ついに初日がやって来た!
お天気は―――
小雨―――
空を見渡すが、どこにも雲の切れ間がなく
厚い雲に覆われている。
開演前にやんでくれますように・・・
朝9:00少し前、会場に到着。
雨が降っていても予定どおり進めないと
本番を迎えられない。
音響さんの準備が整ったところで
演奏&声楽中心の粗通し稽古開始。
今回の作品「奇想 真田十勇士」は
忍術がやたら出て来る。
私が考案した忍術ですが(笑)
その中の空手裏剣(からしゅりけん)は
効果音が入るのだが、これがなかなか
ピタッとはまらない。
銃声音も重要な効果音の一つだが
これもきっかけを読みとるのが難しい様子。
何度かやってみたものの
練習回数が少なかったため少々不安。
最終的に本番のQは私が出すことに。
それぞれの楽器の音バランス
声楽隊の歌声とのバランス
毎年のことながら、これが難しい。
何度か演奏してもらって
各楽器の音量を決めて行く。
声楽隊の歌声は今日も美しい。
が、歌詞が聞きとりづらい。
声楽隊の皆さんに、出来るだけ子音を立てて
言葉をはっきり歌ってくださるように
お願いはしているのだが、マイクだからなのか
リバーブのせいなのか、何度調整しても
全てが聞こえる状態にならない。
来年は何らかの対策が必要か・・・
と考えつつ、もう一度声楽隊の皆さんに
詩の言葉を明確に発音してくれるようにお願いする。
バイオリンの牧さんとフルートの徳嵩さんは
きっかけは殆どノーミス。
牧さんのアレンジは健在!
牧さんは、ダンサーの送迎や
音楽隊の皆さんのお弁当の心配など
毎年のことながら、細やかな配慮で
助けてくださっている。
徳嵩さんは今年で3年目。
徐々に慣れて来たご様子。
信頼出来る心強い奏者のお一人だ。
ベースの多美ちゃんは
かっこいいベースの音色で
殺陣シーンや不穏な空気を作ってくれている。
随分野外劇にも慣れて来た感じ。
もっと面白いコラボが出来そうな予感が(^^)
初参加のシンセサイザー・中村さんには
勝手なお願いをいくつかしたが
どれも良い感じで演奏してくださっている。
最後まではまらない曲が一曲だけあったが
これも今日の合わせで、ようやくはまった。
パーカッションの宮澤さんは
久しぶりのご参加だが
だんだん調子を思い出したようで
良い感じでドラムを叩いてくれている。
殺陣のシーンは、役者の動きに合わせて
太鼓やシンバルを入れてくれると
役者のテンションも上がっていく。
笛の後藤さんは、ご多忙でなかなか稽古に参加できなかったが
演奏する曲は練習してきてくださったようで
笛の音色は良い感じでシーンにはまっている。
オープニング・エンディングはやはり圧巻!
生演奏と声楽隊の歌声が入ると聞いている人も
キャスト陣もテンション上昇!
生憎のお天気だけど、みんなの気持ちが上がり始めた。
12:00終了予定だったが、雨の影響もあり時間超過。
12:40に終了し、14:00からゲネプロではなく
通し稽古をすることに。
ゲネプロなしで本番を迎えるのは
滅多にないことだが、野外だと天候によっては
こういう事態になってしまう。
それも覚悟で開催しているが
今年は例年以上に厳しい現場だ。
雨は上がるどころか、雨脚が強くなって来た。
………
大丈夫!みんな必ずやりきってくれる!
13:00、ボランティアスタッフさんが
大勢お手伝いに来てくれた。
助かります!
