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マラリアワクチン 第三相試験結果

2013-04-29 | Malaria
背景
•マラリアワクチン候補である RTS,S/AS01 は、アフリカの7カ国で現在進行中の第 3 相試験において、生後 5~17 ヵ月の児の臨床的マラリアと重症マラリアの両エピソードを、1年間のフォローでそれぞれ56%, 47%減少させた。
•このワクチンのターゲットはスポロゾイト蛋白
•今回,同試験で募集された生後 6~12 週の児の検討結果を報告.
 
方法
•初回接種時に生後 6~12 週であった乳児 6,537 例に対し,RTS,S/AS01 または対照ワクチンを、Expanded Program on Immunization:EPIワクチンとともに 1 ヵ月間隔で計 3 回接種。
•共通主要エンドポイントである接種後 12 ヵ月間の臨床的マラリアの、初回または単回のエピソードに対するワクチンの有効性を Cox 回帰を用いて分析
•すべてのマラリアエピソードに対するワクチンの有効性、重症マラリアに対するワクチンの有効性、安全性、および免疫原性についても評価。
 
結果
•初回接種後 14 ヵ月間の intention-to-treat 解析集団における臨床的マラリアの初回または単回のエピソードの発生率は,RTS,S/AS01 群で 0.31/人年,対照群で 0.40/人年であり,ワクチンの有効率は 30.1%(95%CI 23.6-36.1)であった。
•per-protocol 集団におけるワクチンの有効率は 31.3%(97.5% CI 23.6~38.3)であった。
•重症マラリアに対するワクチンの有効率は、intention-to-treat 解析集団では 26.0%(95% CI -7.4~48.6)、per-protocol 集団では 36.6%(95% CI 4.6~57.7)であった。
•重篤な有害事象の発生頻度は両群で同程度であった。
•3 回目の RTS,S/AS01 接種後 1 ヵ月の時点で、児の 99.7%が抗スポロゾイト周囲蛋白抗体陽性となり、幾何平均抗体価は 209 EU/mL(95% CI 197~222)であった。
 
 
考察
•低い月例では免疫構築能が低いことによる
•母親からの移行抗体との干渉による可能性
•マラリア感染の既往がないことによる可能性(ワクチンがブースターとして働いている可能性)
•定期接種として使用するには効果が十分でない
•マラリアワクチン開発に必要な宿主免疫の研究を支援する必要がある
•マラリアワクチンの開発は可能だが、より効果的な宿主免疫の理解が必要となる
 
結論
•RTS,S/AS01 ワクチンの EPI ワクチンとの同時接種により、より低年齢の乳児において、臨床的マラリアと重症マラリアの両方に対する中等度の防御効果が得られた(GlaxoSmithKline Biologicals 社,PATH マラリアワクチンイニシアチブから研究助成を受けた.RTS,S ClinicalTrials.gov 番号:NCT00866619)
 
Impression
マラリアワクチンの効果、アフリカの生後6-12週の乳児 6537人にワクチンを接種。3回接種後から1年間の臨床診断によるマラリアの予防効果は約31%に過ぎなかった。
殺虫剤で処理された蚊帳による予防効果(86%)と比較すると低いということで、特に致死率が高い乳児での効果が低いのは期待はずれという論調が大半。

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