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医療機関外で行う診療行為(巡回診療)について(メモ)

2023-02-25 | 法律関連

医療法では、衛生規制としての最低基準を定めており、一定の場所で特定多数又は公衆を対象に医業を行う場合、「診療所の届出」が必要(医療法1条5項)と規定。
予防接種などは医療行為に該当し、医療行為を反復継続して行う(医業を行う)場所については、原則として、診療所の開設許可等が必要。

公衆又は特定多数人のため医業を行う場所は、「診療所」になる(医療法)。
「医業」とは、当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)を、反復継続する意思をもって行うこと。

診療所を開設することにより、医療法上の管理者の設置、明確化(10条、14条の2)、医療従事者の管理監督(15条)、施設の清潔保持、衛生上、保安上、防火上安全にすること(20条)の義務がかかることになる。(病床がある場合にはこれに加えて面積、人員要件がある)

巡回診療については、公衆又は特定多数人に対して医療が行われるものであり、原則として診療所の開設に該当するものとして取り扱っているが、地方公共団体、公的医療機関の開設者及び公益法人等(医療法人も含む。)が無医地区における医療の確保等を目的として特に必要な巡回診療を行う場合については、その手続を簡素化している(昭和37年通知)。

「巡回診療の医療法上の取り扱いについて」及び「医療機関外の場所で行う健康診断の取扱いについて」の改正についての内容に準じる(平成24年10月)

いわゆる巡回診療(巡回診療において行われる予防接種も含む。)については、その実施の方法に種々の態様のものがみられるが、これらはいずれも一定地点において公衆又は特定多数人に対して診療が行なわれるものであり、原則として医療法上は診療所の開設に該当するものと解される(実施計画を提出すれば、診療所開設許可が不要)。
しかしながら、無医地区における医療の確保又は地域住民に対して特に必要とされる結核、成人病等の健康診断の実施等を目的として行なう巡回診療であつて、巡回診療によらなければ住民の医療の確保、健康診断の実施等が困難であると認められるものについては、医療法の運用上特別の処置を講じてその実施の円滑化をはかることが適当であると考えられるので、今後これらの巡回診療に関しては、左記のとおり取り扱つて差し支えないこととしたので通知する。
なお、この取り扱いは、巡回診療が特に必要である場合に認められるものであるので、巡回診療実施計画、実施主体の定款又は寄附行為及び実施主体の既存の病院又は診療所における通常の診療に支障の生じないこと等について十分確認のうえ適用することとし、これが必要と認められなくなつた場合には直ちにこの取り扱いを中止することとされたい。


巡回診療を実施するには、医療法上の衛生、保安、防火上の義務を遵守するとともに、ベースとなる病院の明確化や実施責任者の明確化、実施目的や方法、費用の徴収方法を提出が必要(巡回診療実施計画)。

平成21年3月の改正で巡回診療において行われる予防接種についても同様であることが明記(「巡回診療の医療法上の取り扱いについて」の改正について(平成21年3月2日)(医政発第0302005号))

また、無医地区に限らず、公的な健康診断等についても巡回診療が可能とされている(平成7年通知)

この通知は、2015年3月31日に 医政局通知「医療機関外の場所で行う健康診断の取扱いについて」の改正について(医政発0331第 11号)で改正され、
・公共的な性格を有する定型的な健康診断

  • 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律、労働安全衛生法等に基づく健康診断
  • 高齢者の医療の確保に関する法律に基づく特定健康診査及び医療等以外の保健事業としての健康診査
  • 保険者からの委託基づく健康診断等

・予防接種法に掲げられた疾病の予防を目的とした予防接種(予防接種法施行令に規定する対象年齢以外の者に接種する場合も含む。)
・地方公共団体が宜接又は委託して実施する検査のための採血のみを実施する巡回健診等(疾病の治療を前提としたものを除く。)
についても、巡回診療として認められることとなった。 

