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なぜ氷天体には赤色が見られるものと見られないものがあるのか?

2020年04月07日 | 宇宙 space
外太陽系のような極低温環境を模した実験により、氷天体に見られる赤色に似た様子が再現されました。
温度が上昇すると色が薄くなって消える現象も見られ、氷天体の色分布の謎を解明する手掛かりになると期待されています。


ケンタウルス族と木星族彗星

火星と木星の間に広がる小惑星帯より外側の領域には、摂氏マイナス100度からマイナス230度という極寒の世界が広がっています。

この領域は“外太陽系”と呼ばれ、数多くの氷天体が存在しています。

氷天体のうち、海王星より外側に存在する太陽系外縁天体やケンタウルス族天体では、赤色を示すものが見られています。
  ケンタウルス族天体とは、木星と海王星の間に公転軌道を持つ氷天体のこと。

でも、より太陽に近づいた距離に存在する木星族彗星では、赤色を示すものは観測されていません。
  木星族彗星とは、太陽からもっとも離れたときに木星軌道付近に来る短周期彗星の総称。
探査機“ニューホライズンズ”がとらえた冥王星。右側の白っぽい“トンボー領域”と対照的に、左側には“エリオット・クレーター”や“ヴァージル地溝帯”などの地形が存在する赤い領域が広がっている。(Credit:NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute)
探査機“ニューホライズンズ”がとらえた冥王星。右側の白っぽい“トンボー領域”と対照的に、左側には“エリオット・クレーター”や“ヴァージル地溝帯”などの地形が存在する赤い領域が広がっている。(Credit:NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute)
ケンタウルス族と木星族彗星の起源は、共に太陽系外縁天体と考えられていました。
なぜ、両者の色分布は異なっているのでしょうか?

その理由の1つとして考えられているのは、赤色を示す物質が太陽系の内側に行くにつれて昇華したり壊れたりするということ。
木星族彗星は太陽系の内側へ行くため、赤色を示さなかったというわけです。

ただ、宇宙環境を模したこれまでの実験では、氷天体が色分布を持つ理由は謎のままになっていました。


赤色を示す氷天体の謎

そこで、東京大学大学院新領域創成科学研究科のチームは、“クライオプラズマ”をメタノール及び水からなる氷の表面に摂氏マイナス190度で照射し、“外太陽系”の環境を模した実験を行います。
  “クライオプラズマ”は極低温環境で生成可能なプラズマ。東京大学大学院新領域創成科学研究科のチームが独自に開発してきた。

実験の結果、“クライオプラズマ”を照射した箇所だけが、“外太陽系”に存在する氷天体と類似した赤色を示すことが明らかになります。

さらに、この赤色は温度が上昇して摂氏マイナス150度を超えると徐々に薄くなり、マイナス120度で消失するという現象も見られました。

このような極低温環境での温度依存性が示されたのは初めてのことでした。
極低温環境での昇温により赤色が消失していく様子。(リリースより)
極低温環境での昇温により赤色が消失していく様子。(リリースより)
そして、赤色が消失した温度と良い一致を示したのが、“外太陽系”において赤色の氷天体が見られなくなる距離(木星と土星の間付近)で想定される天体の表面温度です。

このことから、赤色の氷天体は太陽系の外側から内側へと旅をする間に、温度変化に伴って赤色を失い得るという可能性が示されることになります。

“外太陽系”の氷天体に見られる赤色は、単に現在の天体の状況を物語っているだけではありません。
天体移動の歴史や、地球外におけるアミノ酸など生体物質生成の可能性とも密接にかかわっていると考えられています。

今回発見された極寒でしか存在できない赤色は、“外太陽系”の氷天体の色分布の謎を解き明かす新たな手がかりになります。
ひょっとすると、太陽系の形成及び進化のメカニズム解明や、生命の起源の探索にも貢献するかもしれませんよ。


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1 コメント

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Unknown (blogtaiji)
2020-04-08 04:32:39
本当に冥王星に到着するとは思っていませんでした…太陽の光が届いているのですね…そうでないと、写真に写らないです…

9年以上の歳月がかかっています…
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