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星の材料の流出を防いでくれるシールドがあるから、大小マゼラン雲では活発な星形成が続いている

2022年11月18日 | 銀河・銀河団
天の川銀河には、周囲を公転している“衛星銀河”が50個以上見つかっています。
その衛星銀河に含まれている大小マゼラン雲の周りに、銀河コロナと呼ばれる高温ガスが見つかったんですねー
どうやら、この構造が星の材料の流出を防いでくれているので、大小マゼラン雲では今も星の形成が続いているようです。

活発な星形成を続ける銀河

かつては小さな棒渦巻銀河だったと考えられている大マゼラン雲と小マゼラン雲。
現在では、天の川銀河に引き込まれて形が大きく崩れ、両銀河が通った後にはガスの尾が残されています。

このような過去を経た大小マゼラン雲では、星の材料になるガスが流出していてもおかしくありません。

でも、どちらの銀河でも活発な星形成が続いていて、天文学者たちは頭をひねっています。

今回、アメリカ・コロラド大学の研究チームが突き止めたのは、大小マゼラン雲を繭(まゆ)のように包む高温のガスの存在でした。
この高温のガスが星の材料を保持し、今でも活発な星の形成を続けることが出来ているようです。

このガスは直接観測ができないほど薄いもの。
でも、特定の波長を吸収する性質があり、奥の天体からの光を観測することで見つけることが出来ました。
今回の研究手法の概念図。大小マゼラン雲の背後に存在するクエーサー(右下)の光が、太陽系(中央上)の私たちに届くまでの間に、特定の波長の紫外線がマゼラン雲の銀河コロナに吸収される。天の川銀河にもコロナがあるが、マゼラン雲のコロナは大小マゼラン雲に近い部分ほど紫外線を多く吸収するので、存在が確認できる。(Credit: STScI, Leah Hustak)
今回の研究手法の概念図。大小マゼラン雲の背後に存在するクエーサー(右下)の光が、太陽系(中央上)の私たちに届くまでの間に、特定の波長の紫外線がマゼラン雲の銀河コロナに吸収される。天の川銀河にもコロナがあるが、マゼラン雲のコロナは大小マゼラン雲に近い部分ほど紫外線を多く吸収するので、存在が確認できる。(Credit: STScI, Leah Hustak)

銀河を包むプラズマ化した高温のガス

今回見つかったような、銀河を包むプラズマ化した高温のガスは“銀河コロナ”と呼ばれ、天の川銀河でも見つかっています。

その成因については、何十億年も前にガスが集まって銀河を形成したときの残りだという説もあります。

“銀河コロナ”は質量が小さい矮小銀河でも検出されているので、大小マゼラン雲にも存在する可能性は以前から指摘されていました。

そこで、研究チームはNASAのハッブル宇宙望遠鏡と遠紫外線分光衛星“FUSE”の観測データから28個のクエーサーの紫外線スペクトルを調査。
選ばれたクエーサーは、見かけ上は大小マゼラン雲の近くにありますが、実際には遥か遠方にある天体でした。
クエーサーは、銀河中心にある超大質量ブラックホールに物質が落ち込むことで生み出される莫大なエネルギーによって輝く天体。遠方にあるにもかかわらず明るく見える。
その光が私たちへ届くまでの間に、プラズマ化している炭素、酸素、ケイ素などに特定の波長が吸収されていることが紫外線スペクトルから分かりました。
スペクトルは光の波長ごとの強度分布。個々の元素は決まった波長の光を吸収する性質があるので、その波長での光の強度が弱まり吸収線として観測される。このスペクトルに見られる吸収線を調べることで、元素の種類を直接特定することができる。
さらに、判明したのは大マゼラン雲に見かけ上近いほど吸収量は多く、それだけプラズマが濃いこと。
このことから、研究チームでは大小マゼラン雲を中心とした高温ガスのコロナが実在すると結論付けています。

ただ、コロナのガスは薄く、そこに無いも同然なんですねー
それだけ薄いガスが、どうして大小マゼラン雲を守るシールドになれるのでしょうか?

何かが銀河に入り込もうとするなら、最初にこの物質“銀河コロナ”を通過しなければならないので、それが衝撃を吸収する役目を果たします。

また、コロナは最初に引きずり出される物質でもあります。
このコロナのごく一部を代償にすることで、銀河の内部で星の材料になるガスは守られているようですよ。


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