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メラノーマはどのようにしてイピリムマブに抵抗するのか

2016-09-26 06:06:12 | 癌の治療法
Melanoma tumors use interferon-gamma mutations to fight immunotherapy

September 22, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/09/160922125433.htm

メラノーマの腫瘍は、免疫療法のイピリムマブipilimumabに抵抗するために『免疫応答経路の遺伝子』を突然変異させることがテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの報告により明らかになった

「このような突然変異によるインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)シグナル伝達の喪失は、イピリムマブに対して抵抗するための経路としては初めて明確に腫瘍内で明確になった」
研究のリーダーであるPadmanee Sharma, M.D., Ph.D.が言う

彼女は泌尿生殖器腫瘍内科学・免疫学/Genitourinary Medical Oncology and Immunologyの教授であり、MDアンダーソンの『月ロケット発射計画/Moon Shots Program』の一部である『免疫療法プラットフォーム/Immunotherapy Platform』の科学顧問scientific directorでもある
この『月ロケット計画』は科学的な発見による人命を救う新機軸の開発を加速するよう設計されている

※platform: 宇宙船の位置を制御する装置

彼らの研究結果は、イピリムマブへの応答を前向きに予測するために、そしてIFN-γと関連する抵抗性を打ち破るための新たな治療の組み合わせを探求する目的で、一連のIFN-γ遺伝子をテストすることへの扉を開く


イピリムマブIpilimumab(商品名: ヤーボイYervoy)は、T細胞表面のブレーキとして働くタンパク質のCTLA-4を阻害することで癌に対する免疫の攻撃を解放する初めての薬剤である(T細胞とは適応免疫系の誘導ミサイルとして働く白血球である)
CTLA-4を阻害する薬剤は2011年に転移性メラノーマの治療薬として承認され、他の多くの癌でも単一の薬剤または他の薬剤との組み合わせで臨床試験中である


「これまでの研究で、イピリムマブによる治療が著しい延命効果/生存率の上昇significant survival benefitをもたらすのはメラノーマ患者の約20パーセントということが示されてきた」
Sharmaは言う

「患者の大半で臨床的な奏効/clinical responseが低いことのメカニズムは不明のままである」


患者の応答と生存への影響
Impact on patients, response and survival

インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)は免疫応答を刺激するサイトカインで、つまり免疫細胞の活性化にとって重要なシグナル伝達分子である
加えてIFN-γは細胞表面の受容体に結合し、細胞増殖を阻害して腫瘍細胞の死を促進する一連のイベントを開始することにより腫瘍細胞を直接攻撃する

しかし、この直接的な細胞殺傷の役割は遺伝子の変異によって阻害されるかもしれないとSharmaは言う
Sharmaたちによる以前の研究で、イピリムマブの治療はT細胞によるIFN-γの産生の増大につながることが示されていた
そこから研究チームは、IFN-γ経路に欠陥がある腫瘍細胞がイピリムマブに抵抗するかもしれないという仮説を立てた

まず最初に、イピリムマブの治療を受けた16人のメラノーマ患者から得られた腫瘍サンプル内のIFN-γ経路遺伝子に関して全エキソームシーケンシングデータを評価した
治療に対して4人が応答し、12人が応答していなかった

分析の結果、応答しなかった患者の腫瘍からは合計184の変異が検出され、その内142がコピー数の変化/copy number alteration(欠失または増幅)で、42が一塩基の変化/single nucleotide variantだった
応答した患者respondersでは4つの変異しか見つからなかった
さらに分析したところ、応答しなかった患者はIFN-γ経路の遺伝子に平均15.33の変異があり、コピー数変化が著しい違いを生じていた

応答しなかった12人の内9人でコピー数の変化があり、中でも最も重要significantだったものは、IFN-γの二つの受容体であるIFNGR1とIFNGR2のゲノム喪失、そして二つの重要な下流の遺伝子であるIRF-1とJAK2の喪失だった
経路を阻害することが知られている二つの遺伝子、SOCS1とPIAS4は増幅されていた

TCGAデータベースを使った367人のメラノーマ患者の生存データの分析からは、変異のない患者が48.2ヶ月だったのと比較して、コピー数が変化した患者は40ヶ月という有意にsignificantly短い生存期間だったことが示された


細胞系統とマウスモデルによる確認
Cell line and mouse model confirmation

IFN-γの攻撃に脆弱なメラノーマ細胞系統の実験では、このサイトカインの受容体であるIFNGR1をノックアウトすると、IFN-γが存在していても腫瘍細胞の増殖が可能になった

同じ細胞系統(B16/BL6)を使ってマウスにメラノーマを生じさせてイピリムマブを投与したところ、
IFN-γの完全な受容体を持つマウスでは24匹中4匹しか癌を発症しなかったが、
受容体をノックダウンしたマウスは25匹中12匹で腫瘍が発生した

未治療のマウスは全て腫瘍の増殖で死亡した
イピリムマブを投与したマウスでは完全なIFN-γ受容体を持っていると80パーセントが生き残ったが、
受容体をノックダウンしたマウスは約半分しか生き残らなかった


次の段階
Next steps

今回のチームの研究結果は、IFN-γ経路の11の遺伝子のシグネチャーがイピリムマブの応答を予測するものとして前向き臨床試験でテスト可能であるという見込みを示す
もし予測因子predictorとして確認されればイピリムマブ単独または組み合わせによる治療をガイドするために利用可能である


今回とは別の研究領域として、IFN-γ経路の喪失を乗り越えるための組み合わせ治療の探索がある

「IFN-γ経路の遺伝子が停止した腫瘍に打ち勝つために、免疫系を刺激して他のサイトカインを作らせることが可能かもしれない」
Sharmaは言う

IFN-γシグナル伝達経路の欠陥は、CTLA-4とは別の免疫チェックポイントであるPD-1阻害に対する抵抗性を引き起こす一因であることが他の研究者によって既に発見されている

IFN-γは重要ではあるものの、腫瘍には免疫療法への抵抗を助ける他のメカニズムが存在する可能性についてもSharmaは言及している


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2016.08.069
Loss of IFN-γ Pathway Genes in Tumor Cells as a Mechanism of Resistance to Anti-CTLA-4 Therapy.
抗CTLA-4療法に対する抵抗性のメカニズムとしての、腫瘍細胞内のIFN-γ経路遺伝子の喪失




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https://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141104163019.htm
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