の所蔵品も見ることが出来ますよ!)
熱心なファンの方は既にご存知なのかもしれませんが、
原作者の野田先生は貝澤さんと交流があって、
樺太アイヌの血を引く登場人物であるキロランケが持っていたマキリ(小刀)は、
貝澤さんが野田先生に作ったものがモデルになっているんですね!
ゴールデンカムイ5巻(12月18日発売)から登場するアイヌの男キロランケが持つマキリは平取町二風谷在住のアイヌ工芸家、貝澤徹さんに作っていただきました。実物も白くて繊細な芸術品です。https://t.co/OPmAHziNmF pic.twitter.com/UYYBPab9Qf
— 野田サトル (@satorunoda) October 25, 2015
大英博物館の依頼で日本館に展示する新作を提供した貝澤さんが「ゴールデンカムイ」を紹介し、
再オープンの翌年に開催されたマンガ展のメインビジュアルにアシリパが採用された、と。
マンガ展を通して新しい日本の展示物も紹介するという自然な連携があったんですね。
日本から生まれた独自のエンタメであるマンガの奥深さを紹介し
アイヌの古い伝統文化を世界にも残していくという意味で、
もっともメインに扱うにふさわしい作品であったということかもしれません。
だというのに! 私はリニューアルされた日本の常設展を見に行かなかったので、
アイヌの工芸品の展示が増えていることも知りませんでした。
もー! 知ってたらマンガ展の後に行ったのに!
展示の解説文の中で触れておいてくれよーっ!
…いつになるかわからんけど、次回大英博物館に行く時は絶対チェックせねば…
(その前に北海道行きたい…)
ちなみに私が以前常設展に行った時の写真は↓の記事に少しあります。
この時にもアイヌの工芸品はすでにいくつか展示されていたとは思います。
マンガ展については、他の作品の画像もたくさん撮影したので、
記事にまとめたいのですが、何しろ枚数が多いのでなかなか実現せず…
いつかこの記事と紐付けて記録を残しておければいいなと思っています…
参考:
Museums with Japanese Art – Sainsbury Institute for the Study of Japanese Arts and Cultures
大英博物館はなぜ「マンガ展」を開催したのか? キュレーターが語るその意義
もう一つの日本文化(大英博物館から貝澤徹さんへの制作依頼、ほか) | もうひとつの日本文化(アイヌ文化)徒然ブログ
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます