「善は急げ」と、早速に移動した
エミ王女は母親似なので、父の郷里でも外人だとは思われなかった
「健一、この方はどなたなんだ、前触れも無く、いきなりお連れして…」と、驚き半分、不満半分で、父の父親が言った
「まあ、良いじゃありませんか…、若い二人なんだから」と、母親が庇って
「ちよ!」と下女を呼んで「お客様を壱の間にお連れして」と指示した
そして、追い掛けるように「お風呂に入ってもらいな」と加えた
「健一、お前は着替えたら、話しが有るから」と私の父に言った
健一の実家は何百年も続く由緒有る家で、この村に二十軒ほど有る「高橋」姓の本家であり、しかも古くは平家の落人村だと伝わっている
当主を継ぐと代々「清左衛門」を名乗り、当代は二十一代目「高橋清左衛門」で、父の父である
しかし、母親の真佐が本家の血筋で、当代の清左衛門は分家から来た婿である
着替えて、母の前に座ると
「細かい事は聞かないが、どのようなお方なのかだけは教えといてくれないかい」と言うので
「さる国の王女で、匿って欲しいと、その兄で私の友人が言うので、連れてきた」と、父が答えると
「判った」と言い、それ以上は聞かなかった
暫く滞在する山間の地で、やはり、あれこれ起きるだが…
(続く)