蜜柑のつぶやき ~演出家の独り言~

NPO法人劇空間夢幻工房の演出家/青木由里の日々の呟き。脚本執筆・役者・ワークショップ講師も兼業する舞台人日記♪

劇空間夢幻工房 創立25周年記念公演「ISHIN version.2024」

NPO法人劇空間夢幻工房 創立25周年記念公演
タイトル 『ISHIN ~狼たちは最果てに~ version.2024』
脚本・演出 青木由里
出演 青木賢治/栗生みな/村松沙理亜/清水まなぶ/井田亜彩実/導星ゆな 他

日時 2022年9月8日(日)11:00~/15:30~
会場 飯山市文化交流館 なちゅら 大ホール
チケット予約フォーム:https://www.quartet-online.net/ticket/ishin2024

皆さまへ感謝を込めて晴れやかに開催‼
どうぞお楽しみに‼

芝居三昧

2014年10月13日 14時10分03秒 | 日記
昨日は、芝居三昧でした~♪>
昼間は、空想≠カニバルさんの突発公演へ。
日曜のお天気の良い昼下がり~
短編2本立て、休憩込みの60分。
軽い感じで楽しめました♪

夜はMA。
表現の時間は、珍しく“まどみちお”さんの詩を元にしたエチュード。
「きりん」というタイトルに惹かれてセレクト。

昔、きりんの鳴き声をインプットしていなかった頃
キリンのぬいぐるみを「きりんきりん」と言いながら
動かして遊んでいた。
その時「きりんきりん」と言いながら
イメージしていた情景が
まどさんの詩の情景とダブって見えた。

そんな個人的な理由でセレクトしたのだが
これを元にエチュードを創作するというのは
自由な発想がないとなかなか難しい。
けど、2チームとも想像以上に面白かった♪

MA終了後、Y君のアパートへ
他の団員と一緒に押しかけた。

目的は、舞台映像の鑑賞♪
彼はWOWOWにも入っているし
公演DVDもたくさん持っている。
以前から、Y君のうちに舞台映像を観に行きたいって
思ってたんだけど、なかなかスケジュールが合わず…

昨夜は翌朝、予定が入っていなかったこともあって
ついに全ての作業をほったらかし
観に行っちゃいました~(^_^;)

鑑賞したのは、次の3本。

★『90ミニッツ』
 作・演出/三谷幸喜
 出演/西村雅彦・近藤芳正

★『ホロヴィッツとの対話』
 作・演出/三谷幸喜
 出演/渡辺謙・和久井映見・段田安則・高泉淳子
 作曲・ピアノ演奏/萩野清子

★ナイロン100℃ 40th SESSION『わが闇』
 作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
 出演/犬山イヌコ・峯村リエ・みのすけ・三宅弘城・大倉孝二・松永玲子
    長田奈麻・廣川三憲・喜安浩平・吉増裕士・皆戸麻衣
    岡田義徳・坂井真紀・長谷川朝晴

『90ミニッツ』は、命の瀬戸際だからこそ生まれる緊迫感と
二人の役者の物凄い集中力をヒシヒシと感じる会話劇だった。

「生誕50周年 大感謝祭」と銘打った2011年
三谷さんが書き下ろした4作の新作戯曲の最後を飾った作品。

事故で緊急手術が必要な少年が担ぎこまれた病院。
頑なに手術を拒否する少年の父と
それを説得する整形外科副部長との衝突。
“少年の命”をかけての緊迫した大論争。

会話劇というより、私の感覚では
ディベート対決のような芝居だった。

ディベート(debate):ある主題について異なる立場に分かれ議論すること

命がかかっている時にあり得ない!
という意見も当然あるだろう。
けど、実際にあったんだよね、こういう事件。

両親が某宗教の信者で、交通事故で重傷を負った子どもの輸血を拒否し
その子は、苦しい息の下で「生きたい」と訴えながら、出血多量で死んだ…

この芝居を見始めて、すぐに上記の事件を思い出した。
この芝居では、宗教ではなく、地方の慣習ということになっていたが。

舞台装置は至ってシンプル。
医師の机・椅子・電話機と少し離れたところに長椅子一つ。
舞台前ツラ側の天上から床へずっと滴り続ける水―

最初、この水が砂に見えて、砂時計?と思ったけど
水であることがわかり、それが徐々に
少年の命の水のように思えて来て
途切れないで…と祈る自分がいた。
シンプルだからこそ際立つ水の存在。

