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COVID-19の症状改善後のPCR検査陽性に関する知見

2020-05-20 | COVID-19
〇陰性確認後のPCR検査陽性
これまでも中国からの報告で3例のCOVID-19症例が、PCR検査による2回の陰性確認検査後に再度検査が陽性になることが報告されている他(JAMA 2020/2/27)、172例のCOVID-19患者でのうち、14.5%が退院後に再度PCR検査で陽性なることが報告されている(CID 2020/4/8)。


〇抗体の陽転化の確認とウイルス量の関係
9症例のCOVID-19の検討でウイルスは発症4日目にピークとなり、抗体の陽転化は7病日目で50%、14病日目までに全例が陽性となったが、その後のウイルス量の急速な減少は認めなかった(Nature 2020/4/1)。


〇ELISA検査と中和活性の相関
COVID-19から回復した23人の患者を対象とした研究では、スパイクタンパク質とヌクレオカプシドタンパク質に対する抗体は、発症14日後までに、ほとんどの患者で酵素免疫測定法(ELISA)によって検出された。また、このELISA抗体価は中和活性と相関していた(Lancet ID 2020/5/5)


〇米国での対応及び評価(CDC 2020/5/3)
臨床症状に基づきCOVID-19患者の自宅隔離を解除する基準は、発症から7日かつ解熱剤を用いずに症状改善から3日以上であったが、下記を根拠に発症から10日かつ解熱剤を用いずに症状改善から3日以上へ変更された(検査結果に基づき解除する場合は24時間以上の間隔をあけて2回の陰性確認)。

検出可能な抗体IgMとIgG陽転率に伴い、また発症から日数が経過するに伴い、上気道検体でのウイルス量が減少し、複製可能なウイルスを分離することができなくなる。
 

14例の検討で、発症後9日以上経過した検体から、複製能のあるウイルスを分離できない。
分離できる確率は、発症後4日目で50%、8日目で20%に低下。9日目以降はゼロに近い(非公開データ)。
 

上気道から採取した検体からウイルス培養を実施した場合、ウイルス量が低いが検出可能な範囲(Ct値が33-35を超える場合)では大部分が培養陰性となっている(非公開データ)。
(赤い点は、対応するCt値と培養結果に従って、RT-PCR増幅が決定的でない検体を示す)



軽度から中程度の病気を経験した56人の患者におけるRT-PCR陽性の鼻腔スワブの持続性は、陽性率で、第1週(100%)で最も高く、第2週、第3週、第4週、第5週、および第6週でそれぞれ89.3%、66.1%、32.1%、5.4%、0%。



〇PCR検査の陽性持続期間
49例のCOVID-19患者(重症6例)の咽頭、鼻咽頭、喀痰、糞便のウイルスRNA評価(EID 2020/5/8)
RNAが未検出になるまでの期間は、軽症でも45.6日〜重症では49.4日までとSARSやMERSより検出が遷延する傾向を示す。

〇PCR陽性が持続する原因
報道によると(Newsweek 2020/4/29)、韓国では163例が回復後に再度PCR検査陽性と判定され、回復者の2%を占めるとしているが、ウイルスの不活化後もPCR検査結果が陽性になり、必ずしも感染性があることを意味しないと説明している。
これに対して、WHO technical leadのDr. Maria Van Kerkhoveも同様に、取材に対して(Guardian 2020/5/3)、「Covid-19からの回復後に再感染したことを示唆する検査結果は、実際には感染で死滅した肺細胞が治癒過程で上気道に排泄されることによって引き起こされる偽陽性で再感染や再燃ではない」と説明されている。

〇韓国での検討
査読されていない報告によると(bioRxiv 2020/4/20)、175例のCOVID-19からの回復者の多くは発症から10-15日後に中和抗体が検出されたが、約30%は抗体価が低いレベルに留まり、10例は検出限界未満であった。
一方で、報道によれば(The Korea Herald 2020/5/18)、韓国での陰性確認後の再陽性447例の評価において、当該症例からの二次感染例の報告はなく、抗体価の上昇も認められることから、韓国政府は感染性はないため隔離措置の必要性はないと判断されている。

〇抗体の持続期間
過去に流行したSARSでの検討によれば(J Microbiol Immunol Infect 2020/3/25)、SARS-CoVに対する感染後の抗体は約90%が2年間程度持続したことから、同様の持続期間が想定されている。


〇抗体獲得と再感染の関係性
査読されていない報告によると(bioRxiv 2020/5/1)、アカゲザルでの検討で、初期感染後、早期回復期にSARS-CoV-2で再感染させても、検出可能なウイルスの伝播、臨床症状、および組織病理学的変化を認めなかった。

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