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素粒子“アクシオン”が正体? 原始惑星系円盤の偏光観測からダークマターの正体に迫ってみる

2019年06月29日 | ダークマターとダークエネルギー
原始惑星系円盤の偏光パターンの調査から、“ダークマター”の候補の1つである“アクシオン”と呼ばれる素粒子の性質に強い制限を付ける成果が得られたそうです。


見えないけど重さはある仮想上の物質“ダークマター”の正体

銀河に含まれている星や星団の運動速度から求めた銀河の質量は、銀河全体の明るさから星やガスの総量を求めて導いた質量に比べて10倍以上大きな値になることが知られています。

このことから考えられるのが、光などの電磁波を出さずに重力だけを及ぼす物質の存在。
それが、質量を持っているけど光学的に直接観測できないとされる仮想上の物質“ダークマター(暗黒物質)”です。
  銀河を構成する星がバラバラにならず形をとどめている原因を、
  光を放射しない物質の重力効果に求めたのが“ダークマター説”の始まり。


宇宙には“ダークマター”が大量に存在しているはずですが、その正体は不明のまま…

観測や理論から様々な候補が考えられていて、その中の1つが今回取り上げる“アクシオン”と呼ばれる素粒子です。

“アクシオン”は“ひも理論”などの高エネルギー理論から存在が予言されている素粒子。
これまでに発見されたどの素粒子よりも軽く、光の伝播に影響を与えると考えられています。

これまで、太陽から飛んでくる“アクシオン”を地上でとらえる実験や、人工的に“アクシオン”を生成させて検出する実験が行われてきたのですが、まだ発見できていません。


光の伝播に影響を与える素粒子

今回、京都大学の研究チームが注目したのは、すばる望遠鏡で観測した原始惑星系円盤のデータ。
“アクシオン”の「光の伝播に影響を与える」という性質が、観測結果に見られるかどうかを確かめるためでした。
  原始惑星系円盤とは、誕生したばかりの恒星の周りに広がるガスやチリからなる円盤状の構造。
  恒星の形成や、円盤の中で誕生する惑星の研究対象とされている。


原始惑星系円盤からの光を観測すると、きれいな同心円状の偏光パターンを持っていることが分かります。

“アクシオン”には、光の偏光方向を回転させる性質があると考えられています。
なので、原始惑星系円盤から地球までの宇宙空間にも存在する“ダークマター”の正体が“アクシオン”だとすれば、原始惑星系円盤の同心円状の偏光パターンが渦巻状に乱されるはずなんですねー
○○○
原始惑星系円盤の偏光(左上)が地球へ届くまでの間に“アクシオン”の影響を受けて乱れる(右下)ことを表した概念図。
研究の結果、観測データには偏光パターンの乱れは見つからず…

これは、“アクシオン”の性質に対して、これまでで最も強い制限をかける成果であり、“アクシオン”を探索すべき観測範囲を飛躍的に絞り込めたということを意味するものだそうです。

今後さらに高精度の観測を進めていけば、“アクシオン”の兆候を発見したり、“ダークマター”の正体を解明したりできる可能性もあるのかもしれません。


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