重症熱帯熱マラリアの定義はWHO malaria treatment guidelineには、下記のように記載
また、原虫寄生率は4%以上では治療失敗のリスクが高まるため、高原虫血症としてclose observationが必要(非流行地域では2%からリスクが増加するとも記載)。
重症熱帯熱マラリアの治療に関して、第一選択薬は点滴のアーテスネート製剤だが、日本では入手できないため、熱帯病治療薬研究班を通じて、特定臨床研究の枠組みで点滴のキニーネで治療を行う必要がある。
一方で、WHO malaria treatment guidelineでは、点滴のアーテスネート製剤が使用できない場合、キニーネよりもアルテメテル製剤が望ましいとされている。
その根拠として、2019年にコクランにより報告(Artemether for severe malaria)されているメタ解析の結果では、
小児例で死亡率減少については同等だが、アルテメテルの方がキニーネよりも原虫消失時間が短く、意識障害の時間も短く、神経系の合併症も少ない傾向
成人例では有意差をもって、アルテメテルの方がキニーネよりも死亡率を減少させる (RR 0.59, 95% CI 0.42 to 0.83; four trials, 716 participants, moderate‐certainty evidence)。
その根拠として、2019年にコクランにより報告(Artemether for severe malaria)されているメタ解析の結果では、
小児例で死亡率減少については同等だが、アルテメテルの方がキニーネよりも原虫消失時間が短く、意識障害の時間も短く、神経系の合併症も少ない傾向
成人例では有意差をもって、アルテメテルの方がキニーネよりも死亡率を減少させる (RR 0.59, 95% CI 0.42 to 0.83; four trials, 716 participants, moderate‐certainty evidence)。
ただし、ここでのアルテメテルは筋注製剤が前提なので、内服のアルテメテル製剤では直接比較ができない(日本国内では、アルテメテル/ルメファントリンの配合錠(リアメット)が承認されていて、内服での治療は可能)。
重症マラリアでも経口アルテメテル/ルメファントリンで問題なく治療できたとの症例報告はあるが、エビデンスとしては十分とは言えない。
Successful Oral Therapy for Severe Falciparum Malaria: The World Health Organization Criteria Revisited
点滴以外の治療では、アーテスネート坐薬を緊急搬送に使用した場合、点滴のキニーネ治療よりも早期の原虫寄生率の減少を認めたとの報告あり。
アーテスネート製剤への耐性マラリアが東南アジア地域では広く報告されているので、注意が必要。
また、アフリカではアーテスネート耐性はないとされているが、最近、ウガンダでの知見が日本から報告されている。
Q&A on artemisinin resistance
Artemisinin-Resistant Plasmodium falciparum with High Survival Rates, Uganda, 2014–2016
以上のことから、重症熱帯熱マラリアを診断した場合、熱帯病治療薬研究班の参加施設に搬送して点滴のキニーネで治療することが標準的であるが、点滴キニーネの治療開始までの間、内服が可能な状態であり、かつアルテメテル/ルメファントリン配合錠の入手が可能であれば、リアメット錠による治療を開始してからの搬送が望ましいと考えられる。