London徒然草

「ばく」のロンドン日記

16年めの再会

2006-12-24 | 飼い主ネタ
先日、子ども達の通う、日本語の土曜日だけの補習校で、古本市がありました。

日本語の本、雑誌、マンガなど、各家庭からの不要になった本が寄付されて、破格値で売りにだされ、収益はPTA主催の運動会などの運営費に充てられます。

日本の本がとても手に入りにくい環境で、この古本市は、私の何よりの楽しみで、ここぞとばかり毎年,脈絡なく本を買い込みます。
今年も、持ちきれないほどの本を手に入れてほくほく顔で帰って来ました。

その中の一冊が、この本。


村上春樹さんの「遠い太鼓」
それも文庫本でなく、初版本です。値段は20ペンス。(40円ほど)

この本、実は16年ぶりの再会です。
かつてこの本を読んだのは、多分1990年、サンクスギビングの時期のハワイはマウイ島のウエスティンホテルのプールサイドと、ビーチサイド。
1歳半だった長女を連れて、2週間のホリデーに出かけたときにスーツケースに入れていったっけ。
ビールをチビチビ飲みながら、とっても楽しみました。帰国して、この本を勧めしたお友達に,お貸しして、そのまま帰らなかった本でした。

それからしばらくして,この本の事が忘れられず、でもオリジナルの装丁の本が見つけられず,文庫本を買ったのでした。読み返して........????
あの,初めて読んだときの思い入れとは裏腹に、どうもしっくりきません。そのままながらく、今でも,本箱の肥やしになっております。

今回、膨大な古本市の本の中に,このオリジナルの装丁の本を見つけた時,思わず手に取りました。
あまりに懐かしかったからです。

そして、このクリスマス前の,ウルトラ忙しい時期、大掃除も,買い物もあるのに、”忙しいときに限って”,本など読み始めてしまい,止まらなくなってしまいます。

面白かった。

なぜ,初回と今回の間に読んだ時,あまり楽しめなかったのかなあ? 
それはきっと自分の状況や,心境が少し酸欠状態にあったんでしょうね。今から考えると,忙しくて,心にゆとりのなかった時期だったんだと思います。

そして、このエッセイは旅行記でもありますが,彼のギリシャ、イタリア暮らしの悲喜こもごもが書かれており、ヨーロッパ暮らしのストレスに関しての記述は,今の私には深ーーーくうなづくものがあります。

この本を初めてハワイで読んだときは、三回めにこの本を読む時,自分がロンドンに住んでいるなんて,思いもしなかったな。
そして、考えれば,今の長女のボーイフレンドは(彼氏)ギリシャ人。No2の親友もギリシャ人。No3の親友もキプロス人とイギリス人のハーフと、どうやらギリシャには縁が深いようです。

村上さんは、「どこか遠くから太鼓の音が聞こえて来て,僕はどうしても長い旅に出たくなった」そうです。
私は「どこか想像もしなかった遠くに来てしまってから,戸惑いながら太鼓の音が聞こえないか確かめている」ようです。

現実を離れて,どこか行きたいと思っていた頃読んだこの本と、現実を離れてしまって戸惑いから抜けきれないで読んだこの本。 

人生って,フシギだ。