ありがとうございますm(__)m
ボランティアスタッフの取りまとめ役は
夢幻の営業担当・杉本さん。
まずは担当部署を割り振り、パンフレットのチラシ折り込みや
受付のセッティング、会場や駐車場の看板立てなどを行っている。
通し稽古は16:00に終了したいところだが
スムーズに進行して2時間30分の舞台。
終了のタイムリミットを16:30に設定し
通し稽古を開始したものの
いくつかやり直しをせざるを得ないシーンがあり
必然的に、飛ばすシーンも必要になり・・・
張り出し舞台は、ビニールシートを引いたままだしね。
滑るから絶対に走らないようにと
何度も注意を促しながらという状態。
そんな状況下で、みんなずぶ濡れになりながらも
やるべきことをやろうとしている。
こんな経験、一生かかっても出来ない経験だよね。
世代が異なる人々が大自然の脅威と戦いながら
一致団結して一つの舞台を作り上げようとしている。
馬鹿げたことだと笑う人がいるかもしれない。
けど、ここには、ここにいる人しか
体験できない何かが、物凄い何かが
確実に存在しているのだ。
真田家の家訓
「死ぬまで生きる」
生死の境目というほどではないが
平和な日本の中で、災害ではなく
ギリギリを体験できる場はそう滅多にない。
そこまでギリギリを体験させるために
この舞台を行っているわけではないけれど
とてつもない体験をして、それを乗り越えて
お客様から大きな拍手をいただけたならば
それは何者にも代えがたい大きな成功体験となる。
そう言う意味で、今年の参加者は
良い悪いは別にして、確実に稀な体験をしている。
そんな極限に近い通し稽古中
私は…というと、客先中央付近で傘を指しながら
出来るだけ台本が濡れないように
マイクも濡れないように悪戦苦闘しながら稽古を進行。
が、台本が徐々に濡れて最後は
今にもやぶけてしまいそうな状態に。
ぐわっ・・・
まずいな…まだ明日もあるのに…
何とか明日までに乾かさねば。。。
身体がどんどん冷えて来る。
キャスト陣は大丈夫だろうか…
子どもたちも心配だ…
16:30、終了。
大きな白幕をセッティングして
すぐに開演準備に入る。
杉本さんの配慮で、子どもたちは管理棟に避難させ
保護者の皆さんに手伝っていただいて
衣装を乾かし、髪の毛を乾かしていただいた。
適切な処置に感謝!
合羽を着ている私ですら、身体が冷え切っている。
気温が高ければまだ良いが、気温が下がっているのだ。
雨よ!
開演前に上がっておくれ!
と叫びたい気持ちを堪え、私は気になった箇所の
ダメ出しを個々に伝えるために歩く。
稽古に集中していたため
出店の設置に全く気付かず
受付付近に行って、出店に気づき、ビックリ!
出店のオーナーさんたちにご挨拶。
雨天で申し訳ないです・・・
ああ・・・温かいコーヒーが飲みたい・・・
と思ったけど、そんな時間もなく、時は過ぎて行く。
メイク担当のメンバーが子どもたちのメイクや
メイクが出来ない男性キャストのメイクを
次々に施してくれている。
感謝!
ダンサー2人は、雨を感じさせない演技で
全く不安がない。
メイクも2人で工夫して、狐に見えるメイクを
生み出してくれた。
ありがとう!
上演中、子どもたちを見てくれることになったのは
研修生の杏ちゃん。
明日は同じく研修生の風夏ちゃんが見てくれるとのこと。
今年は、上演中の心得を子どもたちに浸透できず
これは大きな反省点である。
保護者の皆様への伝達も不足していた。
次回は、事前に対応策を練って臨もう。
17:00前、受付を見ると既に行列が出来始めている。
あれ?
整理券を発行する予定だったはずだけど
どうなっているのかな…と思ったが
下手に口を出すと混乱する可能性があるので
今は何も言わないことにした。
チケットを大量に販売してくださったN氏も
受付のお手伝いにいらしてくださった。
多大なご協力に心から御礼申し上げます。
いつも本当にありがとうございます。
お?
雨が止んできた!
そうです。
開場前に雨が止んだのです!
天に祈りが通じた―
どうか終演まで、このままの状態で・・・
17:30、舞台裏に集合し、みんなで気合いを入れる。
皆さん、空を見て下さい!
雨が、上がりました!
と私が言った瞬間、大きな歓声が上がった。
いいね、いい感じ!
これなら、今日の公演は大丈夫!
