ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

エレベータ・ガール

2015-01-10 13:19:46 | 詩集湾Ⅱ(1993年5月20日)

エレベータ・ガール

金属の重いとびらが開くと

きみが笑っている

 

(いらっしゃいませ)

 

(おやおやどうも固苦しいごあいさつを)

とことばには出さずに往来を見通す箱のなかにぼくは進んでいく

 

(何階をご利用でしょうか?)

 

(いちばんうえの天井をつき抜けたてっぺんまでそれから降って床の下の地下3階までそれを百回繰りかえしてほしい)

とは言わず

(5階まで)

(そこのカフェテリアで一時間待ってるよ)とも言わず遠ざかる自動車たちとひとびとの往来をぼくは見下ろす

 

エレベータ・ガール

きみは今夜誰と寝るの?

ぼくの背中で

数字を描いた丸いボタンの列を眺めてやっぱりぼくに背中を向けているはずの

きみに無言で問いかける

 

エレベータ・ガール

きみは今夜誰と寝るの?

 

※仙台放送の(フジ系列のというか)「君の瞳をタイホする」とかいうドラマで、工藤静香のエレベータ・ガールに柳葉敏郎の刑事が乗り込んだ場面を思い出して書いたが、これを南気仙沼駅前のクリスタルビレッジのエレベータで演じるドラマはあんまり絵にならないだろう。

 

※詩集湾 Ⅱ 第Ⅱ部 ご挨拶 から

 

2015年の注;南駅前のクリスタルビレッジは、当時、まだ新しかった飲食関係のビルで、津波のあとも建物は残っていたが、もちろん、すでに取り壊されている。最上階には、ディスコテックがあった。ドラマの収録で訪れていた、最近人気の坂上忍氏とか連れていったこともあった。全面ガラス張りで、周りの光景がよく見えていたし、逆に下の街からも、きらきらとよく目立っていた。街のなかで、突然変異のように、新しくて高層でファッショナブルなビルが出現したという風情だった。


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