だーばぁの流儀

児童文学作家・岡田なおこブログです。
全身マヒ+オストメイト・作家・アラ還ならではの日々を気ままにつづっています。

終戦記念日なので・・・

2012年08月15日 | クリエーター・モード


このブログでは初めての「画像の挿入」です。上手くいくかしら??? ドキドキ(*_*;
そして・・・これも珍しく「本の紹介」を書きます。
作家の先輩や仲間たちのブログを見ると、よく「本の紹介」など書かれて、
ーーみんな偉いな~と感心するばかりです。
私は自分がちゃんとしたモノを書けないので、人の作品に感想を書いたりお勧めしたりするのが、とても苦手なのです。でも今回は心に響く作品と出会えたので、書くことにしました。


ちえちゃんのおはじき (クローバーえほんシリーズ) [大型本]
山口 節子 (著), 大畑 いくの (イラスト)

内容紹介
戦火にのまれ、多くの人が亡くなった神楽坂。仲良しの女の子二人・ともちゃんとちえちゃんは、再会を誓って、赤城神社の銀杏の木の下におはじきを埋めました。
数十年後、おばあちゃんになった“ともちゃん”は孫のそらちゃんをつれて、おはじきを探しに赤城神社に行きます。
戦後様変わりした神楽坂、そして赤城神社。思い出の銀杏の木はありませんでしたが、おばあちゃんが昔の記憶をたどり、掘っていくと「あった!」
おばあちゃんが掘り当てた物は、溶けたおはじき(ガラスのかたまり)でした。
宝探しの気分でいたそらちゃんですが、「おはじき」をみつけた所から、世界は一転します。
そらちゃんは「戦争中の赤城神社」にタイムスリップ。
そこでそらちゃんが見たものとは…?!

         
             .。o○

実は作者の山口節子さんは作家の先輩であり、二十年来「おかあさん」「なおこちゃん」と呼び合うような楽しいお付き合いをさせていただいています。
公私にわたり山口さんとはいろいろなお話をしてきましたが「戦争体験」について、改まって伺ったことはありませんでした。
山口さんからの暑中見舞いに、
ーー長い間書きたいと思っておりました幼い日の戦争体験を、まずは絵本の形で書いてみましたーー
とありました。

いつも楽しい「おかあさん」の心に常にこの「かなしいおはじき」があったのか・・・と胸が痛くなったのはムスメとしての感想です。

戦争モノは嫌いでしたが・・・

私が児童文学の勉強を真剣に始めた二十数年前。
今でこそ「だーばぁ」となった私ですが、また周囲からは「なおこちゃん」と呼ばれていました(笑)
席をなれべ勉強している方たちは「人生の先輩」、つまり戦争経験者が多くいました。
そういう方が「描きたいテーマ」は戦争(第二次大戦)でした。
また「戦争体験を子どもたちに伝えたい」という想いから、児童文学を学ばれている方もいました。

ーー自分の体験を伝えたい(描きたい)--
それは私も同じですが・・・私はどうも「戦争モノ」が好きになれませんでした。
私の両親は戦中育ち。特に母は東京大空襲で父親を亡くし大きな痛手を背負った人です。祖母(大バー)は戦争未亡人で、私は母方の身内から「戦中・戦後の苦労話」を耳にたこができるほど聞かされました。
だから戦争モノを読むと、「お母さんの話と同じ」「おばあちゃんの話と似ている・・・」

どの物語も似たり寄ったりで、「もう御馳走様」と言いたくなってしまうのでした。

時が経ち・・・私は若気の至りで「戦争モノは嫌いです」と言いすぎたと反省し、児文協企画の「おはなしピースウォーク」に一般公募枠で作品を出してみました。
拙作・コスモスベーカリー物語が「おはなしピースウォーク」に収録していただけたので、少々自信を持って発言しちゃいます。

ーー戦争モノがつまらないのは、手法がパターン化されているから。「第二次大戦」に固執せず「平和」という大きなテーマで物語を引っ張らなければ、後世に残る作品にはならないのでないですか?!

私は「戦争を知らない子ども」です。でも「平和」を主軸に据えれば「戦争」を描けると思っています。


児童文学・絵本だから描けること

話を「ちえちゃんのおはじき」に戻します。
数ヶ月前におかあさん(山口さん)から同人誌を渡され、
「近々この作品が出版されるのよ」と聞いていましたので、ストーリーは大方知っていました。
しかし上梓された「ちえちゃん・・・」は、私のイメージとはまったく違っていました。

大畑いくのさんの絵は素晴らしい!
山口節子ワールドに寄り添いつつも、それ以上の世界観を醸し出しています。
おかあさん(山口さん)はご自身の体験をもとに、神楽坂や赤城神社など実在する場所を書いています。
でも「戦火に引き裂かれた友情」「爆撃で溶けたガラス」は世界中にある普遍的な素材です。
おばあちゃんの昔話、ぬくもりも同様です。
この絵本は世界中どこに持っていっても、言葉が通じない国においても、「心が通じる作品」に仕上がっています。

この作品の一番悲しい場面は「ファンタジー」で描かれています。
これは作者の「愛」であると、私は感じました。
山口さんには実際に「そらちゃん」というお孫さんがいます。山口さんはお孫さん(次世代)に戦争体験を伝える強い使命感でこの作品を描かれました。
その一方で「そらちゃん(子どもたち)を悲しませたくない。おびえさせたくない」という優しさもいっぱいお持ちなのです。

「絵本」という形。
「ファンタジー」という手法。
そのククリの中で「悲惨な体験・シビアな現実=ここでは戦争体験」を書くのは限界も感じますが、「児童文学」というジャンルを選んだ以上は「子どもに読んでもらうこと」を第一に考えなければなりません。
自分の身に置き換えると、それはとてもむずかしいことです。
それをやり遂げた作者に拍手!

ちょうど今日は「終戦記念日」
「未来の平和を考える日」だと、私は思っています。
ご家族で「ちえちゃんのおはじき」を開いてみて下さい。

コメント
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