モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

貝母の芽吹き。信州にも遅い春の兆しが。福寿草、オオイヌノフグリ、虫こぶ、カマキリの卵塊(妻女山里山通信)

2022-02-26 | アウトドア・ネイチャーフォト
 23日朝の積雪を最後に、晴れの日が続き最低気温は低いのですが、最高気温が少しずつ上がり始めました。土曜日は最低気温はマイナス7度でしたが、最高気温が10まで上がりました。久しぶりに妻女山へ。陣場平の貝母(編笠百合)の芽吹きの確認に登りました。

 まず妻女山展望台へ。西方の仁科三山。里の雪は北側の日陰以外は消えました。厳冬の信州にもやっと春の兆しが訪れました。あちこちで果樹を剪定した枝を燃やす煙が立っています。

 その北側の白馬三山。右手前の茶臼山も随分と雪が解けてきました。その右奥の虫倉山はまだ残雪があります。

 北方の左に戸隠連峰と、別名戸隠富士の高妻山。右に飯縄山。雪が消えたので、これから春掘りの長芋の作業が始まります。冬越しの長芋は味が濃くて美味です。最近、松代では長芋を使ったクラフトビールが販売されました。

 妻女山の駐車場から右の林道を登ります。北面なので残雪がけっこう残っています。猟期が終わったので車の轍はありませんが、何人か山登りをした足跡があります。登り始めはカケスに威嚇されました。カケスはカラスの仲間ですが、他の鳥の鳴き真似をすることでも有名です。上ではコゲラのドラミングと、シジュウカラの鳴き声が。

 陣場平の入り口。西向きの斜面の雪が消えています。そのため、貝母の芽吹きもここが一番早いのです。

 出ていました。これは上の枯れ葉をどけて撮影したものです。踏まないようによく足元を見て入りました。ここ数年は暖冬が続いたので、芽吹きは2月10〜15日頃でした。今年は半月以上遅いですね。では、開花と満開も遅いかというと、そうはなりません。桜の開花が4月10日と予報が出ましたが、貝母の満開の時期は、それと同じなので、見頃は4月10〜20日頃になると思います。4月17日に私がインタープリターをする松代夢空間の「妻女山 花と歴史のハイキング」が行われますが、満開の貝母と桜が観られるでしょう。

 貝母のクローズアップ。赤紫なのは、まだ寒いのでポリフェノールのアントシアニンがあるからです。気温が上昇すると緑になります。

 近くにニホンカモシカの新しい糞がありました。貝母は全草が有毒ですが、ニホンカモシカは花を食べることがあります。咳止めの薬草ですが、成分は筋肉弛緩剤と同じ様なものです。

 貝母の大群生地のある陣場平は、まだかなりの残雪があります。晴れて表面が解けて凍っているので、雪渡りができる状態になりつつあります。この雪が消えるのは、これからの気温上昇もありますが、春雨が大雨になると一気に消えます。北側の日陰の雪もそれで消えるのです。春を呼ぶ恵みの雨なのです。

 陣場平の中程にある倒木の苔。まだ胞子嚢はあまり見られませんが、これから暖かくなるとどんどん発生します。山歩きをしていても、苔に注目する人はあまりいないと思いますが、なかなか面白いのです。拙書のエッセイでも粘菌で隠花植物の権威、南方熊楠を紹介していますが、奥深い魅力的な世界です。

 雪山を歩くのはけっこう疲れます。休憩をしに堂平大塚古墳のログハウスへ。眼下に千曲川、西山と北アルプスが見えます。ルイボスティーでまったりと休憩。静かでまったりとした時間が流れます。陣場平で登ってきた二人の女性と邂逅しました。林さんですかと。貝母の芽吹きと今年の満開の予報を伝えました。雪があっても登る人はけっこういるのです。

 古墳の南斜面の福寿草も増えていました。

 蜜はないのですが、多量の花粉を出すので3月に入ると昆虫が集まります。

 オオイヌノフグリもやっと咲き始めました。帰化植物ですが、全国で馴染みの花です。大きな犬の金玉(睾丸)という可哀想な命名には理由があります。

 花芽が膨らみ始めた梅の木に、蛾の蛹(さなぎ)。なんでしょう。マイマイガ (舞舞蛾)に似ています。大量発生すると大変な被害が出ます。夏に卵塊を駆除するのが最も効果的。殺虫剤や農薬は人体や他の動物、昆虫にも危険なので、除去して焼却するのがベストです。ネオニコチノイド系やグリホサート剤は絶対に使用してはいけません。
マイマイガの生態と防除について(長野市)

 戻る途中に雪の上になにかの昆虫の羽の様なものが散乱していました。楓の果実(種)です。おそらくカラコギカエデでしょう。自然界の相似律というのは、時に意外なもの同士を似させることがあります。

 クヌギの用木に得体のしれないもの。これはクヌギエダイガフシという虫こぶ(虫瘤)です。タマバチの一種のクヌギエダイガタマバチが寄生してできたものです。虫こぶ(ゴール)は、昆虫が寄生してホルモンを出して植物組織に異常な発達を促します。有名なものはマタタビで、虫こぶができることで価値あるものになります。

 カマキリの卵塊。雪が多い年は高いところに作るというのは迷信で、科学的根拠はないと証明されています。たとえ雪に埋もれても死滅することはありません。

 やっと見つけたウスタビガの繭。蛹はすでに羽化して空です。経年変化が非常に激しく、今年はヤママユガ(天蚕)もほとんど見られません。横浜在住の知り合いで、ウスタビガの繭でフクロウのストラップを、天蚕で布を織る人がいますが、12月に来た時はやはりほとんど見つけられなかったと言っていました。

 オニドコロ(鬼野老)。ヤマノイモ科ヤマノイモ属。自然薯や長芋の仲間ですが、有毒のアルカロイドを含むため食べられません。自然薯堀りをする人は、見分け方を完全に覚えておくことが必須です。妻女山山系にはどちらもあります。掘るのが極めて大変なので、私は長芋でいいです(笑)。山蕗がたくさん出るのは、春雨が降ってから。もう少し先になるでしょう。


上の画像は、2021年4月10日の貝母の開花状況です。開花は、4月2日頃でした。満開は15日。見頃は20日頃までで、21日ぐらいから散り始めました。30日にはかなり結実。おそらく今年も同じ様な状況になると思われます。妻女山駐車場の奥に、地図を掲載してあります。また、陣場平の入り口には看板が設置してあります。当ブログでは、貝母の開花状況をお知らせしていますが、コロナ前は富山、新潟、東京などからも見学者がありました。毎日数十人が訪れますが、タイムラグが有り里山なので密になるようなことはありません。体調管理をし感染症対策をしておいで下さい。私は保全作業をしながらガイドもいたします。お気軽に声をかけてください。

 『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせか、メッセージからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
 インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2年ぶりに信州糀味噌の寒仕込... | トップ | 上杉謙信の妻女山陣場平。枯... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

アウトドア・ネイチャーフォト」カテゴリの最新記事