ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

真摯な若者

2015-01-19 09:32:15 | 詩集湾Ⅱ(1993年5月20日)

ぼくは真摯な若者だった

臆病な青年だった

 

妻よ、ぼくはあなたを愛する

美しい妻よ、あなたはぼくに世界を与えた

かって、ぼくの手は世界に届かなかった

ぼくの見た世界はぼくののばした手のずっと向こうにあるか、あるいは、だらしなくおとした手の中にあった

ここかあるいはあそこか

それらふたつの世界は決してふれあうことがなかった

 

永遠の(とおもわれた)悲しいすれ違いが

ぼくの運命だっ*

 

*た が欠落しているのは印刷ミスではない。

 

※詩集湾Ⅱ 第Ⅳ部 幻想旅行から

 

2015年の注;アドレッサンスというか青年期、うぬぼれと自信のなさのあいだで揺れ動いている青年期。結婚というイベントが、人間としての成長のエポックであることは間違いないことだ。そして、さらに親になるということが続く。「た」が欠落しているというのは、まだ過去ではないということ。「理想と現実」というふうに言えば、実は今でも、過去ではない、とも言える。もはや還暦も近いわけだが。美しい妻よ、などと呼びかけているのは、谷川俊太郎の真似。

 


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