ハッブル宇宙望遠鏡と重力レンズ効果により、宇宙誕生後5~10億年に存在した小銀河が数多く発見されました。
でも、そこに宇宙第一世代の恒星は見つからず… 最初の星はもっと前に形成されていたようです。
最初に生まれた星は質量が大きく寿命が短かった
138億年前のビッグバンで誕生したばかりの宇宙には、水素とヘリウム、そしてごく少量のリチウムしか存在していませんでした。
このため、宇宙で最初に誕生した“第一世代星(種族III)”は、これらの元素から形成されたと考えられています。
水素やヘリウムしか含まない原始ガス雲は、光を出して冷えることがあまりないので、重力が圧力に打ち勝って収縮して星になるには、ガス雲の質量が大きい必要があります。
そう、最初の恒星は、きわめて質量が大きかったと予想されているんですねー
ただ、大質量星は寿命が短いので現在は存在せず…
過去の(遠方の)宇宙にも第一世代星を含む銀河は確実には観測されていません。
重力レンズ効果を用いた初期宇宙の観測
今回、宇宙の第一世代星探しを行ったのはヨーロッパ宇宙機関の研究チームでした。
ハッブル宇宙望遠鏡を用いて観測したのは、エリダヌス座の方向約40億光年の彼方にある銀河団“MACS J0416”。
銀河団の膨大な質量が引き起こす重力レンズ効果の利用が目的でした。
重力レンズ効果を利用すると、銀河団の向こう側、さらに遠方にある天体の光が増幅されるんですねー
重力レンズ効果がない場合に比べて、10倍~100倍も暗い天体まで見つけることができるようになります。
“MACS J0416”の重力レンズを通して見えてきたビッグバンから約5~10億年後の初期宇宙。
ここから第一世代星を探すため研究チームが用いたのは、NASAの赤外線天文衛星“スピッツファー”とヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡“VLT”の観測データでした。
さらに、研究チームは、重力レンズ効果を及ぼす手前の明るい銀河からの光を取り除くという新たな手法を開発。
この手法により、ビッグバン後10億年以内の若い宇宙で、これまでハッブル宇宙望遠鏡が観測できなかったほど質量の小さな銀河の探査を可能にしています。
観測の結果、低質量の暗い銀河が数多く見つかりました。
ただ、それらのスペクトルが示唆していたのは、この時代には既に水素やヘリウム以外の重元素が存在しているということ。
重元素は、第一世代星の内部で最初に合成され、超新星爆発でばらまかれる元素です。
この元素が存在しているということは、すでに第一世代星は存在していないことになります。
反対に、第一世代星が残っていることを示す証拠を得ることはできませんでした。
宇宙の再電離
一方で、今回の観測対象になった宇宙誕生後5~10億年は“再電離”が進行した時代と考えられています。
ビッグバン直後の宇宙では、元素が原子核と電子に分かれた電磁状態でした。
でも、宇宙が冷えてくると両者は結合して原子になっていくんですねー
その中から光を放つ天体が生まれた結果、そのエネルギーを吸収して星間物質が再び電離したのが再電離期になります。
研究チームは、今回見つかった小さな銀河が再電離を引き起こした主なエネルギー源ではないかと考えています。
また、今回の観測結果は、宇宙に最初の星や銀河が誕生した時代は、ハッブル宇宙望遠鏡で観測可能な限界よりもさらに以前にさかのぼることを示唆するものでした。
残念ながら今回の研究では、宇宙で最初に誕生した星を見つけることはできませんでした。
この課題は、将来の研究や新しく登場する観測機器に委ねることになりそうです。
まずは、2021年の打ち上げが検討されているハッブル宇宙望遠鏡の後継機“ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡”に期待しましょう。
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初代星による超新星爆発が予想以上に大きく球形でなかったから、たくさんの重元素が宇宙に放出された。
でも、そこに宇宙第一世代の恒星は見つからず… 最初の星はもっと前に形成されていたようです。
最初に生まれた星は質量が大きく寿命が短かった
138億年前のビッグバンで誕生したばかりの宇宙には、水素とヘリウム、そしてごく少量のリチウムしか存在していませんでした。
このため、宇宙で最初に誕生した“第一世代星(種族III)”は、これらの元素から形成されたと考えられています。
水素やヘリウムしか含まない原始ガス雲は、光を出して冷えることがあまりないので、重力が圧力に打ち勝って収縮して星になるには、ガス雲の質量が大きい必要があります。
そう、最初の恒星は、きわめて質量が大きかったと予想されているんですねー
ただ、大質量星は寿命が短いので現在は存在せず…
過去の(遠方の)宇宙にも第一世代星を含む銀河は確実には観測されていません。
初代星は太陽質量の100倍くらいの非常に重い星が多く、わずか1000万年程度で超新星爆発を起こしていたと考えられている。
重力レンズ効果を用いた初期宇宙の観測
今回、宇宙の第一世代星探しを行ったのはヨーロッパ宇宙機関の研究チームでした。
ハッブル宇宙望遠鏡を用いて観測したのは、エリダヌス座の方向約40億光年の彼方にある銀河団“MACS J0416”。
銀河団の膨大な質量が引き起こす重力レンズ効果の利用が目的でした。
重力レンズ効果を利用すると、銀河団の向こう側、さらに遠方にある天体の光が増幅されるんですねー
重力レンズ効果がない場合に比べて、10倍~100倍も暗い天体まで見つけることができるようになります。
銀河団“MACS J0416”(Credit: NASA, ESA, and M. Montes (University of New South Wales)) |
ここから第一世代星を探すため研究チームが用いたのは、NASAの赤外線天文衛星“スピッツファー”とヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡“VLT”の観測データでした。
さらに、研究チームは、重力レンズ効果を及ぼす手前の明るい銀河からの光を取り除くという新たな手法を開発。
この手法により、ビッグバン後10億年以内の若い宇宙で、これまでハッブル宇宙望遠鏡が観測できなかったほど質量の小さな銀河の探査を可能にしています。
観測の結果、低質量の暗い銀河が数多く見つかりました。
ただ、それらのスペクトルが示唆していたのは、この時代には既に水素やヘリウム以外の重元素が存在しているということ。
重元素は、第一世代星の内部で最初に合成され、超新星爆発でばらまかれる元素です。
この元素が存在しているということは、すでに第一世代星は存在していないことになります。
反対に、第一世代星が残っていることを示す証拠を得ることはできませんでした。
宇宙の再電離
一方で、今回の観測対象になった宇宙誕生後5~10億年は“再電離”が進行した時代と考えられています。
ビッグバン直後の宇宙では、元素が原子核と電子に分かれた電磁状態でした。
でも、宇宙が冷えてくると両者は結合して原子になっていくんですねー
その中から光を放つ天体が生まれた結果、そのエネルギーを吸収して星間物質が再び電離したのが再電離期になります。
研究チームは、今回見つかった小さな銀河が再電離を引き起こした主なエネルギー源ではないかと考えています。
また、今回の観測結果は、宇宙に最初の星や銀河が誕生した時代は、ハッブル宇宙望遠鏡で観測可能な限界よりもさらに以前にさかのぼることを示唆するものでした。
残念ながら今回の研究では、宇宙で最初に誕生した星を見つけることはできませんでした。
この課題は、将来の研究や新しく登場する観測機器に委ねることになりそうです。
まずは、2021年の打ち上げが検討されているハッブル宇宙望遠鏡の後継機“ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡”に期待しましょう。
低質量の暗い銀河が存在する初期宇宙(イメージ図)。(Credit: ESA/Hubble, M. Kornmesser, and NASA) |
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