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心療内科 新(あらた)クリニックのブログ

最新の精神医学に関するトピックスやクリニックの情報などを紹介します

ブプロピオン

2015年11月25日 | 抗うつ薬

本邦では未発売ながら、海外ではうつ病治療ガイドラインの第一選択薬のひとつに「ブプロピオン(商品名;ウェルブトリン)」という抗うつ薬があります。DNRI(ノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬)として作用するユニークな薬剤で、セロトニン系には作用しません。

当院には時折、海外からの留学生などが来院されますが、これまでに数人が過去にブプロピオンを内服していて、調子が良かったとおっしゃっていました。ブプロピオンはグラクソ・スミソクラインという製薬会社が開発し、海外で販売しております。ブプロピオンは海外では評価が高く、2007年にはアメリカでは4番目に多く処方された抗うつ剤となっております。また、禁煙補助剤としての効果も確認されており、禁煙補助の目的にも使用されております。

日本では2004年から臨床試験が開始されておりますが、2つのプラセボを対象とした二重盲検試験の結果、いずれもブプロピオンの有効性を示すことができず、2014年に開発を断念するにいたったようです。ですので、残念ながらもう日本で発売される見込みはないでしょう


小児・青年期への抗うつ薬投与について

2013年04月28日 | 抗うつ薬

厚生労働省が3月29日に、抗うつ薬の「効能・効果に関連する使用上の注意」の改訂を指示しました。内容としては、SSRI(ジェイゾロフト、デプロメール・ルボックス、レクサプロ)、SNRI(サインバルタ、トレドミン)、NaSSA(リフレックス・レメロン)の6剤に関して、「小児への投与は慎重に検討する」ということです。ただし、レクサプロ錠では12歳未満、他の5剤は18歳未満に対する注意事項となっております。SSRIの一つであるパキシルに関しては、18歳未満患者に対し今回と同様の対応をすでに取っておりましたので、今回の改訂対象には入っておりません。

この背景には、海外でのプラセボ対照臨床試験で有効性が確認できないとの結果が報告されたことを受けております。このような結果になった要因として、プラセボ(偽薬)効果が実薬との差がほとんど出ないほど高かったことがあげられます。ただし、6剤中レクサプロの1剤のみ、12歳~17歳で有効性を示すデータが報告されており、アメリカでは12~17歳のうつ病の治療薬として承認されています。

また、うつ病ではありませんが、強迫性障害の治療薬として、デプロメール・ルボックスは8歳以上の小児・青年期に対してアメリカ、ドイツ、イギリス、フランスにおいて適応を取得しています。

なお、日本うつ病学会と日本児童青年精神医学会が共同で発表した声明では、小児患者では「さまざまな重症度のものが含まれており、なかには心理的介入のみでは不十分なケースもあり、現に薬物療法の有効なケースも認められます。そのような場合は、薬物療法あるいは薬物療法と心理療法の併用を考慮すべきです」と指摘しております。同時に、SSRIなどの抗うつ薬を「積極的に選択するだけの合理的な根拠はありません。年齢により治療反応性が異なることを踏まえ、慎重に薬物療法を実施することが求めらます」と指摘しています。

つまり今回の改訂は、小児・青年期のうつ病治療に対して抗うつ薬の使用を否定するものではないけれど、まずは心理社会的支援や心理療法を実施し、うつ症状の程度に応じて、抗うつ薬を使用するかどうかを個々のケースに応じて慎重に検討する必要がある、ということでしょう。

実際に、私の臨床経験からも、18歳未満でもうつ症状が強い場合には抗うつ薬を使わざるを得ないケースがあり、実際に奏功することも少なからずあります。小児に限ったことではありませんが、薬剤を投与する際には、メリット(作用)とデメリット(副作用)を十分に検討することが求められます。

 


ジェイゾロフト

2012年11月01日 | 抗うつ薬

抗うつ薬のひとつに、ジェイゾロフトというSSRIがあります。SSRIは脳内のセロトニンという神経伝達物質を増やす作用を持っています。しかしジェイゾロフトはSSRIながら、セロトニンに加え、ある程度ドパミンという神経伝達物質も増加させることが分かっています。このように、ジェイゾロフトは脳内のセロトニンやドパミンを増加させ、気力や活動性を増大させるのではないかと言われています。

ジェイゾロフトは日本では2006年に発売され、日本ではうつ病とパニック障害に適応を取得しています。ジェイゾロフトもうつ病治療に用いられる第一選択抗うつ薬のひとつです。主な副作用は吐き気と軟便・下痢ですが、投与初期のみで程度も軽い場合が多く、副作用の影響で脱落する割合は比較的少ないお薬です。パニック障害に対しては少量でも高い効果を発揮してくれるので、重宝しています

 

 


NaSSA(リフレックス/レメロン)

2012年10月02日 | 抗うつ薬

現在、うつ病治療に用いられる第一選択抗うつ薬のひとつに、NaSSA[商品名;リフレックス(明治)/レメロン(MSD)]というお薬があります。NaSSAとは、Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)の略です。このお薬の特徴は、前述のSSRIやSNRIのような吐き気の副作用がないことです。また、熟眠作用や食欲増進作用が強いので、不眠や食欲不振・体重減少が主訴の患者さんには第一選択薬となり得ます。

ただ、副作用として投与初期に翌日の眠気が強くでる場合があります。ですので、サラリーマンや学生さんが通勤、通学しながら治療を行う場合には、翌日に遅刻してしまう可能性があるので、使用は躊躇されます。うつ病が比較的重度で、休職・休学してゆっくり療養できる環境があれば、このお薬はお勧めです。効果が現れるのも、割と早い印象を持っています。


