鉄の塊
くすみきった赤と青の漆黒の
不安定な形態で
H型鋼の支柱でようやく支えられ
いつまで
いつまで
そこに居座っているのか
抗うように
ざらざらと無数の刺のように
軽々と海に浮かび
巨大な群れをなす生命を追い求め
透明な水を切り裂き鮮やかに光る刀の塊りを
一網打尽にすくいとって
数多の生命を奪った
数多の生命を供給した
人間の生命をつなぐために
そしてこのまちを養った
自然の
魚類の生命によって
人類の生命をつなぐ生業で成立したまちが
自然の
海の鳴動によって
たくさんの生命を失ってまちも死に瀕し
そこから立ち上がるときに
そこに異物がある
そこに異物がある
異物になり果てた禍禍しい遺物がある
風景に溶け込むことのない異物がある
かつてはこのまちを養った鉄の塊が居座る
祈れ言祝げ鎮魂せよ
現存する形のある記憶として
手をあわせよ
※湾Ⅲ2011~14掲載の決定稿
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