価値観の対決と言っても、そこは人間。
感情やエゴ、世間体など
我欲や暗部があぶり出されていく。

人間をあぶり出すという意味でとても興味深く
90分間、全く目を話すことなく
集中が途切れることなく見続けた。

三谷作品とは思えない笑いが少ない作品だった。
が、不謹慎だと思いながらも、思わず笑いが
こみあげて来てしまうシーンもあったり…

西村さんの医師も、近藤さんの父親も
迫真に迫る演技でとても魅力的だった。
映像だと、表情がはっきりとわかるし
細かい身体の震えやリアルな演技が見える。
ただ、もしかしたら、大きい会場だと
細かいリアクションが見えにくかったかもね。

この手の芝居は、小さな小屋のほうが
細部まで伝わりやすいかもしれない。

というようなことは、さておいて

私は、観て良かった!
秀逸な台詞もあったし、三谷さんはやっぱり凄いと思った。
こういう芝居が好きなんだな、私。。

シチュエーション・コメディも好きだけど
ただ面白いだけではなく
価値観や葛藤のバトルを通して人間の暗部が露わになり
何かしらの結果が導き出されていく―

長編にしろ、短編にしろ、コメディーにしろ
そんな作品が好きなんだわ、きっと。

あ…多かれ少なかれ、大抵の芝居がそうか…

きっと…振れ幅が大きい芝居が面白いと感じるんだと思う。
これは、あくまでも好み。

次に観たのは「ホロヴィッツとの対話」

天才ピアニストとその天才ピアニストのピアノの調律をする職人
ピアニストが神に選ばれし者だとすれは
調律師は神に雇われし者

芸術とは何か、芸術家は何を得て何を失っているのか…
二つの家族を通して、芸術そのものに迫っていく…
役者はそれぞれ個性的で、とても面白かった。
面白かったんだけどね。
何か物足らないというか…
なぜだろう…

「抜目のない未亡人」は面白かったし
大変よく創り込まれた作品だと思ったが
軽過ぎて物足りなさを感じた。

それとは、違うんだよね…
どちらかというと違和感かな…

ああ…コメディだったはずなのに
いきなり凄い話題がぶち込まれたからかもしれないな…
そして、それが何か処理されないまま
またコメディ色に戻って…
簡単に処理できる問題じゃないから、当然だし
完結して欲しいと思っているわけじゃないのだが…

最後に観たのは「わが闇」
この作品は、2008年に上演され“文句なしの最高傑作”と圧倒的好評を博したとか。
昨年、20周年記念で再演された舞台を観た。

田舎の一軒家を舞台に、家族(親子と三姉妹)の愛と孤独を描いた作品。

ケラさんって、ナンセンス・コメディ系かと思っていたが
この作品は、予想外の舞台だった。

ケラさんのジャンル分けでいけば「シリアス・コメディ」らしい。
悲劇として扱われるテーマをコメディに仕立てる作風とか。

何と言うか…凄かった。
登場人物のキャラクターが極端なくらいはっきりしている。
その役を演じる役者陣の演技力もずば抜けている。
技術もあり、力みがなく、自然に見える演技。
かなり極端なことやってるのに、嘘に見えない。

舞台装置は、プロジェクションマッピングを
使用した照明が大変効果的だった。

ストーリーテーラーがいて
テロップで経過説明があり、わかりやすい。

最後の…娘3人が、亡くなった父親の本当の心を知るシーンは
父を求めていた娘と娘を愛おしく思ってた父の
素直に言えない互いの愛と優しさがにじみ出て
実際には何も解決していないのに
温かい気持ちになり、何も解決しないまま終幕―

内容的にはかなり複雑だが、どの役もみんな生きている。
だから上演時間も3時間以上になっちゃうわけだ。。

胸が痛くなりながらも笑ってしまう…
ケラさんの術中に完全にはまった(笑)

とても刺激になった。
良い作品を3本も観れて、Y君に感謝!

さて、私は何を創るか…だ(^^)