さらに、同日(2015年3月31日)に発出された医政局及び健康局連盟通知「医療機関外の場所で行う予防接種の実施について(医政発0331第68号)(健発0331第28号)」において、
医療機関外の場所で定期の予防接種を行う場合の注意事項として、「定期接種実施要領」による実施場所、注意事項その他の取扱いに従い実施すること
医療機関外の場所で任意の予防接種を行う場合の注意事項として、「定期接種実施要領」による実施場所、注意事項その他の取扱いに準じて実施するよう努めることとされている。
 

予防接種法に基づく定期接種における取扱い(定期接種実施要領は予防接種情報を参照)

5 接種の場所
 定期接種については、適正かつ円滑な予防接種の実施のため、市町村長の要請に応じて予防接種に協力する旨を承諾した医師が医療機関で行う個別接種を原則とすること。ただし、予防接種の実施に適した施設において集団を対象にして行うこと(集団接種)も差し支えない。
 また、インフルエンザの定期接種の対象者について、接種を希望する者が寝たきり等の理由から、当該医療機関において接種を受けることが困難な場合においては、予防接種を実施する際の事故防止対策、副反応対策等の十分な準備がなされた場合に限り、当該医師による接種を希望する者が生活の根拠を有する自宅や入院施設等において実施しても差し支えない。これらの場合においては、「13 A類疾病の定期接種を集団接種で実施する際の注意事項」及び「14 医療機関以外の場所で定期接種を実施する際の注意事項」に留意すること。
 なお、市町村長は、学校等施設を利用して予防接種を行う場合は、管内の教育委員会等関係機関と緊密な連携を図り実施すること。

13 A類疾病の定期接種を集団接種で実施する際の注意事項
(1) 実施計画の策定
 予防接種の実施計画の策定に当たっては、予防接種を受けることが適当でない者を確実に把握するため、特に十分な予診の時間を確保できるよう留意すること。
(2) 接種会場
ア 冷蔵庫等の接種液の貯蔵設備を有するか、又は接種液の貯蔵場所から短時間で搬入できる位置にあること。
イ 2種類以上の予防接種を同時に行う場合は、それぞれの予防接種の場所が明確に区別され、適正な実施が確保されるよう配慮すること。
(3) 接種用具等の整備
ア 接種用具等、特に注射針、体温計等多数必要とするものは、市町村が準備しておくこと。
イ 注射器は、2ミリリットル以下のものを使用すること。
ウ 接種用具等を滅菌する場合は、煮沸以外の方法によること。
(4) 予防接種の実施に従事する者
ア 予防接種を行う際は、予診を行う医師1名及び接種を行う医師1名を中心とし、これに看護師、保健師等の補助者2名以上及び事務従事者若干名を配して班を編制し、各班員が行う業務の範囲をあらかじめ明確に定めておくこと。
イ 班の中心となる医師は、あらかじめ班員の分担する業務について必要な指示及び注意を行い、各班員はこれを遵守すること。
(5) 保護者の同伴要件
 集団接種については、原則、保護者の同伴が必要であること。
 ただし、政令第1条の2第2項の規定による対象者に対して行う予防接種、政令附則第4項による日本脳炎の定期接種及びヒトパピローマウイルス感染症の定期接種(いずれも13歳以上の者に接種する場合に限る。)において、あらかじめ、接種することの保護者の同意を予診票上の保護者自署欄にて確認できた者については、保護者の同伴を要しないものとする。
 また、接種の実施に当たっては、被接種者本人が予防接種不適当者又は予防接種要注意者か否かを確認するために、予診票に記載されている質問事項に対する回答内容に関する本人への問診を通じ、診察等を実施したうえで、必要に応じて保護者に連絡するなどして接種への不適当要件の事実関係等を確認するための予診に努めること。
 なお、被接種者が既婚者である場合は、この限りではない。
(6) 予防接種を受けることが適当でない状態の者への注意事項
 予診を行う際は、接種場所に予防接種を受けることが適当でない状態等の注意事項を掲示し、又は印刷物を配布して、保護者等から予防接種の対象者の健康状態、既往症等の申出をさせる等の措置をとり、接種を受けることが不適当な者の発見を確実にすること。
(7) 女性に対する接種の注意事項
 政令第1条の2第2項の規定による対象者に対して行う予防接種、政令附則第4項で定める日本脳炎の定期接種及びヒトパピローマウイルス感染症の定期接種対象者のうち、13歳以上の女性への接種に当たっては、妊娠中若しくは妊娠している可能性がある場合には原則接種しないこととし、予防接種の有益性が危険性を上回ると判断した場合のみ接種できる。このため、接種医は、入念な予診が尽くされるよう、予診票に記載された内容だけで判断せず、必ず被接種者本人に、口頭で記載事実の確認を行うこと。また、その際、被接種者本人が事実を話しやすいような環境づくりに努めるとともに、本人のプライバシーに十分配慮すること。


