ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

センティメント

2014-12-19 23:02:26 | 詩集湾Ⅱ(1993年5月20日)

過去が栄光で

未来が懐かしい

とだれか言った

懐かしさを仮構する志がある

「このまちは懐かしい」

 

海がある港がある

ひとがいる

ウミネコがとんでいる

造船場に赤錆びた漁船が係留されている

毎日魚市場でツナ・テイルとシャーク・フィンが切られている鋭い刃物を使って

横町にはかつて軒先に魚を並べた長屋が店舗は移転したがそのまま

仲買人たちの住居として残っている

裏ぶれたスナックなどもある

 

酒飲みの湾内航路の船乗りの詩人もいた

かれが死んだとき

なにごとかよく聞きとれないことばを吼えていったに違いない

おおおと

 

ダダダダダ

ぼくはなにか意味のあることを言っているだろうか

糸電話のようにかすかに受け手に波動が伝わっていくとして

糸のふるえは意味のある声だろうか無意味な音だろうか

ダダダムダのダ

ダダダダメのダ

 

「あなたは懐かしいですか?」

「ハイ」あるいは「イイエ」

「あなたは憧れますか?」

「ハイ」あるいは「イイエ」

 

景観は美しいですか?

 

   *

 

センティメンタル・ジャーニーは終わらない

 

※詩集湾Ⅱ Ⅰ感傷旅行 から


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