London徒然草

「ばく」のロンドン日記

KAKI

2006-10-18 | ロンドン暮らし
いつもは通り過ぎてしまう小さな商店の店頭で、嬉しい物を見つけました。
珍しく、いつの商店街を,歩いてぶらぶらと通りがかりに、なつかしいオレンジ色。

「KAKI - 39P EACH」とあります。

手に取ってみて見ると、ずっしりと重く、ひんやりつるつるの感触。

SHARON FRUITSと書いて棚に並べられている柿を、喜んで買ったら渋柿だったという,言葉通り渋い思いを、この国のスーパーで何度かしているので、ついつい手に取ってじろじろと見て迷ってしまいます。



渋柿だったら,困るなあ。


昔、静岡の田舎の庭に柿の木がありました。
獣医をしている田舎の家の庭はとても広くて、入院患者を収容する犬舎の前に、あまり立派ではありませんでしたが、秋になるとそこそこの数の実をつけていて、今でも秋の青い空とオレンジの実のコントラストが脳裏に浮かびます。
もともとは父の実家に当たるこの家の木の実を、秋になると落として食べたな。

実家の父も母も柿が好きです。
でも父は柔らかい柿が好み。母は固い柿が好きと、好みが違う為,母は買ってくるとさっさと食べて,父はしばらくそのまま熟すのを待っていました。お互いに、固い方がおいしいよね、いや柔らかい方がおいしいに決まっている、と娘を味方にしようとしていましたね。

学校に上がる前,田舎の家に預けられている時、屋根裏から落ちて来た子ネズミをどうしても飼うと言い張り,ステンレスのざるに入れて持ち歩いていた私。病気を持っているかもしれないし、逃げると困るし、とほとほとあきれ,困り果てていたおばあちゃん。その後すぐ、私を迎えに来た父に、当然見とがめられ、取り上げられて,その柿の木の下に、穴を掘って子ネズミを生き埋めにされた苦い思い出。

よその家に,たわわになる,柿の木を落として,おそるおそる噛み付いたとたん、渋柿特有の渋に飛び上がり、「口がおばあさんになった」と、涙があふれた思い出。

田舎の庭の柿の木も、葉っぱが落ちて面倒、と主張する父方の祖母にばっさりと切られてしまって,今はもうありません。

帰宅して,子どもたちが、わいわいと帰ってきたので,いそいそと皮を剥き、おそるおそる食べてみました。
実の中に,あの懐かしい黒い影のような部分もあって、思い出の柿と同じです。

渋柿ではなく,とってもおいしい,あの懐かしい味と同じ、堅い柿でした。

翌日また,たくさん買いにいき、日本人のお友達にちょっとした、”秋”のお裾分けをしました。