科学者はエボラの防御の弱点を明らかにする
Scientists Reveal Weak Spots in Ebola's Defenses
スクリップス研究所(The Scripps Research Institute; TSRI)の科学者は、エボラウイルスの表面でZMappの抗体が標的にする弱点を特定した。ZMappは最近のエボラ大発生で数人の患者に投与された試験的な抗体カクテルである。
この研究はTSRIの構造生物学者Andrew WardとErica Ollmann Saphireによって指揮されたもので、ZMapp抗体がどのようにエボラウイルスと結合するのかを三次元画像によって明らかにした。
Wardは言う。
「ZMappがどのようにエボラを標的にするかについて知った今、我々は新しく開発された全ての抗エボラ抗体を比較することができる。」
Mappバイオファーマシューティカル(サンディエゴ)によって開発されたZMappは、進行中のエボラウイルス大発生において数人の患者を治療するために8月に用いられた。ZMappを投与した7例のうちの5例が生き残ったが、研究者はZMappが患者の回復において効果を生じたかはまだ確実には言えないという。
新しい研究はZMappがなぜ効果的でありえたかについて説明する。電子顕微鏡画像を分析したところ、ZMappの2つの抗体はウイルスの底部近くで結合していた。それはウイルスが細胞に侵入することを阻止すると思われる。第3の抗体はウイルスの最上部付近に結合し、それはおそらく感染箇所に免疫システムを呼び寄せるビーコンとして作用する。
このZMappの新しい画像では、ウイルスの底部近くの2つの抗体は結合する部分(エピトープ)が重複して競合しているように見える。この箇所は先行試験で特定されたエボラウイルスの表面の弱点であると思われるが、これから先もこの2つの抗体を使用し続けるべきか、それとも第3の角度からウイルスを攻撃するべきかという疑問が生じた。
8月に学術誌Scienceで発表された研究によれば、エボラウイルスは現在の大発生中に300以上の遺伝子的な変化を経験した。しかし幸いなことに、新しい研究はZMapp抗体が結合する部位がこれまで影響を受けなかったことを示す。
今回の新しい研究は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)により資金助成されたウイルス性出血熱免疫療法コンソーシアムの一部である。コンソーシアムはエボラウイルスならびに他の密接に関連する出血熱ウイルスを中和する最善の抗体カクテルを開発することを目的として、世界中の25の研究室からの抗体をテストしている。
コンソーシアムのための次の段階は現在の大発生の生存者からの新しい抗体を調査することである。コンソーシアムを指揮するSaphireは、ウイルスが変異して治療薬に抵抗性になる場合に備えてバックアップ・カクテルの開発に成功することを望んでいる。
ZMappは、2015年の初めに臨床試験に入るのを期待されている。カクテル抗体は、元はカナダの衛生行政機関と感染症の米陸軍医学研究所によって分離されたものである。
記事出典:
上記の記事は、スクリップス研究所によって提供される素材に基づく。
学術誌参照:
1.保護的抗体の構造は、エボラウイルス上の脆弱な部位を明らかにする。
PNAS、2014年11月17日;
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141117154608.htm
<コメント>
ZMappに含まれる3つの抗体のうち2つはウイルスの基部に結合して細胞への侵入を阻止し、もう1つはウイルスの上部に結合して免疫を誘導しているようだという記事です。
エボラウイルスは免疫を抑制する仕組みを持っているため、免疫を刺激することも重要になってくるのでしょう。