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55億光年彼方の宇宙で見つかった最大級のモンスター超銀河団“キングギドラ”

2023年02月10日 | 銀河・銀河団
国立天文台と広島大学を中心とした研究チームが、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラを用いた大規模観測から、約55億光年彼方の宇宙に巨大な超銀河団を見つけました。
この超銀河団は、およそ満月15個分の天域にまたがって銀河とダークマターが強く密集しているだけでなく、含まれている銀河団は少なくとも19個。
50億光年以遠の宇宙で確認されている中では最大の超銀河団だそうです。

銀河団が集まって形成する巨大構造“超銀河団”

宇宙における巨大な天体といえば、無数の星やガスが集まった銀河が挙げられます。

でも、重力によって一つにまとまった天体として宇宙最大規模といえるのは、その銀河が大量のガスとともに集まった銀河団になります。
その銀河団がさらに集まって“超銀河団”という巨大構造を形成していることも分かっています。
 超銀河団とは、宇宙において、銀河群や銀河団が集まり形成されている銀河の大規模な集団。その大きさは1億光年以上の広がりを持つものもある。
約100メガパーセク(天の川銀河の約500倍)にわたって広がる構造を持つ超銀河団ですが、一方で定義そのものもまだ曖昧。
その正体や内部で何が起こっているかなど、多くの謎に包まれています。
 天文学において太陽系外の天体までの距離を測る単位の一つ。1パーセク(pc)は、1天文単位(au)=約1.4960億キロメートルが角度の1秒を張る距離で、約31兆キロメートルに相当する。光年を用いると1パーセク=3.26光年になる。
実のところ、“天の川銀河”も“おとめ座超銀河団”と呼ばれる超銀河団の内部に位置していて、さらに周辺の複数の銀河団や超銀河団とともに、より大きな“ラニアケア超銀河団”を構築しています。
 私たちの住む“天の川銀河”は“おとめ座超銀河団”の内部、およびその中核をなす“おとめ座銀河団”の外れに位置していることが知られている。超銀河団の定義自体が曖昧である現状も相まって、超銀河団をさらに包み込む巨大構造も超銀河団と呼ばれるケースがある。
そう、超銀河団は私たちが住む近傍宇宙の成り立ちを明らかにする上で、非常に重要な研究対象といえるんですねー

少なくとも9の銀河団で構成された超銀河団を検出

すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ“ハイパー・シュプリーム・カム(Hyper Suprime-Cam:HSC)”を用いた大規模探査“すばる戦略枠プログラム”は、満月の見かけの大きさの約4400倍に相当する広範囲を100億光年以遠の彼方まで観測することに成功しています。

このプログラムから得られる高品質な画像データは、未知の超銀河団を探すのに現時点で最適なリソースといえます。

国立天文台ハワイ観測所の嶋川里澄さんの研究チームは、“ハイパー・シュプリーム・カム”を用いた“すばる戦略枠プログラム”の観測データを分析し、超銀河団の候補を100天体近く見つけています。

研究チームは、その中で最も規模が大きいと見込まれるものについて、星の総質量とダークマターの分布を調査。
 ダークマターの分布は、弱重力レンズ効果を利用して求めている。弱重力レンズ効果は、遠方の銀河から放たれた光が、手前にある銀河団など強い重力場を持つ領域を通過する際に光路が曲げられることで、遠方銀河がゆがんだり増光されて見える現象(重力レンズ効果)のうち、その程度が比較的小さい場合を指す。今回の研究で発見された超銀河団は、50億光年以遠の宇宙で、これまでに弱重力レンズ解析によって確認された中では最大の構造になる。
すると、3つのダークマター密集領域を中心に、少なくとも19の銀河団で構成された超銀河団を検出するんですねー
図1.すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラがとらえた“キングギドラ超銀河団”の3色合成画像。中央画像の等高線は銀河の密度分布を、淡い赤色が示しているのはダークマターが広範囲にわたってとりわけ強く密集する領域。番号が付いた四角は超銀河団に付随する銀河団の位置を示す。周囲のパネルは、これら19個の銀河団の拡大図で、銀河団でよく見られる、赤い銀河が群れ集まる様子がとらえられている。左上の満月は、超銀河団の領域と比較した場合の、満月の見かけの大きさを表す。(Credit: 国立天文台)
図1.すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラがとらえた“キングギドラ超銀河団”の3色合成画像。中央画像の等高線は銀河の密度分布を、淡い赤色が示しているのはダークマターが広範囲にわたってとりわけ強く密集する領域。番号が付いた四角は超銀河団に付随する銀河団の位置を示す。周囲のパネルは、これら19個の銀河団の拡大図で、銀河団でよく見られる、赤い銀河が群れ集まる様子がとらえられている。左上の満月は、超銀河団の領域と比較した場合の、満月の見かけの大きさを表す。(Credit: 国立天文台)
おとめ座の東端辺りに広がるこの構造は、およそ55億光年彼方の宇宙に存在し、見かけの面積は満月約15個分もありました。
研究チームでは、この巨大な構造を“キングギドラ超銀河団”と呼んでいます。

ダークマターの分布は、その重力によってさらに奥に位置する天体からの光がわずかにゆがむ“弱い重力レンズ効果”を利用して解析されたもので、この手法で見つかった50億光年以遠の超銀河団としては“キングギドラ超銀河団”は最大のものでした。

宇宙論的シミュレーションとの比較から示唆されたのは、“キングギドラ超銀河団”が太陽質量の10の16乗倍のダークマター質量を持っていること。
これは、“おとめ座超銀河団”のおよそ10倍に匹敵するんですねー

さらに、そのすぐ外側にも超銀河団相当の巨大構造が2つ確認されていて、近傍宇宙最大の“ラニアケア超銀河団”のような超巨大構造の前身である可能性もあります。

今回ターゲットにした約55億光年先の宇宙で、すばる望遠鏡の戦略枠プログラムによる探査データから、このような超銀河団が見つかる確率は五分五分だったそうです。

今後は、近く稼働予定のすばる望遠鏡の超広視野多天体分光器“PFS”や、ユークリッド宇宙望遠鏡を使って、3次元構造や内部の銀河形態などに迫っていくようです。


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