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衛星エウロパは表面の化合物と木星の放射線により発光しているかもしれない

2020年11月22日 | 木星の探査
表面が3キロに及ぶ氷で覆われている木星の第2衛星エウロパ。
どうやら闇の中で光を放っているようです。
光が放たれるのは、エウロパ表面の氷が木星の強力な磁場から絶え間なく放射線を浴びていることが、原因として考えられています。
氷に含まれる化合物により光の色は変わるので、この光を調べればエウロパ表面の組成が分かり、地下の海を知る手掛かりにもなるようです。
木星の衛星エウロパは、分厚い氷の殻に覆われていて、その下にある巨大な海には生命が存在する可能性がある。(Credit: NASA/JPL-CALTECH/SETI INSTITUTE)
木星の衛星エウロパは、分厚い氷の殻に覆われていて、その下にある巨大な海には生命が存在する可能性がある。(Credit: NASA/JPL-CALTECH/SETI INSTITUTE)

衛星エウロパには地下に海があり生命が存在している?

エウロパは、月と同じように太陽に向いた面が明るく輝き、反対の面は暗闇に覆われています。

でも、今回の実験で分かってきたのは、エウロパの裏側が緑色や青みを帯びた白色の光を放っている可能性があること。
原因として考えられるのは、エウロパ表面の氷が、木星の強力な磁場から絶え間なく放射線を浴びていることでした。

研究ではエウロパ表面にあると考えられている、いくつかの化合物を含んだ氷を使って実験を実施。
すると、物質の構成によって放たれる光の色が影響を受けていることも発見しています。

つまり、このことは将来の探査でエウロパ表面の光を調べることができれば、エウロパ表面の複雑な化学的性質を解明できることを意味しているんですねー
この先数年以内に2つの探査機が地球を旅立ちエウロパを間近に観測することが予定されている。一つはNASAの探査機“エウロパ・クリッパー”、もう一つはヨーロッパ宇宙機関の木星氷衛星探査計画“JUICE”。

また、エウロパは木星の潮汐力を受けることで、揺れ動かされ摩擦で熱が生じ星の内部が熱を持っているようです。
この熱により地殻下では氷が解け液体の水が存在していて、そこには生命が存在するかもしれないと考えられています。
衛星の軌道が円形でないとき、惑星から遠いときはほぼ球体の衛星も、接近するにしたがって惑星の重力で引っ張られ極端に言えば卵のような形になる。そして惑星から遠ざかるとまた球体に戻っていく。これを繰り返すことで発生した摩擦熱により衛星内部は熱せられる。このような強い重力により、天体そのものが変形させられて熱を持つ現象を潮汐加熱という。
木星の衛星エウロパ、土星の衛星エンケラドス、海王星の衛星トリトンといった天体では、潮汐作用による惑星内部の過熱“潮汐加熱”を熱源とした低温火山活動によって、地下から水などの物質が噴出していると見られている。

さらに、エウロパの表面に見られる黄色い模様が、海水の塩分の主成分で食塩としても利用されている塩化ナトリウムが放射線を受けたものであることも分かっています。

そう、この塩化ナトリウムは、地下にあると考えられている海から噴出したものと考えられているんですねー
なので、エウロパ表面の組成を調べることは、氷地殻の下に存在すると考えられている海の組成について、手掛かりが得られるチャンスにもなります。

氷に含まれる化合物により光の色や強さは変わる

純水の氷が放射線にさらされると光を放つことは、1950年代から知られていました。

高エネルギーの電子線(放射線)が氷の分子に衝突すると、いったん励起した分子が光のかたちでエネルギーを放出するからです。
励起とは、原子や分子が外部からエネルギーを与えられ、元のエネルギーの低い安定した状態からエネルギーの高い状態に移ること。

