ジリ貧のハリウッドは相も変わらず続編、リメイクの量産に勤しんでいるが、今度は誰も振り返らない1989年のパトリック・スウェイジ主演作『ロードハウス 孤独の街』に手を出した。ラジー賞では5部門にノミネートされた駄作なら、さすがにオリジナルを下回るような事にはならないと踏んだのだろう。結果は大当たりだ。監督ダグ・リーマンと主演ジェイク・ギレンホールは『ロードハウス』を極上のB級映画へと仕上げ、123分間なんともいい湯加減が続くチルな1本である。近年『アンビュランス』『コヴェナント』など、“普通のハリウッド映画”に意識的なギレンホールは終始ニヤケ顔のゴキゲンっぷりだ。
闇ボクシングに生きる主人公ダルトンを紹介する冒頭部からいい力の抜け具合である。彼の名を聞くやむくつけきの大男は逃げ出し、ナイフで刺されてもどこ吹く風のダルトンに悪漢も尻尾を巻く。ダグ・リーマン、ギレンホールのコンビは終始この調子で、舞台をフロリダキーズのロードハウスに移してからはさらにオフビートな笑いがタップリ。本作は心地よい週末の夜気を感じながら、ビール片手にダラダラ見るのが一番で、劇場公開を見送り配信スルーへ舵を切った背景には、案外レンタルビデオ時代の復古精神もあったのかもしれない。
当然、こんなオフビートな映画にシリアスな悪役など登場するワケもなく、ハリウッド娯楽映画のクリシェのような小悪党にビリー・マグヌッセンがピタリとハマり、アイルランドの男性総合格闘家コナー・マクレガーがギレンホールにとって不足のないチャームを発揮したことは製作陣にとって嬉しい誤算だったろう。ギレンホールの役柄は驚異的な肉体改造の割に不発に終わったボクシング映画『サウスポー』を想起させ、『ロードハウス』という思わぬ副産物が生まれたことも今となっては悪くないハズだ。ちなみにパトリック・スウェイジ番には続編『ロードハウス2 復讐の鉄拳』がある。ダルトンのぶらり用心棒旅を観たいと思うのは僕だけではないだろう。
『ロードハウス 孤独の街』24・米
監督 ダグ・リーマン
出演 ジェイク・ギレンホール、ダニエラ・メルシオール、コナー・マクレガー、ビリー・マグヌッセン
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