宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

宇宙の構造に大きく影響してきた暗黒物質や暗黒エネルギーへの理解を深めるため! 近赤外線宇宙望遠鏡“ユークリッド”はラグランジュ点2へ

2023年08月03日 | ダークマターとダークエネルギー
正体不明だけど宇宙の組成の計95%を占めている暗黒物質(ダークマター)と暗黒エネルギー(ダークエネルギー)。

この暗黒物質と暗黒エネルギーの謎の解明を目指して、ヨーロッパ宇宙機関の近赤外線宇宙望遠鏡“ユークリッド”は打ち上げられました。

“ユークリッド”は100億光年先までに存在する数十億の銀河を観測。
観測データからは正確な3次元地図が作られます。

この地図を手掛かりに、宇宙の構造に大きく影響してきた暗黒物質や暗黒エネルギーへの理解を深めていくことになります。
ヨーロッパ宇宙機関の近赤外線宇宙望遠鏡“ユークリッド”のイメージ図。(Credit: ESA)
ヨーロッパ宇宙機関の近赤外線宇宙望遠鏡“ユークリッド”のイメージ図。(Credit: ESA)

近赤外線宇宙望遠鏡“ユークリッド”

7月2日午前0時12分、“ユークリッド”はスペースX社の“ファルコン9”ロケットに搭載され、フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地から離床。
41分後に“ユークリッド”は、所定の軌道に投入され打ち上げは成功しています。
近赤外線宇宙望遠鏡“ユークリッド”を搭載し打ち上げられる“ファルコン9”ロケット。日本時間2日午前フロリダ州。(Credit: ESA)
近赤外線宇宙望遠鏡“ユークリッド”を搭載し打ち上げられる“ファルコン9”ロケット。日本時間2日午前フロリダ州。(Credit: ESA)
もともと“ユークリッド”は、南米のフランス領ギアナの宇宙センターで、ヨーロッパとロシアが協力して運用していた“ソユーズ”ロケットにより打ち上げられる計画でした。

でも、ウクライナ侵攻後にギアナでの“ソユーズ”の運用は停止…
延期を経て、打ち上げは“ファルコン9”に変更されることになります。
“ユークリッド”の寿命は6年ですが、燃料を節約できれば延長の可能性もあるそうです。

“ユークリッド”は今後1か月かけて“ラグランジュ点2(L2)”に向かいます。
そこは、地球から150万キロ離れた地球と太陽の引力が釣り合う場所です。

ラグランジュ点は、ある天体が別の天体の周りを回る場合に、それらの引力が釣り合う5つの場所。
宇宙望遠鏡のような質量の小さい物体は、そこに留まり続けられるので燃料を節約できるわけです。

さらに、L2の位置は、太陽から見て常に地球の向こう側になるんですねー
ここは、望遠鏡が太陽と地球、月に同時に背中を向けられる観測上の好位置になっています。

“ユークリッド”は、高さ4.7メートル、幅3.7メートル、重さが燃料込みで2トンの宇宙望遠鏡です。

搭載しているのは、口径1.2メートルの反射望遠鏡、銀河を撮影する可視光カメラ、赤外線を基に銀河の距離を計測する装置など。
NASAは赤外線装置の検出器を提供しています。
研究にはヨーロッパとアメリカ、カナダ、日本の300超の期間の2000人超が加わっています。

“ユークリッド”という名前は、幾何学の基礎を築いたことで知られる古代ギリシャの数学・天文学者のユークリッド(エウクレイデス)に由来しています。

“ユークリッド”の狙い

今世紀に入って、私たちの知る原子でできた“普通の物質”は、宇宙のごくわずかを占めるに過ぎないことが分かってきました。

ヨーロッパ宇宙機関の赤外線天文衛星“プランク”の観測に基づく2013年公表の値によると、普通の物質は4.9%。
残りの26.8%は重力を持つが見えない暗黒物質、68.3%は重力に逆らって宇宙を加速膨張させる暗黒エネルギーで構成されています。
赤外線天文衛星“プランク”による宇宙の組成。黄色が“普通の物質”、青が“暗黒物質”、紫が“暗黒エネルギー”。(Credit: ESA、プランク研究グループ)
赤外線天文衛星“プランク”による宇宙の組成。黄色が“普通の物質”、青が“暗黒物質”、紫が“暗黒エネルギー”。(Credit: ESA、プランク研究グループ)
宇宙空間では、銀河がほとんど存在しない領域“ボイド”や、逆に銀河が多く集まる“フィラメント構造”などがあり、銀河は偏って存在しています。
このような構造は、宇宙初期の急加速膨張であるインフレーションの際に生じた密度ゆらぎがもとになり、さらに暗黒物質がその重力によって物質を集めるきっかけとなったことで成長していったと考えられています。

さらに、20世紀末には宇宙の膨張が加速していることが分かり、暗黒エネルギーがその原動力と考えられています。

“ユークリッド”が作るのは、100億光年先までの、これまでで最大で最も正確な宇宙の3次元地図。
これにより、銀河の形や位置、動きを把握し、宇宙空間における物質の分布状況、宇宙の膨張の歩みなどを解明し、暗黒エネルギーと暗黒物質の性質の理解につなげる狙いがあります。


こちらの記事もどうぞ



最新の画像もっと見る

コメントを投稿