蛇にピアス

「一太郎 文藝」のWebページを見ていたら金原ひとみ氏が一太郎について書いている文章が目につきました。あれだけ話題になっていた作家であるものの、今までまったく気にしていなかったのですが、その文章には何となく感じるものがあったので遅ればせながら『蛇にピアス』を読んでみました。

読み終わってみると二つの意味で裏切られましたね。一つは予想していた文体と大きく異なったこと。もう一つは結構楽しく読めたことです。

文体についてはもっと冷たくも美しい文章なのかと思っていたのですが、世俗的な言葉で切り刻んでいくような感じで、これはこれであの登場人物や場面設定には似つかわしい気がしました。amazon.co.jpのカスタマーレビューでは「文章が稚拙だ」というような意見も書かれていますが、僕はそれほど不快ではなくするすると体の中に溶けていくような感触を持ちました。もしかしたらかなり練りに練って敢えてああいう書き方をしているのかも知れないですね。

また、amazon.co.jpのカスタマーレビューではマゾヒスティックな内容に嫌悪感を示されている方も多いですが、これまた僕はまったく気にならず、むしろ10代、20代特有の「痛さ」を感じてちょっと切なくなってしまいました。人間の死生観は年を経るにつれ、経験を積むにつれ、変化していくものだと思うのですが、厭世観というか虚無感というか、この時期特有の感覚を再認識してしまいました。

ブームから2年ばかりのタイムラグをおいて、僕も多くの人と同じ話題に参加できそうです。

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