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社会主義市場経済-農業問題

農業問題
2009・04・19

私は、日本と中国の農業政策を比較検討し、日本の農業政策の方向を考える目的で、特に日本の農業の現状について発表しました。

最近、日本の食糧の自給率が40%を切ったということが話題になっていますが、これは今の政策からするとむしろ当然の結果です。
GHQは1947年、「地主制が軍国主義の温床になった」として、地主から農地を安価で買い上げ、小作人に売り渡しました。「農地解放」ともよばれるが、これは、当時中国革命の中で中国共産党が地主の土地を農民に解放して、多くの農奴が自作農になっており、この影響をおそれて行なったものです。これによって、当時日本共産党の支持基盤だった農村は、保守の支持基盤になったと言われています。農民は大いに生産意欲を高めましたが、生産高そのものはさほど高まらず、政府は各種の膨大な奨励金を出しました。それでも食料の自給は困難を極めました。
そうしたおり、1954年にアメリカが出してきたのがMSA協定です。これは「日本とアメリカの相互防衛援助協定」というもので、アメリカは日本に余剰食糧を供給するので、日本は食糧を自給しなくてよろしい。食料の増産を打ち切りなさい。そのかわり、日本はそのお金で再軍備をし、自国の防衛は自分でやりなさい、というものです。麻生首相の祖父の吉田茂首相はこれに飛びつき、その数ヵ月後には自衛隊が創設されたのです。いまアメリカが要求してきている農産物の自由化も、このときにすでにレールは敷かれているのです。ちなみにアメリカはこのMSA協定と同じ内容の協定を自分の手下と考える世界中の国と結んでいます。

現在の政府の農業政策の基本は、自給率の向上というより(口先では言っていますが、本気では考えていません)農地の集積化と経営の大規模化です。企業の参入も認めています。農業の自由化に備えて、少しでも国際競争力のある作物を作ろうということです。しかし現状は、それもうまくいっていません。農民は、二束三文で農地を貸すより、いずれ道路でもできるか、市街化調整区域になって宅地として高い値で売れるのを待っていた方がいいというのが正直なところのようです。

日本の耕地面積は1960年に609万haあったものが2008年には463万haにまで減少しました。(政府目標は、2015年までに450万haまでさらに減らすというものです!)農業就業人口は1960年に1454万人いたのが2008年には299万人に。

しかし、農業生産物,食糧というものは、他国で生産されたものを大量の石油を使って運んでくるということ自体が大変なムダであり環境汚染です。またその国の自主と独立のためにも、食糧自給は欠かせないものです。

中国の農業政策については発表者に任せますが、後に発表した「中国の土地制度」を見ても、中国の場合は、「農地を絶対に減らさない」ということが根本政策になっています。農地を工業用地や商業用地に変更する場合は、他の場所で農業用地を開発することが絶対条件です。そこを使用するものに開発ができなければそれを認可した政府が農地を開発しなければなりません。統計的にも、現在、中国の都市部では農地は減少していますが、その周辺部や辺境地区では耕地は拡大しており、全体としては拡大しているのです。

日本の農業をWTOの路線で国際市場に全面開放すれば、日本の農業が壊滅するのは疑いの余地がありません。工業製品と農産物を市場の競争原理で取引することじたいが間違っているのです。解決するには、農業や農民をサポートする新しい社会システムが不可欠でしょう。
わたしは日本農業の復興策としては、中山間地の再生、土地や自然条件の格差に対する補償制度、生産単位の大規模化による土地や機械などの農業資源の最適な利用、ただし農民の土地や自然への愛着を切り捨てず、集団化によるメリットを生かした、農民の自主的自律的な集団化の促進、農民を一定の出来高払いの要素をふくんだ公務員化、にするのがよいと考えていますが、どうでしょう。地域社会に食糧を供給する仕事というのは、極めて公共性の高い職業であり、社会全体で守っていかねばならないものです。

                           (文責 インバ)



中国の三農問題をめぐって

*三農とは―――中国の農業・農村・農民

中国の改革開放の中で中国農村の発展は2つの大きな意義を有していた。

一つは、市場経済の発展と社会主義民主についてであり、いまひとつは中国近代化に当たって各種の基礎を作ったということである。
17期3中総では 三農問題が最重要課題であること、中国の特色を持った農業を発展させることが討論された。それは中国社会の発展にとって、農民の増収が進まないことがネックとなっているからである。たとえば、都市と農村では一人当たりの可処分所得は3倍の差がある。原因としては次のようなものがあると指摘される。
1. 市場経済によるもの 農村の人材や物資が都市へ出てゆくこと
2. 国民収入の再分配問題 農村の需要があまりにも大きすぎ、再分配の調整だけでは不可能
3. 農産品、農民工、土地への補償が低価格である

今後はどのような方向性を持っているのか。

工業が農業を養い、都市による農村の牽引、伝統的農業から都市と農村が一体となった発展。指導方針としては制度建設、近代農業の発展、社会事業を発展させる。戦略的任務として新たな農村建設、中国の特色を持った農業、都市と農村を統一的に発展させる。特に土地請負期限については、「永遠」のニュアンスに近い「長期不変」から「長久不変」へと変わった。また、従来の「支農恵農」という表現から、農民農業の自立強化を意識した「強農恵農」という表現が使われるようになっていることが注目される。

土地の移転については2008年行われた農村調査の中で23%が他人へ譲渡しており特に沿海地域で多いことが指摘されている。土地使用権の移転については3つの禁止事項が決められている。(1.土地の集団所有制の変更2.用地の使用目的の変更3土地使用権の侵害)
また、土地収用にあたって農村での矛盾が突出している(陳情の64%が土地収用について)ことも国務院の調査グループが行った調査で明らかにされている。公共事業のため土地収用がなされる場合には理にかなった農民保障がなされること、さらなる関係法規の整備の必要性が指摘される。
今後はどうなるのか?

個々の農家を中心とする農家請負生産という体制は、食べるのにやっとの解決にはなったが、市場経済とリンクしたときにはあわない形である。農業の専業化、共同化という新たな農業経営システムの創出が必要となる。

                           (文責 野村)




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