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建築を旅する

リカルド・レゴレッタ講演会

2011-10-21 17:12:38 | Weblog
今年の高松宮殿下記念世界文化賞が発表された。

今年の建築部門は、リカルド・レゴレッタ氏。



因に、
2007 ヘルツォーク&ドムーロン
2008 ピーター・ズントー
2009 ザハ・ハディド
2010 伊東 豊雄

2007年のヘルツォーク&ドムーロンから、毎年講演会をせっせと聴きに行っている。
多忙を極めているであろう、世界的な建築家の話をじっくり聞けるというのは得難い経験なので、毎年楽しみ。


今年も赤坂の鹿島で開催され、行って来た。

リカルド・レゴレッタだけれども、実はそれほど興味がある建築家というわけでは無かった。
氏はメキシコの建築家である。

メキシコといえば、フリーダ・カーロを思い出す、情熱的な国のイメージ。


因に、今のIFLA 国際造園家連盟の会長さんもメキシコ人の女性だ。

メキシコの建築家ではルイス・バラガンが非常に有名で、その自邸は、自分自身、死ぬまでに一度見れたら良いなあという建築の一つになっている。
なんといっても、世界遺産にも登録されている近代建築。



作品集でしか見た事がないけれど、その色が光が印象的で、空間の取り方やディテール、素材感など非常に引き込まれる魅力がある。
特に齋藤裕氏の写真集『カーサ・バラガン』はとてもとても素晴らしい。
齋藤氏によると、バラガンの色壁は、植物の緑との対比で考えられたものらしい。
メキシコシティの気候は、植物の繁茂に適していて、一年中緑がみられるとのこと。

ジャカランダやブーゲンビリア、メキシコの花はあでやかで美しい。
齋藤氏も指摘する様に、メキシコの建築のピンクは、緑に映える花の色なんだろう。





それで、リカルド・レゴレッタ。
とてもルイスバラガンに似通ったところがある。
水の使い方、色の使い方。
a+uなんかでは、昔から目にしていたが、実際どんな人なんだろうか。

登場したリゴレッタ氏は結構背が高く、すらっとしており、ズントーの印象にも少し似ていた気がした。
現在仕事のパートナーでもある三男のヴィクトル氏と二人で登壇。


最初に『どのように(建築を)次世代に伝えるか』を考えたいとの話がある。

冒頭は、日本の震災も含めた世界的な危機について語られる。
『人類の危機はチャンスでもある、大きく変われるきっかけとなる。』と。
ピンチはチャンスであると、激励を込めて話があった。

最初のスライドレクチャーは、自身の作品と、過去の遺跡などとの比較をした写真を元に。
繰り返し語られたのは、『ルーツ』という言葉。

『私はルーツを大切にしています。歴史的伝統を単なるノスタルジアではなく、文化の表現として現代に生かすのです』
(新聞記事より)

メキシコという強烈な光と奔放な色、そして特異な造形美。
そのような文化を根底に持つリゴレッタ氏の作品は、まさにメキシコを『ルーツ』としている。


その後は、今までの自身の作品の詳細をスライドを使いながらレクチャー。

設計は、内装から始め、何処に窓を持ってくるかなど、内側から、人から設計を始めるとの事だった。

クライアントとはかなり対話をし、決して、自分自身の作品を押し付ける事はしないと。
非常に謙虚な方だなあと思う。
クライアントにとにかく喜んでほしいと語られていた。

『建築は最高の仕事であり、建築は、パッションである。』
『常に最善を尽くす』
『クライアントの好みを深く考察する』
など印象的な言葉がつづく。


色に関しては、ロジックがあるのではなく、感情のおもむくままに使うのだけれど、非常にデリケートなものであると。
空間にどう作用するのか、緻密に検証をしなくてはならないと。色を変えれば、空間の質や建築の質も変化する。

一日の光で、色は変化し、当然地域や気候によって変化する。


レクチャーでは、非常に大きな邸宅や、文化施設など、おおらかで美しい光と色の建築を見る事ができた。
あっという間にすっと終わった。

少しも判らない事や、疑問に思う事もなく、その通りだなあと共感できるレクチャーであり、リカルドレゴレッタの人柄が出ている話であり、建築であるなと思った。

最後にいくつか質疑があったけれど、もし自分が聞くのならば、氏が若き日、37歳のときに完成させ注目を浴びたカミノ・レアル・ホテル・メキシコシティをどのような気持ちで作ったのか、聞いてみたかった。


既に、氏の全てが詰まっているホテル。
やっぱりすごい。

これも彼の原点であり、自身の作品のある意味ではルーツなんだろうな。


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