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心療内科 新(あらた)クリニックのブログ

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パキシルCR錠

2012年09月12日 | 抗うつ薬

今年の6月に、パキシルCR錠が発売されました。CRとは、“Controlled Release”の略で、日本語には“徐放”と訳されます。つまり、従来のパキシル錠に比べて、徐々に血中濃度が上昇するため、吐き気や眠気などの副作用が少なくなりました

現在は、うつ病治療の第一選択薬のメインはSSRIまたはSNRIですが、主な副作用はいずれも消化器症状(特に吐き気)で、2割くらいの割合で出現します。吐き気の程度は個人差があり、概して軽度で、基本的にはどの薬剤でも数日以内に消失しますが、中には嘔吐して中止せざるを得ないケースもあります。

うつ病の患者さんにどの抗うつ薬を選択するかは、その患者さんの症状に合わせて最適と思われるものから処方します。うつ病の患者さんの中には、吐き気や食欲不振などの消化器症状を訴える方が少なからずいて、これまでは投与初期に胃薬などを併用してなんとかしのいでいました。今回パキシルCR錠が発売され実際に使ってみて、他のSSRI・SNRIと比較して、確かに吐き気の副作用は少なくなり、消化器症状のある患者さんにも使いやすくなりました。初期の副作用が少ないと、その後も患者さんは安心して治療を継続できるのではないかと期待されます。

ただし、パキシルは他のSSRI・SNRIに比べて離脱症状が多い薬剤です。離脱症状とは、自己判断などで急に内服をやめたりすると、めまいや吐き気、頭痛、不眠などの症状が起こることをいいます。うつ症状が改善して病状が安定すると、「もう大丈夫だろう」と思い、ついつい薬を自己判断で中止しがちですが、パキシルに限らず、他のSSRI・SNRIでも離脱症状は起こりうるので、薬を減量・中止する際は必ず主治医とよく相談してください。パキシルCRは、初期の副作用は軽減されることが示されていますが、従来のパキシルに比べて離脱症状が少ないかどうかのデータはありませんので、パキシルCRを中止する際も、主治医の指示のもと徐々に減量して、様子を見ながら中止していく必要があります。