最後に舞台監督の竹中さんに激励と注意をいただいて
本番に向けてテンションを上げて行く。
18:05、マナブンさんのライブ開始。
私はキャスト全員と握手して歩く。
毎年初日は、余程のことがない限り
こうして全員と握手することに決めている。
マナブンさんのライブ、ラストの曲は恒例の「奇跡」
あなたに出逢えたこの奇跡に感謝して・・・
だんだん癖になる名曲です(^^)
一緒に「ヘイヘイヘイ!」と声を出すと
テンションが更にアップしていく。
客席はほぼ満席。
が、去年の初日よりは少ないかな…
雨天だったから仕方ないよね。
雨にもかかわらずいらしてくださったお客様
本当にありがとうございますm(__)m
ライブが終了し、ライブ音響機材をばらしている時
再び雨がポツポツあたり始めた。
受付のスタッフさんに
合羽をお持ちでないお客様に合羽を貸し出してください。
と声をかけると、スタッフさんたちは瞬時に動き出してくれて
お客様は席を立つことなく、合羽を着用してくださったので
大きな混乱にはならなかった。
マナブンさんのライブ中だけやんで
終わった途端、振り出したのは
マナブンさんが晴れ男だからだとか(^_^;)
これは後で思ったことだが
開演前に降り始めてくれて良かったんだよね。
お客様が合羽を着終えてから開演したため
立ったり座ったりして、集中が途切れることがなかった。
昨年は、上演中にパラパラ雨が降り出して
合羽をお持ちでないお客様が途中で立ち出して
そのシーンは集中が途切れてしまった。
席から立ったお客様の中には、帰られた方もいらしたが
多くは、テント内に避難したり、傘をさし立ったまま
ご覧になられた方が多かった。
18:35、本番直前の音楽が流れ始めた。
いよいよ初日の開幕!
雨が降り出し、中には帰られた方もいたようだが
私がブースで見ている限り、殆どのお客様は
雨脚が強くなっても、身動き一つせず
舞台に集中してくださっているようだった。
この日のキャスト陣は、集中力が非常に高く
これまでに感じたことのないピーンと張り詰めた・・・
何というか・・・
冬の晴れた日の朝のように空気が澄んでいる・・・
そんな風に感じる野外劇場空間だった。
私はひたすら事故がないことを祈り
大殺陣のシーンで滑って転んで
怪我をする人がいないように祈り続けた。
あ、Qきっかけはちゃんと伝えましたよ、勿論(^^)
若干滑って転んだキャストがいたが
大きな怪我に至らず、お客様の温かい拍手に包まれて
無事終演の時を迎えた。
雨の中、みんな本当によくやりきってくれた。
ありがとう!!
良かった・・・
無事に終わった・・・
本当に良かった・・・
この日は、ただただそれだけだった。
これほど無事に終わってくれるのを
祈りながら舞台を見守ったのは
何年ぶりだろうか。
2005年に上演した「ヒ・マワリ」の時
ドシャ降りの中、大勢のお客様に見守っていただき
無事終演したことを思い出した。
あの年は、諸事情で公演日を9月第1週に設定。
あの日以来、9月にずれ込ませることだけは
避けて上演してきたが・・・
そうそう!
