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モバライダー mobarider

3つの太陽をもち、空から鉄の雨が降る奇妙な惑星

2016年07月12日 | 宇宙 space
太陽系の外に変な惑星が見つかりました。

その星では、1つの季節が140年も続き、影はときどき3重に、
空から鉄の雨が降ってきて、日の出と日の入りが見事なまでにバラバラ…

さらに、空に見える太陽の数は、
1つのときも、2つのときも、3つのときもあるそうです。

地球から見て、ケンタウルス座の方向340光年の彼方に、
この変な惑星“HD 131399Ab”があるんですねー
3つの太陽を持つ惑星“HD 131399Ab”のイメージ図。


大きな恒星とお互いを回る小さな2つの恒星

この惑星“HD 131399Ab”は大きさが木星の4倍もあり、
直接撮影することができた数少ない太陽系外惑星の1つになります。

そして、この星から空を見上げると、
3つの太陽(恒星)が複雑怪奇な動きをしているんですねー

  3つの恒星は大きい方から順に131399A、B、Cになります。

原因は、3つの恒星と惑星の軌道にあるようです。

惑星は550年の周期で、青白く巨大な恒星Aの周りを公転し、
小さい恒星BとCは、お互いの周りを公転する連星になり、
この連星が恒星Aの周りを公転しています。

この入り組んだ軌道のおかげで、
惑星から見る3つの恒星の動きは、とても複雑になるそうです。

連星や三連星のうち1つの恒星のまわりを公転する惑星は、
これまでに数多く見つかっていて
連星系の外側を回る“周連星惑星”の存在も知られています。

それでも今回の惑星“HD 13199Ab”は特別な存在になるんですねー

それは天文学者が、
超大型望遠鏡“VLT”の観測装置“SPHERE”を使って直接観測できた点と、
この星がそう長くは生きられそうにないからです。


微妙なバランスで成立

じつは宇宙では、
太陽系のような単独の恒星の方が珍しいことが分かっています。

太陽の近傍にある恒星のほとんどが、
一緒に生まれ育った別の恒星とペアになっているんですねー

  太陽の近傍にある恒星の約50~60%が連星系を作っていて、
  そのうちの10%が惑星をもっていると考えられています。


そのため天文学者は、多くの惑星は連星の周りを回っていると予測しています。

でも、このような系を形成するには、
惑星の軌道と材料の分布の間に、絶妙なバランスが取られている必要があります。

そのバランスが崩れると、惑星は悲惨な運命をたどることになります。

多重星系の中で生まれようとする惑星は、
お互いの周りを公転する連星に引き込まれて消滅したり、
外にはじき出されて、果てしない銀河の暗闇の中を永遠にさまようこと…

そう、惑星が多重星系の中で生き残るためには、
一定の要件を満たす必要があることになります。

惑星“HD 131399Ab”は、少なくとも1600万年は生き残っているので、
こうした条件をかろうじて満たしているようです。

太陽から冥王星までの約2倍の距離になる約122億キロが、
恒星Aから“HD 131399Ab”までの平均距離になります。

ただ、同じく恒星Aの周りを公転している、連星BCとは近すぎる距離になり、
惑星は恒星Aと連星BCの間の不安定領域に存在することになります。

このため惑星が今の位置に落ち着いたのは、
恒星Aにもっと近いところで連星BCの影響を受けずに形成され、
何らかの理由により恒星Aから遠ざかったからではないかと考えています。

現時点では惑星の軌道は正確には決定されていません。

なので、さらに外に向かって旅を続ければ、
銀河系の中をさまよう数十億個の自由浮遊惑星の1つとして、
終わる可能性もあります。

惑星が非常に長く延びた軌道を回っている場合は、
今後数千年から1万年で外に放り出されてしまうことが考えられます。

どの恒星とも関連のない空間に、
惑星ほどの質量の天体が自由に浮遊している…
このような例が多数知られています。

惑星にはかわいそうですが、これは面白い可能性なんですねー


鉄の雨が降る惑星

天文学者たちの観測によって、
惑星“HD 131399Ab”自体の姿も明らかになり始めています。

重力の影響や影によってしか、
その存在を知ることができない大多数の太陽系外惑星とは違い、
“HD 131399Ab”は直接観測ができるので、
大気についても詳細に知ることができるからです。

“HD 131399Ab”は木星や土星のように、
その大気は主に水素とヘリウムで構成されていて、
微量の水とメタンもあるようです。

でも、木星がはっきりした模様の雲に包まれているのとは違い、
“HD 131399Ab”には、ほとんど雲がありません。

よく晴れているか、せいぜい部分的に雲があるだけのようですが、
大気の下層ではケイ酸塩の岩石粒子が雲を形成しています。

さらに下層では、
温度がもっと高くなるので、高温の大気から鉄のしずくが凝結して、
鉄の雨が降っている可能性もあるそうです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ アルマ望遠鏡で分かってきた連星系での惑星形成




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