ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

五十年

2017-01-21 22:55:01 | 2015年4月以降の詩

五十年の彼方に

光り輝く星座がある

としよう

 

それは五年間華やかに輝いて

五年先に燃え尽きていいような光ではない

鈍く静かに

しかし

美しく輝いていく光だ

万華鏡ではあっても

花火ではない

いっとき

はでに打ち上げて

衆目を集める即効薬ではない

次の獲物を求めて

広く広く遠く遠く

駆けまわる

そんな機動力はない

 

地面を這いつくばるように

壁面にへばりつくように

ここに

ここに

留まり続ける

美しく

美しく

立ちすくんで

しかし

広く広く遠く遠く

見すえて

眼はらんらんと輝かせて

にぶく輝かせて

少なくとも五十年は輝いて

その先百年まで同じく輝きを保とうと

そんな建築を

内実を保つ建築を

つくってみたいものだ

ぼくらは

五十年先までは見通せる

子どもたちのことを

そのまた子どもたちのことを

 

五十年前のことは

しっかりと覚えている

小学校の正門の脇にこじんまりとたたずんでいた木造建築も

島と港を見下ろして

桜の木に囲まれたコンクリート建築も

その中にある書棚も

そこに住まっている

眼をらんらんと輝かせた白髪の人物も

その彫像も

 

五十年の彼方の

光り輝く星座を

ぼくらはしっかりと見据えている

 

※霧笛第2期40号から


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