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最も遠方の宇宙に合体しつつある超大質量ブラックホールを検出! 超大質量ブラックホールは最初期の頃から銀河の進化と関係していた

2024年05月24日 | 銀河と中心ブラックホールの進化
国際的な天文学者チームは、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を用いて、宇宙誕生7億4000万年後の宇宙で2つの銀河と、その中心に位置する超大質量ブラックホール(※1)が合体しつつあることを発見しました。

この発見は、これまでに検出されたブラックホール同士の合体として最も遠いもので、宇宙の初期に検出された初めての例になります。
※1.超大質量ブラックホールは、太陽の数十万~数十億倍以上もの質量を持つブラックホール。ほぼ全ての銀河の中心には、このような大きなブラックホールが存在すると考えられている。


ブラックホールの急成長

“ZS7”と呼ばれる合体しつつある銀河のペアに存在るブラックホールの質量は、どちらも太陽の5000万倍ほど。
ただ、一方のブラックホールは高密度のガスの中に埋もれているので、はっきりしたことは分かっていません。
図1.“ZS7”周辺の宇宙をジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ“NIRCam”で撮影したもの。画像の中心付近に“ZS7”が写っている。(Credit: ESA/Webb, NASA, CSA, J. Dunlop, D. Magee, P. G. Pérez-González, H. Übler, R. Maiolino, et. al)
図1.“ZS7”周辺の宇宙をジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ“NIRCam”で撮影したもの。画像の中心付近に“ZS7”が写っている。(Credit: ESA/Webb, NASA, CSA, J. Dunlop, D. Magee, P. G. Pérez-González, H. Übler, R. Maiolino, et. al)
今回の研究では、ブラックホールの近傍で高速運動する非常に高密度のガスや、ブラックホールが降着円盤を形成する際に発生する高エネルギー放射に照らされた高温の電離ガスの証拠を発見しています。
図2.右端が“ZS7”を拡大したもの。(Credit: ESA/Webb, NASA, CSA, J. Dunlop, D. Magee, P. G. Pérez-González, H. Übler, R. Maiolino, et. al)
図2.右端が“ZS7”を拡大したもの。(Credit: ESA/Webb, NASA, CSA, J. Dunlop, D. Magee, P. G. Pérez-González, H. Übler, R. Maiolino, et. al)

宇宙誕生から10億年ほどの間に、すでに大質量のブラックホールが存在していたことが分かっています。
このことが意味しているのは、ブラックホールは短期間のうちに急速に成長し大質量のブラックホールになったことです。

また、銀河とその中心に位置する超大質量ブラックホールは、互いに影響しあいながら成長してきたことも分かっています。

このことから、ブラックホールが急成長をする重要な経路として、銀河中心のブラックホール同士の合体があると考えられています。

また、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による他の発見と合わせると、今回の結果は、超大質量ブラックホールが最初期の頃から銀河の進化と関係してきたことを示しています。


超大質量ブラックホールに伴う重力波の検出

今回発見された2つのブラックホールが合体すれば、重力波(※2)が発生することが考えられます。
※2.一般相対性理論によると、中性子星のような高密度な天体の周りでは時空(時間と空間)が歪んでいる。このような高密度な天体が運動することで、歪みが波として宇宙空間に伝播する。これを重力波という。
2015年以降、アメリカの“LIGO”や欧州重力波観測所の“Virgo”といった重力波望遠鏡の観測によって、ブラックホール同士の合体などに伴って放出されたとみられる重力波が、何度も検出されてきました。
ただ、検出された重力波は、比較的軽い恒星質量ブラックホール同士によるものでした。

超大質量ブラックホール同士の連星が合体する前に放出されるような低い周波数の重力波は、地球上の検出器ではとらえることができないんですねー

それは、地上の重力波望遠鏡がターゲットにしているのは、互いの周りを回るような激しい公転天体からの1秒間に数十回から数千回もの重力波だからです。
これらの重力波望遠鏡は、10Hz~10kHzの周波数帯で重力波を検出する設計になっています。

一方で、極めて接近した白色矮星同士の連星や、超大質量ブラックホール同士の連星が合体した場合に発生する重力波だと、発生する重力波の周波数は0.0001~1Hzという比較的ゆっくりとした低い周波数になります。

このようなゆっくりとした重力波は、地震波のような地面の振動の周波数に近くなります。
そう、地面の振動の周波数に埋もれてしまい、地上の重力波望遠鏡で観測することが非常に難しくなる訳です。

たとえば、ヨーロッパ宇宙機関は2035年の打ち上げを目指して、宇宙重力波望遠鏡“LISA(Laser Interferometer Space Antenna:レーザー干渉計宇宙アンテナ)”の開発を進めています。

“LISA”では3つの衛星が連携し、衛星間でレーザー光を往復させることで干渉計として機能させます。
約250キロの基線長を実現できるので、1mHz(ミリヘルツ)以下の周波数帯で重力波を検出できる感度を持たせるようです。

なので、“LISA”を用いることができれば、超大質量ブラックホール同士の合体に伴う重力波の検出が期待できますね。


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