London徒然草

「ばく」のロンドン日記

ちろちゃん

2008-01-06 | わんこ




『風が吹くと、桶屋が儲かる』

と日本で言いますが、

『ipod touchをプレゼントされて,写真の大整理をする』はめになった私です。

何しろ、日本では多忙な会社員でもあったので、
子どもno2がうまれてから、no3が産まれるまでの,膨大な写真が
段ボールに入れたままだったと言うていたらく。

息子が、私のipodにインストールされた写真を見て,
『ピップの写真はいっぱいあるのに僕の小さいころの写真がほとんどない』
と,ぽつり。

バレてしまってはそのままという訳にもいかず、
段ボールをガレージから引きずりだしてきて、
遠大な量の,年代も不明な写真と格闘中です。

終わるのかなあ?

で、こんな写真をみつけました。

私の初代犬、『ちろちゃん』です。

高校生の私に、獣医をしているおじさんが,プレゼントしてくれた
マルチーズ。

高校、大学、会社員と年を重ねる間,一緒に暮らしましたね。
もちろん「私が世話します」と約束して、何もしないのは
この世の定め。

甘やかし過ぎで、手に負えないわがまま犬だったなあ。

大学を卒業した後、就職した出版社は、残業150時間という
過酷な労働で、やりがいもあり,面白くてしかたなかったけれど、
あまりに体を酷使しすぎて,自律神経をやられた私。

通勤時間の短縮と体力の温存のためと、
念願の一人暮らしを始めたばかりの私は,母から
ちろちゃんの具合が良くないと知らされて,
私が家を出た事が,まるで偶然ではないようなタイミングに
ショックを受けたものでした。

犬って,わかるのかな。

それから間もなくした、ある午後、会社に
『危ないかもしれない』
との電話。

その日、どうしても外せない接待にかり出される予定だった
私は、接待会場の赤坂のバーの公衆電話から電話をすると、
『今,安らかに息を引き取ったよ』

その晩,実家に帰って,翌日は初めて会社を
『所用で休みます』と連絡して,
車を運転しない母と一緒にペットの火葬場に、
ちろちゃんの亡がらを箱に入れて持っていきました。

火葬場で、あまりに細い骨を拾いながら
『あなたの青春とともに,行ってしまったわね』
とつぶやいた母の言葉は、今でもはっきり覚えています。

『こんな、自分にとって大切な時に,飛んで帰れない自分になってしまう、
この仕事は卒業しよう』
とその日、突然心に決めて,それからまもなく、出版社を退職したのでした。

退職金と、有り余っていた有給、代休を買い取ってもらい,そのお金を握りしめて
準備した1年のロンドン留学に旅立ったのはそれから7ヶ月後の事でした。

ちろちゃんがいなければ、今,わたしは,きっと違う人生を送っていて
ロンドンでは暮らしていなかったんだろうな。