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モバライダー mobarider

衛星“イアペトゥス”の巨大地滑り

2012年08月03日 | 土星の探査
NASAの探査機“カッシーニ”が、土星の衛星“イアペトゥス”の凍った表面に巨大な地滑りの跡を発見しました。
地滑りは30ヵ所もあり、巨大隕石の衝突で引き起こされた可能性が高いようです。

“イアペトゥス”の表面には、
クレーターの切り立った崖や、エベレストの2倍以上になる高さの山脈がそびえています。
地滑りには理想的な環境といえるんですねー

この衛星は太陽系の主な天体の中でも、
大きさに比べて地表の高低差が最も激しい天体の1つです。
火星を除けば地滑りが最も多いそうです。

ワシントン大学の研究チームが、“カッシーニ”の地滑り写真を分析した結果、
地滑りは長距離におよんでいたそうです。
クレーターの壁や山の尾根から崩落した「凍った岩屑」は、ときには80キロも地表を移動したとか…
これは落下した高さの20~30倍の距離になるんですねー

地球上の大半の地滑りは、崩落した高さの2倍の距離しか移動しません。
でも、“長距離運動地滑り”と呼ばれる地滑りは遠くまで滑り、
“イアペトゥス”で見られる地滑りに似た動きをします。

地球上の“長距離運動地滑り”は長く科学者を悩ませてきました。
なんせ転がり落ちる岩や氷は、摩擦で止まってしまうんですねー

“イアペトゥス”では、何らかの要因が氷の地滑りの摩擦を減らしているようです。
研究チームが要因として考えたのが「摩擦熱」です。

フラッシュヒーティングと呼ばれる急激な発熱現象は、
地滑りの摩擦が氷を熱し、滑りやすくして、落ちていく岩屑の速度を高めます。
移動がとても速いので、熱が周囲の物質に放射する時間が無いんですねー
熱は狭い領域に集中するので、温度が十分に上がり冷たく固い氷はさらに滑りやすくなります。

これは地球で起こる“長距離運動地滑り”を解明する手掛かりになるのかもしれません。
“イアペトゥス”の地滑りを理解することは、地球上で起こる地滑り(天災)を防ぐ一手になるのかもしれません。


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