今日も元気で頑張るニャン

家族になった保護猫たちの日常を綴りながら、ノラ猫たちとの共存を模索するブログです。

シリーズ「ノラと家猫と」 その1・灰白くん、白黄くんと地域問題(前編)

2018年06月13日 | シリーズ完結:大脱走、「ノラと家猫と」
~本記事は全5話からなるシリーズです~

久しぶりの更新となりました。
2週間前に前回の記事を書いた翌日からある事件が起きて、1週間翻弄されました。その事件はそれまで潜在的に抱えていた問題と密接に絡んだものでした。その後、自分は寄る年波のせいか寝込んでしまい、多少回復したこの3日ほどは貯めに貯めた店の仕事に打ち込んでいます。草木がぐっと生長を始めるこの時期、おちおちと休んではいられません。

ノラたちと向き合うようになってもうすぐ3年になります。家裏に現れたソトチビ、店に現れたポンがきっかけでした。その時はまだテツが存命だった。それから1年経ってテツが亡くなって、ノラ保護活動を意識するようになった。ただ、頼る人も教えを乞う人もいない中、試行錯誤の連続でした。最近になってわかってきたのは、当初の自分の考えが甘かったということ。ノラの問題はそんなに単純なものじゃない。多くの善良なる市民を巻き込んだ、とても根深い問題だったということです。

今回から5話続けて、「ノラと家猫と」というタイトルで書きます。このブログの全編を通してのテーマなので、ある意味縮図のようなものです。1週間に起きた事件をライブ形式で書こうと思いますが、今回はその前段(プロローグ)で、主人公はまだ出てきません。ダイフクの最新記事の最後で少し述べたように、灰白くんと白黄くんに端を発する住民問題がテーマです。

その前に、当住宅区について少し述べます。
バブルの最盛期に分譲された、田園風景に囲まれた20数世帯の小さな街でした。しかし町会として独立し、500世帯を超える大きな町会に対抗して地区運動会に独立参加。2年目には全員参加で、最下位定位置の予想を覆して優勝するという偉業を達成しました。それ以来お祭りや新年会やゴルフ大会など町内のイベントが盛り沢山で、住民の結束を固めていったのです。

バブルがはじけて、数年後には資産価値が3分の1以下になるという悲劇を共有し、殆どの人が東京まで通勤し、年齢も近く気心も知れていた。その後周辺の分譲があって世帯数も倍以上になり、入居世代も広がるに連れて、いつしかそれまでのような付き合いはなくなりました。でも、とてものどかで争議というものがまったくない平和な町です。実は自分は2年目に優勝したときの町会長、妻は昨年度まで役員をやっていましたがこの4月から隠居の身となりました。

これまでも何度か述べましたが、当初は中外飼いのニャンコが数匹いて、わが家の3匹組もリードでよく外にいたので、外来ノラの姿は殆ど見かけませんでした。しかし20年以上も経てば町の猫たちも代替わりし、完全中飼いが主流になってくると、ノラの姿をちらほらと見かけるようになったのです。猫はテリトリーを持つ動物なので猫密度の高い方から低い方へと移動する傾向がある。そして、相変わらず子猫を捨てて行く輩もいる。

               
                      灰白くん

灰白くんは、リン、クウ、キーの一家をようやく家中に保護して数日も経たないうちに家裏に現れました。子猫だった昨年の夏に何度か見かけたが、それ以来8ヶ月ぶりの再会だった。当初はご飯をねだるでもなくクウとキーの騒動に呼応して外で鳴いていた。問題は、その声が異様に大きいこと。これまで付き合ってきたノラたちは殆ど鳴かなかったので、初めての経験でした。灰白くんはそのうち家裏に現れる頻度が増し、早朝から深夜まで鳴き喚くようになったのです。

当時は3匹のノラを保護したばかりで当家にも余裕がなかった。はじめはそのまま放っておいたが(時には追い払ったりもした)、あまりにもうるさいのでご飯をあげたら静かになった。それから数日、灰白くんは家裏でご飯を食べ、自分の心配はむしろソトチビが来たときにどうやって迎えるかということだった。