14 医療機関以外の場所で定期接種を実施する際の注意事項
(1)安全基準の遵守
  市町村長は、医療機関以外の場所での予防接種の実施においては、被接種者に副反応が起こった際に応急対応が可能なように下記における安全基準を確実に遵守すること。
ア 経過観察措置
   市町村長は、予防接種が終了した後に、短時間のうちに、被接種者の体調に異変が起きても、その場で応急治療等の迅速な対応ができるよう、接種を受けた者の身体を落ち着かせ、接種した医師、接種に関わった医療従事者又は実施市町村の職員等が接種を受けた者の身体の症状を観察できるように、接種後ある程度の時間は接種会場に止まらせること。
イ 応急治療措置
   市町村長は、医療機関以外の場所においても、予防接種後、被接種者にアナフィラキシーショックやけいれん等の重篤な副反応がみられたとしても、応急治療ができるよう救急処置物品(血圧計、静脈路確保用品、輸液、エピネフリン・抗ヒスタミン剤・抗けいれん剤・副腎皮質ステロイド剤等の薬液、喉頭鏡、気管内チュー ブ、蘇生バッグ等)を準備すること。
ウ 救急搬送措置
   市町村長は、被接種者に重篤な副反応がみられた場合、速やかに医療機関における適切な治療が受けられるよう、医療機関への搬送手段を確保するため、市町村にて保有する車両を活用すること又は、事前に緊急車両を保有する消防署及び近隣医療機関等と接種実施日等に関して、情報共有し、連携を図ること。
(2)次回以降の接種時期及び接種方法の説明
  市町村長は、医療機関以外の場所で行った予防接種について、次回以降の接種が必要な場合は、被接種者本人又はその保護者に対して、次回以降の接種時期及び接種方法について十分に説明すること。
(3)副反応が発生した場合の連絡先
  市町村長は、接種後に接種局所の異常反応や体調の変化が生じた際の連絡先とし て、接種医師の氏名及び接種医療機関の連絡先を接種施設に掲示し、又は印刷物を配布することにより、被接種者本人等に対して確実に周知すること。
(4)実施体制等
  (1)から(3)までに定めるもののほか、医療機関以外の場所で定期接種を実施する場合は、「13 A類疾病の定期接種を集団接種で実施する際の注意事項」の(1)から(3)まで、(6)及び(7)と同様とすること。


2023年2月22日に事務連絡「サル痘への対応に係るLC16ワクチン接種に関する医療法上の取扱いについて」が発出され、研究で実施するエムポックス(サル痘)のLC16ワクチンによる曝露後予防接種について、医療法(昭和23年法律第205 号)上の取扱いについて、「サル痘への対応に係る LC16 ワクチン接種は、平成7年通知の1(1)アの「予防接種法に掲げられた疾病の予防を目的とした予防接種」にはあたらないが、平成7年通知の1(1)アを満たすものとして取り扱う」こととなった(巡回診療を実施できる)。 
ただし、今般のサル痘の感染拡大への対応に係る臨時的な対応。
検討中の LC16ワクチンの接種は、国立国際医療研究センター、市立札幌病院、東北大学病院、藤田医科大学病院、りんくう総合医療センター、福岡東医療センター、琉球大学病院の7医療機関を実施主体として行うこととなる。
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