パキシルCR錠

2012年09月12日 | 抗うつ薬

今年の6月に、パキシルCR錠が発売されました。CRとは、“Controlled Release”の略で、日本語には“徐放”と訳されます。つまり、従来のパキシル錠に比べて、徐々に血中濃度が上昇するため、吐き気や眠気などの副作用が少なくなりました

現在は、うつ病治療の第一選択薬のメインはSSRIまたはSNRIですが、主な副作用はいずれも消化器症状(特に吐き気)で、2割くらいの割合で出現します。吐き気の程度は個人差があり、概して軽度で、基本的にはどの薬剤でも数日以内に消失しますが、中には嘔吐して中止せざるを得ないケースもあります。

うつ病の患者さんにどの抗うつ薬を選択するかは、その患者さんの症状に合わせて最適と思われるものから処方します。うつ病の患者さんの中には、吐き気や食欲不振などの消化器症状を訴える方が少なからずいて、これまでは投与初期に胃薬などを併用してなんとかしのいでいました。今回パキシルCR錠が発売され実際に使ってみて、他のSSRI・SNRIと比較して、確かに吐き気の副作用は少なくなり、消化器症状のある患者さんにも使いやすくなりました。初期の副作用が少ないと、その後も患者さんは安心して治療を継続できるのではないかと期待されます。

ただし、パキシルは他のSSRI・SNRIに比べて離脱症状が多い薬剤です。離脱症状とは、自己判断などで急に内服をやめたりすると、めまいや吐き気、頭痛、不眠などの症状が起こることをいいます。うつ症状が改善して病状が安定すると、「もう大丈夫だろう」と思い、ついつい薬を自己判断で中止しがちですが、パキシルに限らず、他のSSRI・SNRIでも離脱症状は起こりうるので、薬を減量・中止する際は必ず主治医とよく相談してください。パキシルCRは、初期の副作用は軽減されることが示されていますが、従来のパキシルに比べて離脱症状が少ないかどうかのデータはありませんので、パキシルCRを中止する際も、主治医の指示のもと徐々に減量して、様子を見ながら中止していく必要があります。


テトラミド(四環系抗うつ薬)

2012年09月08日 | 抗うつ薬

抗うつ薬の分類のなかに、「四環系抗うつ薬」というお薬があります。「四環系」とは、薬剤の分子構造中に連なった環状構造が4つあることに由来しています。三環系抗うつ薬より副作用が少ない、ということで開発された抗うつ薬ですが、抗うつ作用は比較的弱く、抗うつ効果を目的に使われることは少なくなっています。しかしながら、テトラミドという四環系抗うつ薬は、非常に優れた熟眠作用を有しており、私は非常に重宝しています。睡眠薬と異なり、依存性や耐性がないのも良い点です。

テトラミドは、睡眠薬を使用しても十分な睡眠がとれない場合に、睡眠薬と併用して使用することが多いです。テトラミドの最高用量は一日60mgですが、睡眠改善の目的では一日2.5mg~5mgくらいで十分な場合がほとんどです。ただ、テトラミドは一錠10mgなので、5mgは半錠、2.5mgは1/4錠にする必要があり、薬剤師の先生にはお手数をお掛けしています


三環系抗うつ薬(トフラニール)

2012年04月05日 | 抗うつ薬

最近では、抗うつ薬と言えば新規抗うつ薬(SSRIやSNRI)が主流ですが、昔からあるタイプの三環系抗うつ薬もやはり今でも必要となることがあり、重宝されます。全体的には新規抗うつ薬の方が副作用が少ないとされていますが、SSRIやSNRIの主な副作用に、投与初期の吐き気があります。SSRIは、パニック障害の治療(日本ではジェイゾロフトとパキシルが認可)にも用いられます。

パニック発作の主な症状は、動悸やふらつき、めまい、息切れ、窒息感、胸痛ですが、時にパニック発作の症状として吐き気を主訴に訴える患者さんがおられます。そのような患者さんには、SSRIは投与しにくいのが現状です。そのような場合には、三環系抗うつ薬を使用します。三環系抗うつ薬は口の渇きや便秘などの副作用が現れる場合がありますが、SSRIで出現するような吐き気はなく、パニック障害ではうつ病で使用する用量よりも少量で効果がでるため、あまり副作用も出現しません。ちなみにパニック障害に効果のある代表的な三環系抗うつ薬は、トフラニールというお薬です。


レクサプロ

2011年08月31日 | 抗うつ薬

8月21日に、レクサプロという新しい抗うつ薬が発売されました。SSRIという部類に分類される抗うつ薬の一種です。海外ではうつ病以外にも、パニック障害や全般性不安障害などの不安障害にも適応を取得しています。これまでの海外での評価は比較的高く、効果が期待できる薬の一つとなりそうです。うつ病の治療は決して薬物療法のみではありませんが、治療薬の選択肢が増えるのは、患者さんにとってメリットだと思います。当院では、9月1日より処方が可能です。


サインバルタ

2011年05月02日 | 抗うつ薬

サインバルタという抗うつ薬が発売1年を迎え、5月1日より2週間以上の長期投与が可能となりました。サインバルタは、脳内のセロトニンとノルアドレナリンという神経伝達物質を増やす作用を持つお薬です(SNRIという部類に入る抗うつ薬です)。

これまでの私の使用経験上、気分の落ち込みや意欲の低下などを改善する効果の他に、体のどこかの部位が「ヤキヤキする」とか、「ピリピリする」、「チリチリする」などの、内科では原因不明と言われた身体的な不定愁訴にも効果を発揮したりします。慢性的な疼痛にも効果的なことがあります。副作用は比較的少ない方で、使いやすいお薬の一つです。