その一年前に上演した「DREAM」は
台風の直撃を受け、17:00頃まで物凄い暴風雨。
このままでは上演を取りやめねばならない…というような
凄い大雨だったが、開場前にピタリと止み
本番中には月まで姿を現して
実に劇的な劇空間になったこともあった。
この年の上演日は、8/28、29
オープンエアシアターの上演日を振り返ると
8月第4週に設定した年は
多かれ少なかれ、雨がぱらついている。
第3週に設定した年は、ほぼ晴天続きか。
やっぱりね・・・
8月第4週以降は雨の確率が高いんだよね。
なので、昨年までずっと8月第3週に開催して来たのだけど
今年は、お盆が第三週の前半に入ってしまったため
第4週にずらして設定したのだが
やっぱり第3週じゃなきゃ駄目か・・・
しかし、
来年のカレンダーを確認してみたところ
今年と同様、第3週にお盆がかぶっている。
うーむ・・・
これはよくよく検討しなければ・・・
カーテンコールもお客様の大きな拍手をいただき
私も最後の挨拶で、雨天の中
長時間最後までご覧いただいたことに
深く感謝の意を述べさせていただいた。
終演直前、雨が上がり、終演後は
お客様と歓談できたのは不幸中の幸い。
何人かのお客様と握手をさせていただいたが
中には冷え切った手の方もいらして
申し訳ない気持ちと感謝の気持ちで目頭が熱くなった。
ご来場を賜りました皆様、最後までご覧頂きました皆様
本当に、本当に、ありがとうございました。
雨のため、マイクにビニールをかぶせたままの上演で
台詞が聞き取りづらいシーンもあり
大変ご迷惑をおかけしました。
そんな状態にもかかわらず
2時間30分も過ぎていたなんて思わなかった
不思議と長く感じなかった
舞台に釘づけだった
などなど、有難いお言葉を頂戴し
温かいお客様に救われた舞台でした。
雨に耐えられずお帰りになられたお客様
わざわざご来場いただいたにもかかわらず
大変申し訳ありませんでした。
また、ご来場予定だったけれど雨天のため
ご来場いただけなかった皆様にも
心よりお詫び申し上げます。
明日の天気はどうだろうか。
台風が近づいていると言う情報もあるが
明日はバラシもある。
雨天のバラシは何よりもしんどい。
どうか明日は、明日だけは晴れて欲しい。
明日だけじゃない、明後日の月曜日も!
月曜日は完全撤収日である。
布やパネルが濡れたまま倉庫に持ち込むと
その後の処理が大変なのです・・・
人間は自然の力の前では実に無力だ。
けれど、人間には内在する精神力がある。
今日の公演は、大勢の精神が一つになった
物凄いパワーを感じる舞台だった。
火事場の馬鹿力か・・・
この集中力は、雨天によって引き出されたものだが
これが、天候に関係なく引き出せたならば
もっと素敵な舞台を提出できるかもしれない――
お客様との歓談を終え、舞台前に集合し
キャスト・スタッフ・ボランティアスタッフさんが
全員集合して記念撮影。
(撮影/曲尾みすゞ)
ざっと数えてみたが、80人近くが写っている。
ここに写っていない関係者もいるので
総勢100人は優に越えている。
これだけたくさんの方が関わってくださっているこの舞台
絶対に失敗するわけにはいかない。
明日はもっと良い舞台を提出できるよう
午後からの通し稽古で修正をしていこう。
初日を無事終えて、ひとまず安堵。
舞台上にビニールシートをかけ、キャスト解散。
終演後も三光スタッフさんは、不備を調整すべく
チェックをしてくださっている。
H氏は、集中した表情でひたすら照明チェック。
12:00になろうとしているが、まだ終わりそうにない。
申し訳ないが、先に上がらせていただくことに・・・
三光スタッフの皆さん、連日本当にご苦労さまです。
明日の集合は12:00。
劇団員は10:00に警備会社の担当者と交代で警備に入る。
今のところ、体調を大きく崩した人はいなさそうだ。
あ、声を枯らしてしまったキャストがいた(汗)
一度枯らした声は、すぐには戻らない。
横隔膜を下げ、低音の声で滑舌よく
マイクの近くで台詞を発してもらえれば
恐らく乗り切れるだろう。
全員が笑顔で終えられますように・・・
明日こそは晴れてくれるよう祈りながら
帰路についた。
帰宅してすぐに台本を洗濯ハンガーに吊るす。
今日の大雨で濡れた台本は、一部破けてしまった。
明日の午後の通し稽古時に台本が読めないと
非常に困った事態になる。
三光スタッフさんから、今日の舞台の動画をお借りした。
チェックしてから寝ようと思ったが
身体が冷え切っていたので、まずお風呂へ。
お風呂の中でうとうとしてしまって
気づけば3時を回っている。
明日、早めに起きてビデオチェックすることにしよう。
目覚めた時、晴れていてくれますように――