宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

予測よりも速いスピードだった! 衛星タイタンは年間11センチも土星から遠ざかっている

2020年06月27日 | 土星の探査
探査機“カッシーニ”の観測データから、衛星タイタンはこれまでの予測の100倍も速く土星から遠ざかっていることが分かりました。
月が地球から遠ざかるスピードは1年間に3.8センチ。
でも、タイタンは年間11センチの割合で土星から遠ざかっているようです。


月が地球から遠ざかっている理由

月は1年間に3.8センチずつ地球から遠ざかっています。

月の重力の影響で、地球の表面はわずかに伸び縮みし、これによって地球の自転にブレーキがかかることになります。
一方、その分のエネルギーが月の公転半径を大きくすることに使われているんですねー
これが、月が地球から遠ざかる仕組みです。

同じことは、地球以外の惑星とその衛星にも起こっています。

土星最大の衛星であるタイタンも例外ではなく、年々土星から遠ざかっています。
ただ、これまで天文学者たちは、その割合を少なく見積もっていたようです。
“カッシーニ”が2012年に撮影したタイタンと土星。真横から見た環がタイタンの後ろを横切っていて、土星にその影が映っている。(Credit: NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute)
“カッシーニ”が2012年に撮影したタイタンと土星。真横から見た環がタイタンの後ろを横切っていて、土星にその影が映っている。(Credit: NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute)


タイタンは予想よりも土星に近い位置で誕生した

今回、フランス・パリ天文台の研究チームが調べたのは、タイタンが土星から遠ざかるペースでした。
研究では、2004年から2017年まで土星を周回していたNASAの探査機“カッシーニ”から得られたデータで、2通りの分析を行っています。

一つ目は、“カッシーニ”が撮影した画像に写っている恒星の位置を精密に測定してタイタンの位置を追う方法。
この方法で分かったのは、タイタンが1年で土星からおよそ11センチ遠ざかっていることでした。

二つ目の方法では、100回以上に及ぶタイタンへのフライバイ(接近通過)のうち10回について、“カッシーニ”が地球に送った電波信号の周波数の変化からタイタンの軌道を追跡。
すると、一つ目の方法と同じ結果が得られたんですねー

タイタンが土星から年間約11センチずつ遠ざかっているという分析結果は、これまでの予測の100倍も速いペースでした。

このことは何を意味しているのでしょうか?
それは、現在土星から約120万キロの距離に位置しているタイタンが、これまでの予想よりもはるかに土星に近い位置で誕生したということです。

土星自身が太陽系誕生直後の46億年前に生まれたことは分かっています。
ただ、その環や80個以上の衛星たちがいつ形成されたかについては、不明な点が多くあります。

今回の研究成果は、土星系の年齢、衛星がいつ生まれたのかという問題に、新たに重要な手掛かりを与えてくれたことですね。


衛星が惑星から遠ざかる速度

タイタンが、これまでの見積もりよりも速く土星から遠ざかっていることは、今回の研究にも参加しているアメリカ・カリフォルニア工科大学の研究者が発表した理論からも導かれていました。

これまで50年にわたり、衛星が惑星から遠ざかる速度は、どれも同じ数式を使って計算されていました。
この理論では、タイタンのように惑星から遠くに位置する衛星は、それだけ惑星との重力による相互作用も弱く、内側の衛星に比べてゆっくりと移動すると考えられていました。

一方、カリフォルニア工科大学の新しい理論では、惑星の振動と衛星の公転の周期が一定の比で固定されることで、遠くにある衛星でも近くの衛星とさほど変わらないペースで外向きに移動することが可能でした。

今回の観測結果が意味するのは、こうした惑星と衛星との相互作用が、これまでの予想以上に顕著だということ。
このことは、土星とタイタン以外の惑星系、さらには太陽系を超えて系外惑星や連星にも適用できるようです。


こちらの記事もどうぞ
  衛星タイタンではメタンが蒸発して雲の中で凝縮、雨になって地表に降り注いでいる? 小さくて深い湖から分かったこと
    


最新の画像もっと見る

コメントを投稿