               
                      白黄くん

ところがまた状況が変わった。白黄くんが現れたのです。白黄くんは静かな猫で、当初は灰白くんと一緒にご飯を食べたりしたが、そのうち灰白くんを追い払うようになった。その頃は灰白くんがかつてのみうやリン一家のように当家裏でくつろぐことが多くなっていたが、白黄くんはその場所(環境)を奪い取ろうとしたのだろう。その後は白黄くんが家裏に居着き、灰白くんは近づけずに周辺から声をあげるという構図になり、頻繁に起こる喧嘩声とともに、家裏界隈はこれまで以上に騒々しくなってしまったのでした。

その鳴き声の騒音はたいそうなもので、夜中も早朝も関係なし、自分も妻もノイローゼ気味になるほどだった。であれば、猫苦手の人にとってはいったい・・・。 過去記事「子ニャンを救え」で書いたように、わが家の周辺には猫苦手の方々が多い。わが家の隣、その裏、そしてわが家の裏、それぞれの奥様をAさん、Bさん、Cさんとすると、このご重鎮の奥様方はみな猫苦手なのです。特にBさんCさんは猫アレルギーで、Bさんは猫の声を聞き続けると過呼吸を起こしたこともあるほどの重症でした。

ある日、そのAさんとBさんが訪ねて来た。"重鎮"とはいえわが家の奥様とは親交があります。わが家の奥様も他ならぬ"重鎮"の1人で、自分にとってはまとめて怖い存在なのです。 話はやはり"苦情"から始まった。ただ、奥様方は当家の中の猫たちの騒動だと思っていたらしい。それで灰白くんと白黄くんの説明をすると、困ったような顔になった。でも、だからと言って納得してもらえるわけもない。

奥様方は当面、自分の家の周りが静かになって安眠できればいいのです。特にBさんにはそれはもう死活問題と言えるほど深刻だった。あれだけ社交的で他人に気を遣って、宴会の盛り上げ役だった明るいBさんの、あんなに悩んだ暗い顔は初めて見た。何とかしなければ、本当にそう思った。でもどうやって。追い払っても隣地に逃げるだけでまた直ぐに戻ってくる。食べ物をあげなければそのうちいなくなるかもしれないが、それまでの間は滅茶苦茶に鳴き喚くことが目に見えている。いったいどのくらい、本当に2匹が諦める保証はあるのか・・。

そのとき自分は、やけくそとも思える提案をしました。その前に、自分には駆除という考えのないことを伝え、人間の生活が優先されるべきだという考えに同意しました。だからできることは何でもやる。当面は潤沢に食事を与えてみる。今までは量も少なく時に追い払ったりと中途半端な与え方だったから、猫たちも不安を拭えなかったのではと思えたのです。ただ、この方法だと猫たちは確実に居着いてしまう。だから、折を見て家中に保護すると。

奥様方は怪訝な表情だったけど、静かになるならとその場は収まった。そして、当家の新しい試みが始まった。外猫用の食事は常時スタンバイして、2匹のいずれかが鳴けば食事を与える。早朝だろうが深夜だろうが喧嘩をすれば出て行って収める。当敷地に用意したトイレや爪研ぎを強化する。とにかく鳴かないように、猫たちが落ち着くように努めました。

               
           仲良く食事することもある灰白くんと白黄くん

この努力は功を奏したように見えた。少なくとも、灰白くんの声がだいぶ小さくなった。喧嘩も減った。これならあとは時間をかけてお友達になって、リン一家と同じように家中に保護すればいい。その頃までには家中の子たちも(里親さんが見つかって)減っているかもしれないし・・。 と、思い始めた頃でした。新しい町会役員の名前で1通の回覧が届いたのです。それはとても短い文章で、具体的な記述はひとつだけ。「最近、外飼いの猫の件で7,8件の苦情がありました。外飼いされている方はしっかりと管理されるようお願い致します。」

平和だった小さな町に波風が立ち始め、どうやら自分はその中心にいるらしかった。


その1(後編)に続きます。


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