今回の研究では、南極の氷の中に見られるこのかすかな光の瞬きを利用。
地球に降り注いでいると考えられているエキゾチック粒子を探しています。

でも、地球の分厚い大気と磁気圏が宇宙から日ってくる放射線の多くを遮断してしまうので、そうした分子の輝きは非常にわずかしか起きることはありません。

地球とは対照的に、エウロパはほとんど大気を持っていません。
さらに、木星の猛烈かつ巨大な磁場から放たれる放射線の大渦に見舞われているんですねー

その量はすさまじく、もし人間がそこに無防備で立っていたら、10分から20分で死んでしまうほどのもの。
この放射線はエウロパの氷地殻の性質に、どのように影響を及ぼしているのでしょうか?。

将来、もしエウロパに宇宙船を着陸させるなら、放射線の影響を理解することは非常に重要なことになります。

今回、研究チームが作ったのは、氷の塊に電子線を浴びせて、何が起こるかを追跡できる装置“ICE-HEART(エウロパ高エネルギー電子・放射線環境試験のための氷室)”でした。

実験で注意を引いたのは、電子線を純粋の氷のブロックに照射したとき、氷が輝きを放ったこと。
次に、対象を塩化ナトリウムを含んだ氷に換えると、今度は非常にかすかにしか光りませんでした。

そこで研究チームが行ったのは、過去の数々の研究でエウロパの表面に存在することが示唆されてきた化合物を使った実験。
すると、光を消してしまうほどの炭酸ナトリウムなどに対して、硫酸マグネシウムなどは光を増大させていました。

他に変化していたのは光を構成する色の強さでした。
例えば、緑色の光を抑える塩化ナトリウムや、赤色を増加させる硫酸ナトリウムです。

これら実験の結果が示唆しているのは、異なる化合物の存在が、エウロパの表面から発せられる輝きに影響を及ぼすということ。
この結果は、エウロパを違った視点から見るきっかけになるはずです。

探査機がエウロパの光をとらえるか

研究チームの計算によると、放射線によって生じるエウロパの氷の輝きは、探査機“エウロパ・クリッパー”のカメラで十分にとらえられそうです。
“エウロパ・クリッパー”は、NASAが2020年代に打ち上げを計画している探査機。探査の目的は、液体の水、化学物質、十分なエネルギー源の調査。これらの生命に必要な3つの要素がエウロパに存在するかどうかを決定する予定。

本当にエウロパが自ら光を発していた場合、それをカメラで撮影できれば、非常に多くのことを学ぶことができるはずです。
さらに、こうした手法は、ガニメデなど、木星の他の衛星の研究にとっても有用なものになります。
ただカメラは、いま製造途中のようですよ。

氷地殻にどんな化合物が含まれているかを解明することは、その下にあるとかんがえられる海の化学的性質を推測するヒントにもなります。

エウロパ表面に広がる滑らかな氷と、表面から噴出しているとみられる間欠泉の存在は、その下にある液体が地質学的な時間スケールで上方に向かって染み出していることを示唆しています。
氷地殻の方も、ゆっくりと地下の海に沈みこんでいる可能性がある。

つまり、表面の組成を理解することは、深い海の中に果たして生命がいるのか、いるとすればどのように存在しているのかを解明する重要な手掛かりに成り得るはずです。

エウロパについては、まだ本当にたくさんのことを知る必要があります。

ただ、1990年代の木星探査機“ガリレオ”のミッション以降、エウロパの詳しい調査は行われておらず、この氷の世界について詳しく知るのは簡単なことではありません。

でも、近い将来には“エウロパ・クリッパー”や“JUICE”によって多くの手掛かりがもたらされるかもしれません。

今回の研究結果は、その可能性をさらに高めるものになるはず。
現地に探査機を送る前に多くのことを知っていれば、より多くの科学的成果が得られると思いませんか?


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1 コメント

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Unknown (sekoisyougioyaji)
2020-11-22 12:02:32
磁気と半導体の発光原理で光を放つのかも?
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